Archive for 11月 8th, 2017

< 社説よみくらべ 9 >

9.日米首脳会談

 アメリカのドナルド・トランプ大統領は、アジア5か国外遊の最初の訪問国として日本を訪れ、11月6日午後、安倍晋三首相とおよそ30分間首脳会談を行った。その後、午後3時(つまり、夕刊には記事が間に合わない時間)から、両首脳は30分間の共同記者会見に臨んだ。質問者は国内・国外各二人ずつで、質問は、会談の意義、北朝鮮問題、日米貿易、拉致問題、テキサスの銃乱射事件の5点であった。

 各社社説の見出しは次の通り。

讀賣新聞   強固な同盟を対「北」で示した
朝日新聞   中ロ巻き込む外交を
毎日新聞   試される非核化の構想力
日経新聞   日米主導でアジア安定への道筋を
産経新聞   同盟の絆で国難を突破せよ 中国念頭に海洋戦略一致も大きい
北海道新聞  直言できる蜜月関係こそ
河北新報   平和的解決共有してこそ
中日新聞   戦略的外交を展開せよ 米大統領のアジア歴訪
中国新聞   「蜜月」だけで大丈夫か
南日本新聞  親密強調だけでいいか
沖縄タイムス 沖縄の不安置き去りに

 総じて全国紙が肯定的な評価をしているのに対して、ブロック紙、地方紙の論調が厳しい。京都新聞の社説は中日新聞と同じだから、共同通信の配信原稿だろう。また、沖タイ以外の社説は、トランプ大統領と拉致被害者、被害者家族との面会をとり上げ、一応評価しているが、それが今後被害者の救出につながるのかについての見解は見当たらない。

読売新聞社説は、北朝鮮情勢が緊迫度を増す中、日米の強固な結束を内外に示した意義は大きい。両首脳は、北朝鮮に対して「国際社会と連携し、あらゆる手段を通じて最大限圧力をかける」方針で一致した。しかし、最終的に外交手段で北朝鮮に政策転換を迫るには中国の積極的関与が欠かせないし、不測の事態に備えた抑止力強化も大切。もう一つの焦点であった経済問題では大統領は対日貿易赤字にこだわったが、貿易収支の数字だけをあげつらうのは時代錯誤であり、首相が「2国間貿易だけでなく、アジア太平洋地域での高い基準つくり」を強調したのはもっともであるとしている。

朝日新聞社説説は、会談では、両首脳が互いの絆の強さを改めて示した。両者は北への圧力の強化で一致したことを強調したが、圧力は対話のための手段であり、そこへ導く粘り強い努力が日米双方に求められるとしている。そのためには、日米の認識を韓国、中国、ロシア、アジア各国とどう調整していくかが重要で、とりわけ中国の協力は欠かせない。その際留意すべきは、両首脳が共通のアジア戦略として掲げた「自由で開かれたインド太平洋構想」であり、中国の「一帯一路構想」に対抗するものと受け取られないようにすべきであると警告している。

毎日新聞社説は、両首脳の会談は5回目で、日米首脳がこれほど緊密に連携した例はない。率直に議論できる関係は評価されよう。北朝鮮に米国が国際社会と共に経済的、外交的圧力をかけ、これに日本が同調するのは当然だろう。だが、圧力の先にどんな解決策があるのか示されただろうか。軍事衝突は絶対に避けなければならない。解決には中国の協力が不可欠だが「アジア太平洋構想」には「一帯一路」をけん制する狙いがある。必要以上に中国を刺激することは避けるべきだ。日米関係と日中関係などのバランスをとりながら、どう「危機」を克服していくかが、安倍外交に問われている。と論じている。

日経新聞社説は、ゴルフ接待には賛否両論あるが、シンゾ―・ドナルド関係が日米同盟をより強固にしたといってよいだろう。日米が主導して「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進することで一致したのは、アジアの平和と繁栄に資すると評価し、インドやオーストラリアなども巻き込み強固な枠組みに育ててほしいと期待を示している。北朝鮮問題で有事もありうる状況を考慮すれば、トップ同士のパイプは太いに越したことはない。米国政府内には宥和を志向する向きがあるが、両首脳が、対話より圧力に軸足を置くことを改めて確認したことは重要だと会談の結果をほぼ全面的に肯定している。

産経新聞社説は、両首脳が日米同盟の揺るぎない絆を世界に示し、北朝鮮問題をはじめとする難局を乗り越えていることを確認したのは、大きな成果だとして、個人的な信頼関係に基づく緊密な意思疎通と協力により、危機の克服に全力であたってほしい。北朝鮮問題や国際秩序を脅かす中国の行動をコントロールするには日米同盟の結束が欠かせないし、外交努力を有効にするためには同盟の抑止力、有事べの対応力を高めるのとが必要であり、高性能の米国兵器の輸入を含め防衛力を質的、量的に拡充するという約束を実行することが重要だとしている。

北海道新聞社説は、両首脳は北朝鮮への圧力を最大限高めていることで一致したが、圧力はあくまで北朝鮮に核放棄を促す手段のはずだ。圧力自体が目的化して緊張が高まれば、破局につながりかねない。トランプ氏にある程度自制を促すのも首相の役割だったはずだが、そんな場面はなかったようだ。北朝鮮問題で関係国が一致するためにも「トランプ一辺倒」の外交でよいはずはない。トランプ氏は国際協調に反する行動を続けているが、国際的な批判を招く態度を改めるよう忠告するのも、信頼の厚いという首相の役まわりではないか。と”蜜月関係”のあり方に疑問を呈している。

