テレビ「英語会話初級」の記録～田崎清忠先生の叙勲を記念して

「田崎先生の叙勲をお祝いする会」

　いよいよその姿を顕わにしてきた東京スカイツリーを間近に見ながら、テレビ草創期の「英語会話」番組の話をするのも一興ということで、平成22年12月20日、東京西浅草にある浅草ビューホテル26階「ひばりの間」で、「田崎先生の叙勲をお祝いする会」が行われました。

東京純心女子大学前学長・田崎清忠先生が、弱冠30歳で、テレビ「英語会話」の番組講師として登場されてから、ちょうど50年になります。その節目の年を前に、先生は、この秋の叙勲で、「瑞宝中綬章」を受章されました。

そこで、かつて田崎先生の「英語会話」番組（昭和36年～52年）を中心に、ＮＨＫ文化センター（昭和52年～63年）や英語の仕事に関わったお仲間の皆さん30人が集まり、この晴れの受章をお祝いするとともに、先生を囲んで、当時の思い出話等を語り合う集いを行ったものです。会では、今回40数年ぶりに、先生のお宅の資料の山の中から見つかった番組を試写するなど、予定の時間を越えて、かつての「英語会話初級」の時代を、懐かしく振りかえりました。
　また、平成23年2月12日(土)、大正9年に竣工し、高度成長する日本経済の様々な舞台となってきた日本工業倶楽部3階大広間で、もう一つの｢田崎清忠先生の叙勲をお祝いする会｣が開かれました。
　これは、田崎先生が教授として務められた横浜国立大学の卒業生・山田清實さん、阿部清さんや英会話講座を持っていたＮＨＫ文化センターの卒業生・田島佳代子さんが発起人となり、これまで先生とご縁の深い方々に呼びかけ、この慶賀すべき受章をお祝いしたものです。
この日は、金沢や大阪など遠方からも含め、50名の方々が参集し、この由緒ある会館で、先生を囲んで、当時の思い出話しや食事会を楽しみました。

記念の記録集を作る

　この「田崎先生の叙勲をお祝いする会」の準備を進める中で、これを機に、テレビ｢英語会話初級｣の記録集をまとめる必要があるのではないだろうかということになりました。というのは、調べてみると、教育テレビの草創期、16年間の長きにわたって放送された、テレビ「英語会話初級」の資料がほとんど残っていないのです。

それは、昭和37年から番組を担当し、「英語会話初級」の生き字引と言われたＰＤの田中卓さんが、平成19年に突然亡くなってしまった影響が大きいことがあります。資料魔と言われた田中ＰＤが保管していた、多くの貴重な資料が消失してしまったのです。

まずは、番組資料の基本とも言うべき映像資料、つまり番組そのもののビデオが残っていないのです。唯一、ＮＨＫアーカイブスと先生ご自身の手許に、昭和51年3月に放送した、田崎先生の最終回の番組が、家庭用ビデオの映像として残っていただけでした。その他、台本を含め、「英語会話初級」に関わる資料や記録がほとんど見当たらないのです。

ただ、さすがに、番組テキストは、16年間分すべて残っていました。ＮＨＫについては、愛宕山の放送博物館に、ＮＨＫ出版は、山梨県富士河口湖町の資料センターに保管されていて、古いテキストに関する視聴者からの問い合わせについては、現在放送博物館が対応してくれることになっています。

田崎先生が保存されている16年間のテキスト

　そして、もう１セットが、田崎先生宅にありました。先生は、すべてのテキストを、1年ごとに製本して、全16冊、保存していたのです。最初の昭和36年度テキストは季刊のため、厚さが2センチ程度、2年目が隔月刊で3センチ、それ以降は月刊になるので、5センチ程度の分厚い綴りになっていて、積み重ねると1メートル近くなります。これらを点検すると、取り上げたテーマや内容、英語表現等については詳細に分かります。しかし、それを番組上ではどのように提示したのか、テレビの機能をどのように活用して教育的効果を上げたのかは、不明です。ましてや、番組制作にまつわる工夫や苦労、エピソード等については、全く分かりません。

　そこで、今回の田崎先生の受章を機に、番組に関わった方々の記憶の中だけに残っている、テレビ「英語会話初級」の記録をまとめようということになったのです。そして、それぞれ関係の方に原稿をまとめてもらうように呼びかけたところ、多くの方々から、たくさんの原稿や写真等が寄せられました。

資料探しの中で、何より思いがけなかったのは、先生と長男の譲治さんのお二人が2日がかりで、先生宅の2階の資料の山の中から、昔の｢英語会話｣番組を記録した8本のフィルムを探し出してくれたことです。これは、フィルムに放送された番組を収録、保存するキネコで、その内、一番古い番組が、昭和40年3月に放送された「英語会話初級」と「中級」の3本のキネコでした。

　これは、ＮＨＫアーカイブスが保管する過去の｢英語会話｣番組より、10年以上も古い完プロ番組で、ＮＨＫにとっても「極めて貴重な映像資料」となったのです。これらのキネコを、ＮＨＫに持ち込み、その後ＮＨＫの手でデジタル化され、ＮＨＫアーカイブスとして永久保存されることになりました。このことについては、後述します。

　これら、皆さん方から寄せられた原稿や記録をまとめたものが、この「テレビ英語会話初級の記録～田崎清忠先生の叙勲を記念して」のホームページです。編集の担当は、昭和43年から46年まで、｢初級｣の番組制作を担当した、小河原正己です。このサイトに関する問い合わせや苦情、ミス等あれば、トップページの「問い合わせ」にお寄せください。