Archive for 4月 2nd, 2011

< 警世の紙つぶてへの紙つぶて > 松山薫

 文芸春秋誌の4月号が、「これが私たちの望んだ日本なのか。警世の紙つぶて」と題して、125人の”識者”の意見を特集している。読者層を意識して編集者が年寄りを選んだのか、回答を寄せたのが年寄りだったのかわからないが、とにかく年寄りが多すぎ、同じ年寄りの私には、聞き飽きた意見ばかりで、読み通すのにかなりの忍耐を要した。三つの設問のうち一番興味のあった「日本は長らく五里霧中にあるが、その原因はなにか。そこから脱するにはどうすれはいいのか」への回答を見ると、先ず目につくのは、現状への悲嘆であるが、そういう人に限って、それをもたらしたそれぞれの分野でのリーダーとして反省が感じられず、要するに年寄りの繰言である。

 また、”嘆かわしい現状“を変える処方箋としては、国を思う赤心だとか、道徳教育や若者を鍛えなおす徴兵制度の復活など国家主義、精神主義への回帰を求めるものが多く、中には、戦争中によく聞いた”挙国一致“や敗戦直後に飛び出して顰蹙を買った”一億総懺悔“などと言うフレーズが出てきたり、明治維新の再現を望む声もあり、さすがに王政復古というのはなかったが、とにかく復古調にあふれ、年寄りの構想力の限界を露呈している。
その点、文化畑の人達の中には、冷静な目で現状を見ている人もあり、*日本は小国として生きる道を探す * これ以上なにを望もうというのか。 * 今さら大国にならなくても、現状が身の丈にあっている * 権威主義によってゆがめられてきた人材選抜システムが破綻して、醒めた視線を持つ若者が昔より多くなったのは明るい材料だ、というような意見も散見される。つまり、パラダイムの転換が必要だというのである。

 一番面白かったのは金子兜太の「餓鬼化現象」と題する一文で、「餓鬼は野党自民党の国会議員に多数発生していると見受けるが、とにかく声が大きく、そのおしゃべりの早いこと、しかし中身は皆無に等しい。餓鬼駆除剤を開発せよ。」と強烈な冷や水を浴びせ、その上で、政府は、今必要なことをじっくり腰を据えてやれと忠言している。

 また、一番共感をおぼえたのは、「命を大事にする国を」という柳田邦男の意見で、戦争を体験していない世代の政治家達が理屈だけで脳死や水俣病問題を論じていることに愕然とし、その伝で戦争の是非を論じられてはたまらないと、戦争の惨禍に露呈される非人間性を国家とし伝承するよう求めている。cool head, warm heartを感じさせる。

 この特集は、大震災の前に組まれたもので、”ああ人栄えて国亡ぶ、盲いたる民世に踊る”という昭和維新の歌さながらの、慨嘆調の精神主義が満ち溢れているが、東日本大震災という本物の危機に直面した後、“識者達”がどんな処方箋を語るのか、もう一度特集をやってもらいたい気がする。(M)