ボツワナからの報告・それは「英語会話初級」から始まった??
仲居宏二(昭和46年~50年「英語会話初級」PD、在ボツワナ共和国)

 このたびの瑞宝中綬章受賞おめでとうございます。

 遠い南部アフリカのボツワナから一言メッセージをお送り申し上げます。

ここ首都ハボローネから5分も走ると、アカシア系の灌木、地平線まで見渡せる大平原、切れ目のない紺碧の空、地球がこんなに広いのかとつくづく思います。今は夏真っ盛りです。照りつける太陽は容赦なく、気温は40度ほどに急上昇、乾燥しているので夏でも肌荒れがするところです。

ボツワナに滞在して早2年4カ月になろうとしています。今の肩書はボツワナ教育省コンサルタント、ここでお国の念願の教育テレビ局を開設するために、招かれてやってきております。

田崎先生はご記憶あるかと思いますが、40年前、先生が「テレビ英語会話初級」の名物講師をなさっていた時、僕もその番組のPDの一人でした。新婚旅行にアフリカに出かけることになった時、先生は当時なかなか僕らが持てなかった8ミリフィルムカメラをお貸しくださいました。その時の記録はVTRにコピーし今でも我が家の古いお宝となっています。

その時アフリカに初めて来て、なんと英語が広く使われているかを知り、これからはこういう人たちと交流するには、英語でコミュニケーションする時代なのだと、初歩的な英語しかできなかった僕にはショックでした。

先生の番組を数年間担当させていただき、問題意識としては国際語としての英語という、今では当然の考え方を身につけさせていただきました。

思い出風に申し上げますと、タレントを起用してでも、とにかく視聴者の底辺を広げたいという、当時としては“顰蹙モノ”の試みもしました。かなり前に亡くなってしまったコメディアン、早野凡平さんにレギュラー出演をお願いし、ヘタな英語コントを毎回台本に書くことはなんと無謀なことであったか、今思えば赤面しかできません。(今はどんな番組でもタレント頼り、当時はCP始め部長などからも“不良”扱いされたように思っています)

 一方、申し上げましたように、英語はもっと幅広く使われるものだ、日本人が話す英語は何も欧米人のものまねでなくてもよい、と理屈をこねて、非英米人ではない英語を話す人をゲストに招き、視聴者や英語を崇拝している人から抗議や非難も受けました。「何でインド人やアフリカ人に英語を教わらなければならないのだ!」というものでした。

 田崎先生は運動神経抜群、スタジオでじっと講師席にいてコメントや解説することを嫌い、ノルマルテロップ5秒の間に、次のセットに移るなどは “before breakfast”(朝飯前)でした。またそのような演出をしないと何か物足りそうな表情をされ、今回はどこでアクロバットをやっていただこうかなどもPDの楽しみでした。

 収録後は103スタ前でドーランを落としながら、反省会、時にそのまま近くの飲み屋で延長戦。今だったら考えられません。

PD時代、そうした相変わらず初歩的レベルにもかかわらず、番組取材で何度かアフリカに来るチャンスに恵まれました。30年前には独立間もないボツワナのカラハリ砂漠に2カ月ほどロケで野営生活もしました。そのたびに、先生の番組担当であったことが、仕事でも大いに役立ったことを知り、先生に感謝しております。

さらに、先生とはアメリカ中西部を2週間ほどご一緒させていただき、ますます英語の必要性を実感しました。

 確か第3回目の『放送文化基金賞』を受賞され、現場から推薦したもののはたして受賞されるかどうか気をもんでいましたが、めでたくその栄誉に輝いたときは大変うれしかったことも鮮明に覚えています。

縁あって今は申し上げたようにまたボツワナに滞在しています。ここは独立前に英国保護領だったため、母語であるツワナ語と英語の完全なバイリンガルな国です。したがって今僕がやっている仕事の相手(政府高官、教育省の役人、大学の先生、ボツワナ国営テレビ局員、各プロダクション会社の人たちなど)はすべて英語で十分コミュニケーションがはかれます。もちろん市井の人も立派に英語ができます。

僕の英語のレベルは、怠慢が原因で決して上達はしていませんが、この僕レベルでも仕事になっていますし、今のところ問題なく過ごせています。日本人が少ないので日本語を懐かしく思っています。

田崎先生の番組担当になっていなかったら、アフリカへの旅行や取材もしり込みしたでしょうし、また今のように単身ボツワナでコンサルタントなどはできなかったと思っています。その意味で、先生からご教示受けた英語をフルに使って“国際貢献事業”をやっております。出来の悪い教え子ではありますが、以上のように英語というツールを使って遠く離れたアフリカの地でなんとか人生の第四コーナーを回っているところです。改めて感謝申し上げます。

 こちらボツワナでは、長く教育テレビにかかわってきたことがそのまま“ノウハウ”となってNHKの海外貢献に一役買っていると自負しています。世界にまれな教育専門チャンネルは今は大きな注目です。ボツワナでもNHKのようなことをしたいと言うことで、すでにBTV(ボツワナ国営テレビ)に加え、独立チャンネルで教育サービスをしたいと言う願いから、たまたま存じ上げていたモツワハエ前駐日大使からお声がかかりました。一応、事業ですので政府からNEDへコンサルタント料が振り込まれています。

 開設まではまだしばらく時間がかかりそうですが、定年を控え、上手くボツワナにバトンタッチができればと、この僻地でなんとか頑張っています。

自宅の窓を開けるとキリンや象が挨拶してくれます、というのは大げさですが、ここはアフリカ一の動物王国です。是非こちらにも足を延ばしてください。ちなみにここの大統領の趣味は飛行機操縦です。先生もお得意の飛行機でアフリカの大草原を空からご覧にいただけます。お待ちしております。
仲居宏二さん、 動物王国ボツワナの平原にて

仲居宏二さん、 動物王国ボツワナの平原にて

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テレビ「英語会話初級」の記録

テレビ「英語会話初級」の記録

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