Archive for 10月, 2017

Author: 松山 薫

< 社説よみくらべ 8 >

8.総選挙の結果について

 第48回衆議院議員総選挙は、10月22日、超大型で強い台風21号の余波による全国的な荒天の下で投票が行われた。465議席の内わけは、自民党が284、立憲民主党 55、希望の党 50、公明党 29、共産党 12、日本維新の会 11、社民党 2、 無所属 22 となった。投票率は戦後2番目に低い 53.68%だった。

各社社説の見出しは次の通り。

讀賣新聞    自民大勝 信任踏まえて政策課題進めよ
朝日新聞    政権継続という審判 多様な民意に目を向けよ
毎日新聞    日本の岐路 「安倍一強」継続 おごらず、国民のために
日経新聞    安倍政権を全面承認したのではない
産経新聞    自公大勝国難克服への強い支持だ 首相は北対応に全力挙げよ
北海道新聞  与党勝利 白紙委任したのではない
河北新報    自公が3分の2 「敵失」の勝利に慢心するな
中日新聞    安倍政権が継続 首相は謙虚に、丁寧に
京都新聞    野党のこれから 自らの足場を固め直せ
中国新聞    安倍政権勝利 「1強」のおごり捨てよ
南日本新聞   「与党」大勝 民意に耳を傾ける謙虚な政権運営を
沖縄タイムス  反辺古 民意揺るがず

 自民党圧勝の原因については、野党の分裂や、準備不足による「敵失」による勝利とみるものが多く、安定志向の有権者が、「政治の安定」を掲げた与党に「他の党よりはまし」ということで投票したのであって、選挙期間中の世論調査の結果を見ても、安倍政権への信任とは言い難いとしている。また、日本の憲政史上最長政権になりうる安倍政権の今後の課題として、憲法改正、デフレ脱却、消費税と社会保障制度のありかた、財政の再建、北朝鮮への対応などが挙げられており、森友・加計問題についても取り上げた11紙(除沖縄タイムス)中、読売、産経以外の9紙が、ひきつづき解明を求めるており、政権の運営に当たっては、安倍政権と与党が、驕りを排し謙虚な姿勢で臨むよう求める論調が圧倒的に多い。

読売新聞社説は、わが国は今、いろいろな課題に直面しており、現在の野党に国のかじ取りを任せるわけにはいかない。政策遂行の総合力のある安倍政権の継続が最も現実的な選択肢であると有権者が判断した結果だろう。ただ公示直後の世論調査で内閣支持率が不支持率を下回ったことを見れば首相は、自
らの政策や政治姿勢が無条件で支持されたと考えるべきではない、と述べている。また、安倍政権の今後の最重要課題として「憲法論議を活発にするよう」主張している。

朝日新聞社説は、有権者は安倍首相の続投を選んだが、選挙結果と民意にはズレがあるとして、選挙結果は、野党が負けたというのが実態で、負けた原因は野党第1党だった民進党の分裂であり、野党が協力関係を再構築することが民意に応える道であると論じている。その上で留意すべきは立憲民主党の躍進であり、枝野代表が訴えた個人尊重と手続重視の民主主義のあり方は、安倍政権との対立軸になりうろとしている。また安倍首相は改憲に力を入れるだろうが、民意は改憲をめぐって多様であり、政権は選挙結果が白紙委任だと考えてはならないと警告している。

毎日新聞社説は、有権者は「安倍1強」の継続を選んだ。小池氏の劇場型手法に多くの有権者が不安を抱き、自民党をよりましと判断したのではないか。安倍政権にとって喫緊の課題は、北朝鮮危機への対応だが、トランプ政権の軍事的圧力傾斜に同調して不測の事態を招かぬよう、細心の注意が必要だとしている。さらに、安倍首相の最終目標が憲法改正にあることは明白であるが、安保法や特定機密保護法の時のように、事を急いだら、国の進路を誤らせると戒めている。

日経新聞社説は、この選挙を一言で総括すれば「野党の自滅」であり、その責任者は、民進党の前原代表と希望の党の小池代表だと断じている。その間にあって躍進した立憲民主党については、リベラルの復権とするのは早計であり、一過性の人気に終わるかもしれないとしている。そして、戦後最長となるかもしれない「安倍一強」政権の課題は、経済の再生という原点であり、「初の憲法改正」という宿願ばかりを追い求め、肝心の原点を忘れるなと忠告している。

