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日本人の英語学習は、多くの人が指摘するように、それにかける個人の総体的努力の割に成果が上がっていないように思われます。しかし一部の人が言うように、すべての学習者がまったく無駄な努力をしているわけではないでしょう。一定の成果を得てい人もあるはずです。そこで、どのくらいの人がどの程度のレベルに達しているかを、TOEICの受験者のスコアから推定してみましょう。もちろん、TOEICは英語力のレベルを測定する国際的なテストであるとはいえ、そこからすべてが見えてくるわけではありません。しかし日本人の英語力の現状を知るには、これが有力な手掛かりを与えてくれます。

 TOEICは毎月実施されているテストですが、日本では3月が最も受験者が多く、毎年10万人を超える受験者があります。2012年3月に日本国内で行われたテストの受験者数と平均点は次の通りです(TOEIC公式データによる)。

受験者数:148,181(大部分が日本人ですが、若干の外国人も含まれます) 

リスニングとリーディングのトータル平均点:573.4(SD 171.6)

このテストの最高は990点で、平均は毎回570点から580点くらいです。上記のテストではSDが171.6ですから、その得点分布が正規曲線を描いていれば、401点から744点の間に68% の受験者が入ることになります。平均の573点というのは海外旅行で買い物ができる程度とされています。

 TOEICを受験する人たちの多くは、本気で英語学習に取り組んでいる人たちだと思われます。そうでなければ、このような面倒なテストを受験するはがありません。しかしそこには中学生から一般人まで多様なレベルの人々が含まれていますから、573点という平均点が高いか低いかを一概に言うことはできません。諸外国の受験者に比べて日本は低すぎると言う人もいますが、それぞれの国の英語学習環境は異なっており、日本人受験者の結果を他の国の受験者と単純に比較することはできません。ただ、日本の大学卒業者(大学卒社員)の平均が450点くらいというのは気になります。それは英検ならば準2級程度とされているレベルで、大学卒業者としては低すぎます。

 TOEICで「ほぼ適切なコミュニケーションが取れる」としているレベルの最低点は730とされています。最近日本の企業でも、大学新卒者の採用をTOEIC 730以上とする条件を付したものが現れました。外資系求人サイトでは平均して790点くらいが応募資格とされています。TOEICテストのスコア分布を見ると、受験者のうち730点以上をクリアする人は全体の約20%、790点以上をクリアする人は約13%です。つまりそれくらいの受験者は、日本の社会において期待される英語習得レベルにある程度到達していると言うことができます。ただしTOEICテストも英語達成度テストの一種であり、それに良い得点を取ったからと言って、完璧な英語力を保証するものではありません。事実、TOEICテストで800点以上取っても満足に話せない、書けないという人がいるというので問題になっています。TOEICはリスニングとリーディングのほかに、最近スピーキングとライティングのテストを開始しましたが、それらのテストの受験者はまだ多くはないようです。

 以上に見てきたところから、日本では多くの英語学習者が英語の達成感を味わっていないことが分かります。TOEICの点数でいうと、730点に達していない約80% の人たちは、英語学習に多大の関心を持っているにもかかわらず、またそれなりに努力をしているにもかかわらず、満足なコミュニケーションができないことに悩んでいると想像されます。また730点は取ったけれども、スピーキングやライティングに悩んでいる人もあると考えられます。そして、これから英語学習に本格的に取り組もうとしているさらに若い世代の多くの人々がいます。そのような人たちが各自の学習を効率よく進めるためには、英語学習環境をどのように改善したらよいのでしょうか。それには学習者だけでなく、指導する側も一緒になって考える必要があります。筆者は元英語教師でしたので、英語を学ぶ意志を持っている多くの方々のために、何とかしてあげたいと祈るような気持ちでいます。そして、これまでに実践されてきた教え方と学び方を再検討する必要があると感じています。

 次回には、この問題を教える側から見ていくことにします。(To be continued.)