河北新報社説は、個人的関係が深まることは歓迎すべきことには違いないが、安倍首相は、北朝鮮に対する軍事的選択肢も排除しないとするトランプ氏の立場に支持を表明した。これには疑問が残る。どんな軍事的オプションであれ北朝鮮から反撃を受ける公算は大きい。害をこうむるのは韓国と日本である。
圧力を強めつつ、いかに対話の道を探るかについてトランプ氏と共通認識を深めてほしかった。北朝鮮が核を持つ動機が米国から体制保証を得るためだとすれは、緊張緩和の糸口は「対話」だろうと論じている。

中日新聞社説は、北朝鮮が圧力一辺倒で核・ミサイル開発を断念する可能性は小さい。首相がトランプ氏に同調するのは「日米同盟の揺るぎなき絆」を誇示するためだろう。だが、朝鮮半島有事となれば、日本も甚大な被害を受ける恐れがある。交渉による平和解決を買うまで目指すようトランプ氏に説いたのだろうか。首相はトランプ氏の要請に応じて、防衛装備品の購入を増やす意向を示したが、やみくもな防衛力増強が、地域の不安定化を招くことに留意しなければならない。としている。

中国新聞社説は、安倍首相はトランプ大統領とゴルフを楽しむなど、個人的な親密さを見せつけた。ただ「蜜月」ぶりを強調するだけで課題山積の現状を打開する道筋は開けるのだろうか。両首脳は北朝鮮が政策を変更するまで圧力を最大限にまで高めていくことで一致したというが、北朝鮮はどう考えているのか。金一族の支配を米国に認めてほしいだけなら、話し合いの余地があるのではないか。圧力一辺倒で追い詰めれば暴発を招くだけだろう。対話の道を常の開けておく必要がる。と述べている。

南日本新聞社説は、会談が日米同盟の結束を北朝鮮にアピールしたのは間違いないだろう。だが、圧力強化一辺倒で北朝鮮が核・ミサイル開発を止め、実用段階に達しようとている核兵器の廃棄に応じるとは思えない。安倍首相に求められているのは、威圧的な発言を繰り返すトランプ氏への全面的な追従ではない。首脳同士の濃密な絆を強調するならば、安倍首相にしかできない働きかけがるはずだ。細心の注意を払いながら不測の衝突を回避し、あくまでも国際協調による解決に導く役割が求められている。と論じている。

沖縄タイムス社説は、両首脳とも軍事力行使に伴うリスクについては語らず、外交努力による解決への言及がなかったのが懸念される。記者会見では、沖縄の基地問題に関することは一切出なかった。首脳会談の日に合わせるように、辺野古新基地建設の埋め立てのための新たな護岸工事に着手した。揺るぎなき同盟の絆は、いびつな沖縄の犠牲の上に成り立っているのだ。日米首脳会談は沖縄の不安には何も応えておらず、とても納得できないと、怒りをあらわにしている。

さて、私の意見です。

 日米首脳東京会談の評価は、今日から始まるトランプ大統領の中国訪問、周金平主席との会談の結果を見ないと定まらないと思うが、トランプ氏は韓国滞在中、北朝鮮との対話に触れていることから考えても、5か国歴訪を終わった時点で、安倍首相の「圧力一辺倒」の北朝鮮政策が浮き上がってしまうことも考えられる。

 米・露・中など大国は、これまで、核の拡散について、さまざまな”ダブル・スタンダード”を駆使して、自国の利益を図ってきた( 桐英会ブログ 2013年3月~4月 北の核 1~7)。 そもそも、これら大国が、北朝鮮に対して核を放棄せよと要求しても、倫理的、論理的に正統性が無い。たとえは、中国は、アメリカが中国の核開発施設を先制攻撃しようと計画した時、毛沢東が「中国人民は、パンツ(ズボン)をはかなくても原爆を持つ」と叫んだ。そういう国が、北朝鮮に「核を持つな」と言ったところで、目くそ鼻くそを笑うたぐいのものでしかない。

 核大国の自分勝手に、国連加盟国の多くが反発を強めている。それが国連総会における「核兵器禁止条約」の採択であり、この条約の採択に努力したICANへのノーベル平和賞の授与という形で現れた。
今後もこの動向は続くだろうし、続いてもらいたいと思う。

 私は、結局北朝鮮の核・ミサイルの保持は既成事実化していくだろうと思う。イギリス王立安全保障研究所のマルコム・チャルマース副所長は、北朝鮮に核保有を認め交渉するしかないと、次のように述べている。「北が危険なのは、国家存亡の危機だと受け止めれば、米韓側の通常兵器に対抗する目的でも核兵器をつかいかねないからだ。破滅的な人的被害を韓国、おそらくは日本にもたらす軍事行動か、それとも北を事実上の核保有国として容認し、そのリスクを管理していくか。アメリカの安全保障専門家の多くは、北が自殺的な行動をとらない限り、後者の方がましだと考えている」(11月6日朝日新聞所載)。

私もそうなるだろうと考えているのである。そうなった場合、日本も核武装すべきだという議論が強まるだろう。私は反対である。ではどうすればよいのか。私の意見は別の機会に詳述したい。(M)