産経新聞社説は、北朝鮮危機と少子高齢化という国難を乗り越えるという安倍首相の呼びかけに国民は強い支持を与えたとして、さらなる圧力の強化と共に、ミサイル防衛の充実にとどまらず、敵基地攻撃能力の導入、防衛予算の増額への政治判断を求めたいとしている。そして憲法9条は自衛隊を縛り、国民を守る手立てを妨げるとして、公約である憲法改正への努力を止めるなと提言している。

北海道新聞社説は、今回の自民党の勝利は、野党の敵失に乗じたもので、選挙期間中の多くの世論調査では安倍内閣不支持が支持を上回ったことからも、「安倍1強」への信任ではないし、まして白紙委任ではないと論じ、わけても首相自身が争点とすることを避けた改憲が、国民の信任を得たとは認められないと主張している。北朝鮮情勢については、国民は緊迫ではなく平和解決を求めているという。

河北新報社説は、与党の勝利は、積極的な支持というよりは、他によりましな政党がないという「消去法」によるものだ。首相は改憲に意欲を見せているが、今最優先に取り組むべき課題は、大企業、大都市にもっぱら利益をもたらすアベノミクスの軌道修正だろうと主張し、加計・森友問題もみそぎが済んだわけではなく今後も丁寧が説明が必要だとしている。

中日新聞社説は、結果を見る限り、消費税UP分の使途変更と、圧力に重きを置いた北朝鮮対策は、形の上では有権者の信任を得たことになる。しかし、世論調査では続投を支持されていない安倍首相が勝利したのは小選挙区を軸とした選挙制度によるところが大きいとして、自民党が初めて重点項目とした憲法改正についても、拙速に議論を進めるべきではないと釘を刺している。

京都新聞社説は、立憲民主党が野党第1党になったのは、理念と政策の筋を通したからだ。「草の根の政治」を唱える枝野代表には、公約実現への道筋を示し、「安倍一強」によって拡げられた国民と政治の距離を国民の方へ近づけてほしいと要望するとともに、国会を”まっとうな”議論の場とするための重責を果たしてもらいたいと求めている。

中国新聞社説は、改憲に前向きな勢力が3分の2を超え、改憲への動きが加速しそうだが、反対の立憲民主党が躍進するなど慎重な意見が国民の間に多いことを忘れてはならない。北朝鮮対応は圧力一辺倒では不測の事態も懸念される。対話のドアは常に開けておかねばなるまいと論じ、いずれの課題にもしっかりした説明と慎重な議論が必要だとしている。

南日本新聞社説は、選挙後最大の焦点は憲法改正の行方だ。その際首相がどの政党と連携するのか目が離せない。安倍政権は憲法をないがしろにする動きが目立つ。これをチェックする強い野党が出てくるかどうか。北朝鮮問題には与党も野党もないと思うが、対外危機には政権に支持が集まる傾向がある。首相はその点も織り込んでいるのではないか、と論じている。

沖縄タイムス社説は、沖縄での選挙結果は、自民党が圧勝した全国とは対照的であり、安倍政権の基地政策や強引な国会運営に対する批判にとどまらず、沖縄に対する不公平な取り扱いに対する異議申し立てが、広く県民の間に共有されていることを物語っているとしている。

さて、私の感想と意見です。

 与党圧勝、野党惨敗の戦犯は、希望の党の小池百合子代表と民進党の前原代表だ。二人とも代表をやめるのは当然であり、前原氏は国会議員も辞職すべきだろう。累々たる仲間たちの屍の上に、大将たる自分が腹を切らずになにができるというのか。

これに反して、かろうじて今回の選挙に意義があったとすれば、立憲民主党の躍進だろう。たった一人で結党宣言をする枝野代表を見て、私は、日本の政治家も捨てたもんじゃないと、胸を打たれた。

明暗を分けたものは、政治家として、いやそれ以上に人間としての「いさぎよさ」だろうと私は感じた。司馬遼太郎が言っているように、日本人には「いさぎよさ」を大切にする心がある。

