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<英語との付き合い27>

Author: 松山 薫

(101) < 英語との付き合い ○27 >

新しい仕事への挑戦—2

 私が残る人生でやらなければならない仕事は、成人のための英語再学習法の構築だった。
私はかねがね、我々日本人が学校で英語を学び、それを基盤として仕事で使えるような英語を身につけるには、どうすればよいのかを、国際放送英語ニュースの現場で自分の体験や、先輩の教え、同僚、後輩たちの悪戦苦闘を通じて考察し、当然のことながらそこには一定の法則性があることに気づいていた。同時に世界が急速に国際化へ向かって進み始めた状況から、いずれ、いわゆる英会話のレベルでは間に合わなくなり、英対話が必要になる日が来るだろうと考えていた。
 
 そんな折、協会(NHK)が、職員に対し、国際放送開始30年の記念事業を募集したので、これを機会に、みんなの体験とチエを集めて、“英対話への道”を構築し、NHK出版協会から本にして出す計画を立案し、英語ニュース班会にはかった。しかし残念なことに、多忙などを理由に、過半数の賛同をうることが出きなかったので、「それなら、自分が1人でもやってみせる」と啖呵をきったところ、その後何人かが個人的に協力してくれることになった。私には、やらねばならぬ責任が生じたのである。 
 
 私の観察では、毎年何人か英語ニュース班に配属されてくる新人の多くが、基本的な語彙やその使い方を十分にわきまえておらず、政治・経済・社会・国際などの基本的な知識にも欠けていた。そこで、私は、何人かの新人に、私が選んだ1,000語の基本語彙と例文の表を渡し、それが彼等のnews writingにどのように現れるかを観察したところ、効果は極めて大きかった。また、基本的な政治・経済・社会・国際関係などの知識の不足に対しては、部内で組織した研究会で、次のような考えを述べて努力を促した。

 「本当に有用な知識というものは、漫然と新聞や資料を読んでいても身につかない。漫然たる知識は、いわゆるflowの知識で、雑学コンテストの点数を上げたり、床屋政談のネタを探すには役立っても、物事を判断する際の基盤になるstockの知識にはならない。stockの知識を身につけには、何かひとつ、幹になる事項をえらび、それを追求することを通じて、枝を伸ばし、葉を茂らせるような方法をとることが必要である。」勿論、私たちの新人時代のような徒弟制度的な押し付けは出来ないから、個人の努力に待つしかなかったが、努力したかどうかで、2~3年たつと差は歴然としてくる。

 私は、この二つ、つまり、基本的な語彙の習得とstockの知識の涵養を、英対話の基盤を作るための基本とすることを、協力してくれる仲間に説得し、了解を得た。そして、これを最後にNHKを退職し、残る30年の人生をかけて英対話習得法の構築に立ち向かうことになった。

 ところで、前にこのブログに書いたが、私自身は、60年安保闘争でデモ隊が国会構内に乱入し、警官隊と流血の衝突を展開した悲惨な現場を取材して、同胞相撃つ悲劇を避けるために、安全保障問題を研究することの必要性を痛感した。そして、それは今に至るまで、国内、国際問題に対する私の判断の基盤になっている。

 昨年3月11日、福島原発の事故が報じられた際、津波の被災者には申し訳ないが、原発事故の方が影響は深刻化すると判断し、直後に書いたブログで、あきれるほど鈍い政府の対応を批判した。真実を隠しているとしか思えない政府、東電の記者会見、それをまともに追及しない記者達に対し、TVに向かって思わず「何ヤッテルンダ!」と叫んだ。ウランの濃縮度から考えて、原子炉が核爆発を起こすとは考えられなかったが、圧力容器、格納容器が何らかの損傷を受けた場合、放射能が大量に漏れて重大な環境汚染が広がると直感したのである。
また、1999年に東海村で起きた臨界事故の際、中性子で犠牲者がでたことが頭に浮かび、原子炉が中性子爆弾化する恐れがないのか心配になった。中性子爆弾というのは冷戦時代にヨーロッパ戦線でソビエトの戦車軍に対抗するためアメリカが考え出した戦術核兵器で、核爆発を抑え、大量の中性子を発生させて戦車の搭乗員を殺傷する。原子炉でメルトダウンが起き、再臨界で大量の中性子が発生して放射性物質とともに外部に流れ出れば、発電所の人達は死に絶え、原子炉は制御不能に陥る。

風向きによっては、被害が東京、神奈川にも及ぶ可能性が強いと判断し、家内と、ここに留まるか、どこかへ避難するか相談した。お互い老い先短い身ではあるし、避難先で持病が悪化した場合は悲惨なことになると考え、最悪の場合にはここで死ぬ覚悟をした。政府の無策によって、放射性物質が流れる方へ避難してしまった浪江町の人達には大変すまないが、今回私達は偶然助かった。しかし、東海地震で浜岡原発が重大な損傷を受けた場合、今度こそ、生存の可能性はないと考えている。(M)