Archive for 11月 5th, 2013

Q : (教育学部の大学1年生)英語を読むことはわりに得意です。辞書があれば何とかなります。大学の英語の授業はほとんど講読なのであまり苦労はしていません。しかし英語の会話が全然できません。中学・高校ではオーラルの授業も少しはありましたが、私は引っ込み思案であまり話したことがありません。話せるようになるには英会話スクールに行くのがよいでしょうか。

A : 日本の学校で英語を学んだ人の典型的な例ですね。英語を読むことはある程度できても(本当に読めるのかどうかは別にして)話すことには自信がない、こういう人が日本には多いようです。むかし学生だった頃には筆者もそういう一人でした。しかし考えてみると、英語を話すことが不得意なのは当然のことです。なぜなら、私たちは日本に住んで日本語で生活しているかぎり、英語を話す必要がほとんどないからです。中学や高校の英語の授業では、英語を話すことに力を入れている授業が最近増えてきました。そういう先生に英語を教わった生徒の中には、話すことを得意とする人も以前よりは増えてきたようです。そしてそれは時代の要請でもあり、望ましいことです。

しかし英語を「話すこと」(スピーキング)を学ぶのと、いわゆる「会話」を学ぶことは同じではありません。そもそも「会話」というのは学校で教えられるものなのでしょうか。まず「会話」の定義を辞書でしらべてみましょう。広辞苑には「相対して談話すること。また、その談話」とあります。ちょっと硬い定義ですが、要するに「(複数の人たちで)話し合うこと」です。英語の辞書ではどうでしょうか。OALDの定義は次のようです。

conversation: an informal talk involving a small group of people or only two; the activity of talking in this way.

この定義は分かりやすいですね。要するに、「会話」とは(1)形式ばらない、うちとけた話し合いであり、(2)2人または少人数の人たちの間でなされるものです。日本で育った私たちはみな日本語を習得しましたが、会話というものを意識的に教わったことはたぶんありません。そういう記憶は誰にもないでしょう。記憶にあるのは、誰かに会ったときに母親から「ちゃんとご挨拶をなさい」、「そんな言い方は失礼ですよ」、「大人の話に子どもが口を出してはいけません」などと注意されたことではないでしょうか。これらはすべて、会話をするときの「決まり」(ルール)に関する事柄で、会話そのものではありません。ルールならば教えられます(それについては次回に取り上げる予定です)。

さて学校で行う授業では、そういう社交的な場面を作るのは容易ではありません。どうすれば授業の中に「形式ばらない、うちとけた話し合い」をするような場面を作ることができるでしょうか。これはなかなか難しい課題です。そういう授業を試みている先生もいます。しかし正直なはなし、そのように作為的な場面で自然な会話が進行するとは思えません。ゲームをしたりディスカッションをしたりすることはできますが、それらは特定の学習目的を持ってなされる活動であり、自然な会話とは違うものです。極端な言い方だと思われるかもしれませんが、会話は授業では教えられないものです。それは「習うより慣れよ」ということわざの通り、日常的に英語を使って生活している人たちと気楽に話をする経験を通してしか学ぶことができないものなのです。

これに対して、学校の授業ではスピーキングを重要な指導目標の1つとして取り上げることができます。スピーキングの目標は簡単に言うと次の2つです。

(1)相手の話すことをよく聴いて理解し適切な応答をすること。

(2)自分の話したいことを相手に正しく伝えること。

こういう活動ならば英語のすべての授業に取り入れることができます。この2つの活動を中心に展開するのが「スピーキング」の授業です。

以上の議論を基に、今回の質問者の最後の問い「英会話スクールに行くべきか」にどう答えるかを考えてみましょう。行く、行かないは個人の自由ですが、まず行く前に考えるべきことは、学ぶ目的を明確にすることです。漠然と話せるようになりたいというのでは駄目です。たとえば「英語のネイティブ・スピーカーと会話をする経験を積む」ことに目的をしぼることです。会話が「習うより慣れよ」であるならば、会話経験を積むことが必要だからです。気になるのはこの質問者の「引っ込み思案」(英語では ‘shyness’ )です。それ自体は悪いことではありませんが、自分でそう決めつけるのは良くありません。英語を話すときには常に積極的な態度が必要であり、引っ込み思案は克服されなければなりません。筆者の経験からは、それを克服することは可能です。(To be continued.)