「いさぎよさ」といえば、私は石橋湛山をジャーナリストとして、政治家として高く評価している。枝野代表には「いさぎよさ」だけでなく、軍部絶対の体制の中で、チエを尽くして自らの理念を貫こうと戦ったこの先達を見習ってほしい。大山鳴動して鼠一匹と書いた社説があったが、飛び出した「立民」という鼠が、ドラ猫を噛む日が来るのを多くの国民が待っている。

 社説の多くが、加計・森友問題の解明を求めているが、私も同感である。この問題は単なるスキャンダルではなく、この国の社会の根幹につながる問題だと思うからだ。選挙期間中に明らかになった日産自動車や神戸製鋼の不正事件をはじめ、この数年次々に明るみに出た大企業の反社会的事件は、競争第一主義と勝つために手段を択ばない土壌に根差したものであるからだ。小池代表は、「しがらみの政治」からの脱却を公約に掲げたが、「希望の党」に希望があるとすれば、加計。森友問題の解明に当たって、その公約を徹底的に押し通せるかどうかだろう。

それにしても、今回も、政治家を家業とするがごとき世襲候補の当選が目立った。世襲候補の跋扈とその弊害については、先にこのブログで詳述したが、これこそまさに「しがらみの政治」の象徴ではないか。これから、ひとりひとりの当選者について素性を調べ、いずれ再論したいと考えている。
(M)

< 社説よみくらべ 7 >

7.総選挙の公示にあたって

 第48回衆議院議員選挙が10月10日に公示され、各紙はこぞって、選挙の意義や争点などについて社説を掲載した。

 各社社説の見出しは次の通り。

讀賣新聞   「安倍政権の信任が問われる」
朝日新聞   「安倍政権への審判 民意こそ、政治を動かす」
毎日新聞   「日本の岐路 ”よりまし”を問う12日間」
日経新聞   「次世代に責任ある経済政策論議を」
産経新聞   「複数の選択肢ないまゝか」
東京新聞   「公示第1声 原発何故語らないのか」 
北海道新聞  「暮らしの視点も大切に」
河北新報   「安倍政治の総括 問われる」
京都新聞   「訴え見極め未来選ぼう」
中国新聞   「政策の深掘り求めたい」
西日本新聞  「政権選択の政策論争こそ」
琉球新報   「沖縄の民意示す機会に」

各紙社説が選挙の争点として挙げているものは次の通り。

読売新聞   政権選択、北朝鮮の脅威、消費税と財源、教育、雇用、政治家の劣化
朝日新聞   安倍一強政治への審判、少子高齢化、原発、米国や近隣諸国とどう向き合うか
毎日新聞   安倍政治、憲法改正、原発政策、普天間基地移設計画
日経新聞   消費税、成長戦略
産経新聞   政権選択、北朝鮮政策、少子化対策
東京新聞   原発、福島の再生
北海道新聞  憲法改正、消費税、北海道の地域経済
河北新報   安倍政権の総括、北朝鮮情勢への対応、震災の風化
京都新聞   政権の選択
中国新聞   安倍首相の政治手法、憲法改正、原発政策、消費税と社会保障の財源
西日本新聞  政権選択、消費税
琉球新報   憲法改正、安倍政治の是非、米軍基地

< さて私の意見です >
 私は、今度の選挙の最大の争点は、北朝鮮をめぐる安全保障問題だと考えている。したがって、総選挙を行う意義を「消費税増税の使途の変更と北朝鮮をめぐる国難について民意を問う」とした安倍政権の問題意識には合点がいく。ただし、北朝鮮問題についてのこれまでの安倍政権の対応には全く同調できない。

 「国難とは大げさな」という意見もあるが、対応を誤れば、日本列島を放射能の劫火が覆うことになりかねないから、国難と言ってもよいのではないか。国難というと私は子供の頃によく歌った「元寇」の歌を思い出す。「四百余州をこぞる、10万余騎の敵、国難ここに見る、弘安四年夏の頃・・・」。

 この時、九州北部に上陸した元軍は、近代装備と集団戦法で、日本の武士団を圧倒し、日本の敗戦は必至とみられたが、”神風”によって救われた。先の大戦の末期にも、国民の多くが”神風”を期待したが、空しかった。だから今回は、国民が力を合わせて、自力で国難を解決するしか方法はない。総選挙はそのための絶好の機会であると思う。 

