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(116)英語との付き合い-41

<英語を学ぶ日本人の考え>(3)

3.英語学習の心構え

● アンケート回答者の選択 <末尾の数字は後掲書の番号>

* 英語に上達するために必要なのは訓練である。したがって、「英会話学校が役に立つか否か」を判定するためには、「そこにネイティブ・スピーカーがいるかどうか」ではなく、「そこで適切な訓練が行われているかどうか」をみなければならない。(3)
* 英語の高度なコミュニケーション能力は、教室でほんの少し、外国人の指導の下に会話や討論のまねごとをしたくらいで、身につくものではありません。...だから、本気で心から英語力が身につくことを望むものは、学校外で可能な限り、自分の利用できる時間と手段を組み合わせて、努力しなければ駄目なのです。(8)
* 英語は母国語でない人々にとっては、英語で全てのことが出来なくても少しも困りません。私たちは自分の都合に合わせて、仕事、交際、教養、娯楽、研究、留学など(生活の)一部で英語ができればそれでよいわけです。...英語は、どんどん使わなければなりません。もっとできるようになってから使うなどと考えるのは本末転倒です。泳げるようになったら泳ぐなどという人はいないでしょう。完全主義は語学学習の大敵です。(5)
* 日本では勉強はとかく安易に走りがちです。写真やイラストを満載した学習雑誌をぱらぱらとめくっていれば、何とかできるようになるなどと考えるのは大間違いです。しっかりと勉強しなければ絶対にできるようにはなりません。同時に、地道に努力すれば、必ずできるようになるのです。(5)
* 年をとったせいで英語を習得する能力が消えることはない。たとえ成人した後であっても、 集中して英語を学習する時間を確保すること、失敗や間違いを恥ずかしがらないこと、そ
してひたすら英語を聞いて英語の音に慣れることさえできれば、高度の英語力をマスターすることは可能なのである。(7)
* 外国語の勉強は、何歳になっても出来る。「40才を過ぎたらムリだ」などと言ってはいけない。トルストイは老年になってイタリア語を習得した。シュリーマンは、64才になってからも新しい外国語に挑戦した。(3)
* 日常会話レベルを超えて英語を使いこなすようになるためには、ある時期に一定期間英語漬けになって、そうとうの訓練をしなければならない。(7)
* 母語と第二言語はその習得に決定的な差がある。我々は母語を手がかりとし、母語との細やかで、綿密な参照・対応関係を駆使しながら第二言語を理解せざるをえない。…本場の英語だからといってネイティヴにやみくもに習ったところで身につかない。(9)
* 言語に関する知識と言語を用いる技能とは同一ではない。・・・技能の獲得には、実際に使ってみて幾度も誤りを犯し、反省し、修正し、学習者自身が納得するシステムを仕上げていくプロセスが必要なのである。それは学習者に大変な時間と努力を要求する。(4)
* どの程度の期間勉強したらよいのだろうか。外国語を支障なく使えるようになるために必要な勉強時間は、4000時間程度といわれている。このうち一部は学校で勉強している。どのくらい勉強したかは人によって違うが、だいたい2000時間から3000時間だろう。そうすると、1000時間から2000時間勉強する必要がある

● 私の見解

 英語を、コミュニケーションの技術という面から考えると、他の価値ある技術と同様、その習得に一定期間の修練が必要なことは、自明の理です。外国人と対話のできる英語力を身につけるのに、特別な才能はいりませんし、年齢もあまり関係ないと思いますが、それぞれが必要とするレベルの対話の目標に向かって一定の期間、努力することが不可欠であり、それを自覚せずに学習を始めると多分挫折するでしょう。一定期間の、“一定は”、具体的な目標や最終目的によって異なり、既有の英語力や学習にかけられる時間によっても長短はあるでしょうが、どんな目的で学習するにせよ、目標にむかって一定の期間、きちんとした方法論に基づいて、修練することは絶対に不可欠です。ですから、私は学習会の初めに、それが出来そうもない人は、英語のみならず、外国語の学習はやらないほうがよいと告げることにしていました。
 昔から(今でも?)、例えば、演歌歌手とか、指物師、刀鍛冶などになりたくて、師匠に弟子入りすると、はじめは庭の掃除や雑巾がけばかりさせられたそうです。不合理に見えて、それは、その人が、技術を習得するための基盤になる単調な作業に、継続して取り組むことが出来るかどうかをチェックする期間として必要なのだろうと思います。

 一方で、指導する側としては、「一定の期間」について、なるべく具体的にメド付けをして学習者に示す責任があります。私たちの学習会では、英語を話す外国人と英語で一応の対話ができるまでの学習時間を、中学校卒業の英語力+1600時間と算定しました。いろいろ参考書も読みましたが、結局、私と同僚たちと体験に基づいて算定することになりました。算定の基礎としたのは、週6日間、毎日1時間の自己学習(予習・復習)と1時間半の学習会参加×年間40週=年間260時間×5年間=1300時間+対話練習300時間 で 合計 1,600時間 です。
 しかし、実際に始めてみると、英語を再学習したいと考えている日本人成人の多くの英語力は、外国語学習指導要領が定めている中学校3年程度には達しておらず、英語学習の基盤をつくるため、さらに1年間260時間が必要であると判断するに至りました。つまり、最初から始めて、全部の過程で一期間(半年)学習するとすると合計 1,860時間 ということになります。

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1.日本語力と英語力 斉藤孝・斉藤兆史 中公新書 2.英語は日本人教師 上西俊雄 洋泉社 3.超英語学習法 野口悠起雄 講談社  4.英語の音読指導 土屋澄男 研究社
5.世界の英語を歩く 本名信行 集英社新書  6.あえて英語公用語論 船橋洋一 7.英語を子供に教えるな 市川力 中公新書  8.日本人は何故英語が出来ないのか 鈴木孝行  岩波新書  9.誰がこの国の英語をダメにしたのか  澤井繁男  NHK出版10.英語屋さんの虎の巻 浦出善文 集英社新書 (M)