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(114)英語との付き合い-39

<英語を学ぶ日本人(成人)の考え方>(1) 

 茅ヶ崎方式の英語学習会が発足してから丁度20年経ち、21世紀に入った2001年、前年に小渕恵三首相の私的機関である「21世紀日本の構想」懇談会が発表した報告の中の、“英語第二公用語論”や小学校への英語教育の導入の可否をめぐって賛否の意見が渦巻いていた。私はこれを機会に、茅ヶ崎方式の協力校で学ぶ人達が英語の学習についてどんな考えを持っているのかを知り今後の著作に活かしたいと思い、(有)茅ヶ崎方式英語会に協力校アンケート調査を実施してもらった。回答にはかなりの努力を要する設問であったが、当時の協力校全体の半数にあたる67校から真摯な回答があった。以下各項目について順次掲載し、項目ごとに私の見解を付したい。(実施は2004年夏)

● 調査の内容と方法

1.質問は次ぎの7項目とした:

① 英語を学ぶ目的。                                    
② 日本人にとってどんな英語が必要か。                             
③ 英語学習の心がまえ。                                  
④ 学習の方法。                                       
⑤ 文法学習について。                                
⑥ 指導者と教材。                                      
⑦ 日本語或いは日本語学習との関係。言語についての基本    的な問題。 
 
2. 質問の方法:

私があらかじめ下記の10冊の本を読んで、上記7項目に該当する部分を抜き出して分類し、回答者の考えがどの意見にもっとも近いかを訊ねた。
* 順不同。<   > 内は初刷の日付。 (    ) 内の数字は著者の生年。

1. 日本語力と英語力 
   斎藤孝・斎藤兆史 (1960 明大教授: <2004年4
月> 1958 東大教授)  中公新書 ¥780     

2. 英語は日本人教師 
   上西俊雄  (1939 辞書編集者) <2004年4月>   洋泉社   ¥750 

  3. 超英語学習法 
     野口悠紀雄  (1940 元東大教授)<2004年4
月> 講談社   ¥1575 

   4. 英語の音読指導 
      土屋澄男  (1930 元文教大教授)  <2004         年5月> 研究社   ¥2310

   5. 世界の英語を歩く  
      本名信行 (1940 青山学 院大学教授) <2003年      11月> 集英社新書 ¥735 

   6. あえて英語公用語論  
      船橋洋一 (1944 朝日新聞コラムニスト) 
      <2000年8月> 文春新書  ¥740        
    
   7. 英語を子供に教えるな 
      市川力 (1963 米国在住日本人子女進学塾)          <2004年2月>  中公新書  ¥800 
       
   8. 日本人は何故英語が出来ないか 
      鈴木孝行 1926 慶応大学名誉教授) <1999年7      月>  岩波新書  ¥700        

   9. 誰がこの国の英語をダメにしたか 
      澤井繁男 (1954 駿台予備校講師)
      <2001年12月> NHK出版 ¥700           
  10. 英語屋さんの虎の巻 
      浦出善文 (1961 産業翻訳者)<2001年11月>       集英社新書 ¥710 
        
① 英語を学ぶ目的

  ● アンケート回答者の選択 (番号は上記の10冊の本の番     号)
  * 井深大,盛田昭夫の両氏は、かなり高い年齢になってか     ら英語の勉強を始めたにもかかわらず、英語の使い手と     してはかなりのものだった。・・・ソニーのトップとして、ま      た日本を代表する企業人として、相手にどうしても伝えた     いことがあったからこそ、それを英語でどう表現すればよ     いのかという問題に、並々ならぬ関心があったにちがい
     ない。(10)
  * 20世紀の日本の歴史をすべて「失敗」で片付けるつもり     はありません。しかし日本の失敗と過ちを冷静に振り       返っておくことも必要です。その中のひとつに「対話」の      失敗があります。・・・21世紀になると、グローバリゼー      ションと情報革命によって、国々と社会と個人の世界規      模でのネットワークが急速にひろがり、それを使った対      話が可能になるからです。ここでの共通語は英語となる     でしょう。(6)

 ● 私の見解

 回答者が選んだこの二つの文章は、国際化が進むにつれて、ビジネスをはじめ、様々な分野でのコミュニケーションには、共通語としての英語を習得することが、重要な条件になりつつあることを示しており、同時に、目的を達成するための手段である英語の習得が、日本人にとって決して容易でないことを暗示しています。
茅ヶ崎方式英語会の目的は、人それぞれの人生の目的を達成するために、英語が必要だと考え、具体的な目標(例えは英検1級合格)に向かって努力している人達が、その目標を達成するお手伝いをすることです
 ところで、「私にとっての」英語学習の究極の目的は、「戦争の根絶」に寄与することです。以前このブログにも書きましたが、私は戦争中、運よく3回命拾いをしました。一方で、運悪く戦争で命を失った大勢の人達を知っています。特攻隊員として花も蕾の若い命を捧げた動員学徒の先輩達、そして何よりも空襲で焼け野原になった東京のあちこちで見た黒焦げの遺体となった数しれぬ人達、それに引揚げの途中、国籍不明の潜水艦に船を撃沈されて北の海に沈んだ妻の家族。これらの人達の無念の思いを代弁し、再びこのような不幸を生む戦争を起こさせないようにするのが私の使命だと思っており、敗戦以来私の身についてしまった生き方です。
 そういう生き方をする上で、英語は有効な手段であると実感してきました。30カ国近い国の人達が働くNHKの国際局では、共通の言語は残念ながら日本語ではなく英語でした。何かトラブルが起きても英語が出来なければ解決は不可能です。相手の言い分をきちんと理解し、こちらの真意を正確に伝えられる程度の英語が身についていれば、たいていのトラブルは話し合えば解決します。むしろトラブルや対立があって、それが解決した後にこそ、本当の信頼関係が生まれると感じました。アメリカ人ジャーナリストとは、廣島、長崎への原爆投下について対立しましたが、人類共滅の危機をもたらしかねない核戦争という愚行は絶対に防がねばならなず、そのために働くのはジャーナリストの使命だという点では、多くの人達と意見が一致しました。激しい意見のやり取りの後、”We are all humans ! ”と言いながら強く私の手を握ったアメリカ人の笑顔が今も心に残っています。 (M)