 「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」と孫子は言う。まずそこから始めなければならない。
北朝鮮の核兵器については、このブログに連載した「北の核」(2013-3-9~4-8)で詳述した。現状認識について、安倍首相は「北朝鮮は核保有国である」と述べたが、私も同意見だ。「戦争論」では、潜在敵国が顕在敵国に代わるのは「軍備の充実」と「侵略の意図」であるという。後者についても金正恩は「日本に対する恨みをはらす」と発言しているから、「攻撃の意図」は十分にあると言ってよいだろう。何故、北朝鮮の人達が日本に恨みを抱いているのか。我々はそれを真剣に考え、学んだたことがあるのだろうか。

 これに対して日本のミサイル防衛システムは万全ではないし、軍備はいたちごっこだから、万全にはなりえない。北が日本を攻撃するには、開発中の長距離弾道ミサイルは必要ない。すでに、日本を標的に数百基から千基を実戦配備しているというスカッド(射程800km)やテポドン(1300km)で十分だ。北朝鮮から600㎞~1000㎞にある日本海沿岸には約10分から20分で着弾するが、ここには玄海、美浜、志賀、柏崎・刈羽と、ずらり原発が立ち並ぶ。原子炉や使済み核燃料貯蔵施設を破壊されれば、偏西風にのって放射能物質が、日本列島を覆うことになる。中国の核実験による“死の灰”がそれを証明した。

 安倍首相は、トランプ大統領の親友だそうで、日米同盟の深化や両国間の100%の信頼関係を
抑止力と考えているようだが、これはかえって、北朝鮮に日本攻撃の口実をあたえるものになりかねない。アメリカが北朝鮮に対して軍事オプションを選択すれば、北にはアメリカ本土に届くミサイルはまだ持っていないから、日米一体とみなして、攻撃されるのは日本の米軍基地や都市となる。そうなった場合の被害をアメリカの大学の研究チームは100万人単位になると推計している。
   
歴史に鑑みれば、戦争は当事者の意図を超えてエスカレートしていく。 北朝鮮の壊滅を中国やロシアが座視することはないだろう。アメリカ上院のコーカー外交委員長が指摘しているように、アメリカと北朝鮮の軍事衝突が第3次世界大戦の引き金になるという意見も出てはじめている。

 総選挙で多数はとなった政党による次の政権は、北朝鮮問題をめぐってまさに正念場に立たされることになる。だから、私は、北朝鮮問題こそ、今度の選挙の最大の争点であると考えているのである。

公示の日の朝日新聞に、北朝鮮問題についての評論家の保坂正康氏の論評が載っていた。
日中交渉を打ち切った当時の近衛文麿首相が「非常な失敗だった」と述懐した手記を引用して「
どんな相手であっても交渉の線を残すのが基本であると述べている。

次元は違うが、私も組合役員として何十回もの労使交渉に臨み、交渉の線を残しておけば、どんなにもつれた糸もやがてほどける糸口になることを体験した。ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍首相に訪朝を進めたという。総選挙の最大の争点が政権の選択ならば、次の首相には、国民の運命をかけて、アメリカを説得し、ピョンヤンへ向かう決意を持った人物を選べるような結果を期待したい。(M)
     

< ブログ再開のお知らせ >  

 松山 薫

胆石症の手術などのためしばらく桐英会ブログへの投稿を休んでいましたが、復調しましたので、”社説よみくらべ“の投稿を再開したいと思います。
総選挙が公示され、各党の公約が発表されていますが、私が一番関心を持っているのは、安全保障問題です。私が安全保障問題を記者としての中心課題として勉強しようと決意したのは、1960年安保闘争の国会デモを取材した時のことでした。デモ隊と警官隊の衝突のさなか、投石で顔面を割られた警察官の姿を見て、同胞相打つ悲惨な状況を避けるにはどうしたらよいのか。国民の大多数が納得できる安全保障政策はないのか、それが課題となりました。
あれから半世紀以上たった今も、残念ながら、私が納得できる安全保障政策を持つ政党は現れていません。一方で、北朝鮮の核・ミサイルをめぐって、北朝鮮とアメリカの常軌を逸した二人の指導者の対立で、偶発戦争や、いずれかの先制攻撃が起きる可能性を否定できなくなっています。そのような事態になれば、日本国民が受ける被害は想像を絶するものになりかねません。
このような現状について、各社の社説がどのように論評するのか、私の意見を付して、投稿しようと考えています。