インタビュー・ウルトラライトへの夢
田崎清忠(飛行機大好き人間)
聞き手: 小河原正己(当ホームページ編集長)
小河原:先生のホームページを見ると、「ウルトラライト」とか書いてありますね。あれは軽飛行機なんですか。 田 崎:「超」軽量飛行機です。 小河原:それに乗って飛びたいということですか。 田 崎:飛ぶのも大好きですけど、それよりもウルトラライトを自分で組み立てたいんです。Still dreaming of building a Ultralight.(相変わらずウルトラライトを作る夢を育てて)って書いてあるでしょう。 小河原:組み立てる・・・って、そんなことが出来るんですか。 田 崎:出来るんですよ。もちろん既製品もありますし、800万円くらいでキットも売ってるんですけど、それじゃ面白くない。やっぱり自分で設計して作りたい・・・。口で言うほど簡単じゃありませんけどね。 小河原:飛行機を自分で作るなんて、あまり一般的に聞きませんね。何か理由があるんですか。 田 崎:私が中学生のころはいわゆる戦時中でしたよね。私は飛行機を設計したくて、普通の中学校ではなくて「航空工業学校」に入ったんです。父親が電気の内線設計技師だったので、理科系の血が流れていたのかも知れません。結局敗戦で日本は飛行機を作れなくなって、少年の夢は破れたってことです。でも、この年になっても、まだ飛行機を作ってみたいという夢がどこかに残っているんでしょう。 小河原:作れそうですか。 田 崎:さあてね。いろいろ下図は描いているんですが、複雑な計算をしなければ実現に近づかないので、あんまり進んでいません。やる気はあるんですけど。 小河原:ウルトラライトで飛んだことはあるんでしょう。 田 崎:ありますよ。最近では、マイアミで。フロートがついたヤツで、水の上から飛び立ちます。150メートルくらいの高度で、マイアミビーチのホテル群を見下ろしながら、海の上を飛びます。何とも言えないいい気持ちです。 小河原:危なくないんですか。 田 崎:大丈夫。高速道路を走る自動車よりも安全です。ただ気をつけなくちゃならないのは、エンジンの故障です。自動車なら路肩に停車できますけど、ウルトラライトだと墜落です。またエンジンの推力を上回る負荷を機体にかけると真っ逆さまです。 小河原:負荷っていうと・・・? 田 崎:操縦桿を手前に引くと、ノーズ(機首)が上を向いて上昇しますよね。引きすぎるとエンジンの力が及ばなくなって、「ストール」(失速)します。 小河原:やっぱり危ないんですよ、ウルトラライトって。私はダメですね。 小河原 ウルトラライトって、木で出来てるんですか、機体が? 田 崎:いいえ、スチールやアルミです。翼にはダクロン(合成繊維)を使うのが普通です。それらをワイアでつなぎます。 小河原:プロペラで飛ぶんでしょう。 田 崎:はいそうです。小型のエンジンを搭載します。燃料は30リッター以下と決められていますから、ほんとに軽量ですよね。私のシーマなんて、エンジンの大きさが4,500CCで、タンクには70リッター近くガソリンが入るんですから。 小河原:スピードは出るんですか。 田 崎:はい、これが結構早く飛ぶんです。最大水平速度は時速185キロって決められているんです。もっとも普通は100キロから120キロくらいで飛びます。時速が65キロ以下になると失速します。 小河原:やっぱり、結構怖いじゃありませんか。 田 崎:「舵面操縦型」というウルトラライトだと、基本的にセスナ機やジャンボジェット機と同じ操縦方法なんですよ。 小河原:先生はセスナも操縦されるんですよね。 田 崎:はあ。グアムに行くと、かならず飛びます。グアムはアメリカ空軍の滑走路を併用してるんで、巨大な戦略爆撃機が離着陸できるようにだだっ広い滑走路なんです。そこに豆粒みたいなセスナ機がプルンプルンとプロペラを回しながら出ていって、滑走を始めます。痛快ですね。 小河原:それでもやっぱりウルトラライトの方が好きなんですか。 田 崎:はい、そうです。ウルトラライトの機体では、人間の体がむき出しでしょ。だから、ほんとに空を飛んでる気分が味わえるってわけですね。横国大に勤めていたとき、浦和から横浜に通勤するのに、とうしても都内をつっきることになりますよね。渋滞が避けられない。ウルトラライトなら、これを尻目にしてあっという間に大学に着けます。こりゃ名案だと思いましたね。 小河原:たしかにそうですね。 田 崎:でもよく調べてみたら、日本では細かい飛行規則があって、ウルトラライトは飛び立った場所に戻らなくちゃならないんです。だから小河原さんを乗せて北海道旅行なんてのはダメなんですよ。 小河原:そうなんですか。じゃ、セスナにしますか。 田 崎:いや、やっぱりウルトラライトです。これは私の夢ですから。 編集長の自画自賛 聞き手が言うのも手前味噌でなんですが(?)、スーパー・ウルトラライト・プレーンをめぐって、専門家であるゲストと聞き手の呼吸がぴったり合い、これまでにない見事なインタビューになっています! もっとも、聞き手である編集長が発した質問、というよりお願いしたのは、たったの1言だけだったのですが、、、それが、このように愉快な架空インタビューとなって、先生から届けていただきました。呼吸がぴったりだったわけもお分かりのことでしょう。先生のスキットやテキスト原稿はもちろん、ちょっとしたご挨拶にも、いつも一工夫、二工夫あって、時にはクスッとさせられたり、時には目を瞠らせられたりしたことを、改めて思い起こさせてくれたウルトラ・インタビューでした。 |
ウルトラライトってどんな飛行機
(設計・図) 田崎清忠
ウルトラライトプレーン(ULP)はマイクロライトプレーン(MLP)とも呼ばれ、日本の航空法では超軽量動力機というカテゴリーに分類される航空機。機体は通常スチール、アルミ、ワイヤー、それにダクロンと呼ばれる非常に強度のある合成繊維の布で出来ています。エンジンは2サイクルが多く、数十馬力程度です 。 ウルトラライトプレーンは以下の条件を満たす必要があります。 単座又は復座であること。 自重は、単座:180Kg以下、復座:225Kg以下 翼面積は10平方m以上。 失速速度65km/h以下、最大水平速度185km/h以下。 推進力はプロペラによって得る。 車輪、そり、フロート等の着陸装置を装備したもの。 燃料容量は30リットル以下。 対気速度計及び高度計を装備する。 |