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「予習プリント」は教師にとっても生徒にとっても、教科書のテキストを深く理解するためにたいへん有効です。それだけではなく、授業でのテキスト理解の時間を短縮するのに大いに役に立ちます。一般に、最近の英語指導法は予習よりも復習を重視するようです。たしかに、英語の学習経験の乏しい中学生には、予習よりも復習のほうが大切でしょう。彼らはまだ英語がどんな言語かをよく知らないからです。しかし高校生には予習を奨励してよいのではないでしょうか。予習をするためには既習の知識を利用する必要がありますから、それは必然的に、生徒各自がすでに所有している英語の知識を動員します。また予習には辞書が必要になりますので、生徒は辞書を頻繁に引くことによってその使用に習熟します。日本人が自力で英語力を高めるためには、辞書の活用は必須のものです。そしてその技能は、高校生時代にこそ身につけるべきものです。辞書を引きながら未知の英語の文章に取り組むことは、高校生が英語学習で味わうことのできる特権的な楽しみの一つではないでしょうか。

 どのような予習プリントを作るかは教師しだいで、生徒の学力や人数、教材の種類や難易、学習の目的等によって違ってきます。おそらくその形式や内容は多種多様でしょう。そういうプリントを持ち寄って、互いに学び合う研究会も多数存在することでしょう。望ましいのは、各学校で同じ学年を分担している教師たちが、各自の作成しているプリントを持ち寄って気軽にコメントをし合うことです。もしそういう会合を持っていない学校があるとすれば、すぐにも始めてほしいものです。

 さて予習プリントを作成するにあたっては、作成者である教師が、生徒と一緒になって新しいテキストに取り組む姿勢を保つことが大切です。古いタイプの教師には、自分は生徒より知識と技能において格段に優れているのだから、一段高いところから教えてやるという考えの人が多かったと思います。しかし現在はそのような態度は通用しません。たしかに教師は生徒にとっては先生ですが、共に英語の学習者であることには変わりありません。先生は生徒よりちょっとだけ先を歩いているだけです。生徒と一緒になって未知のテキストに取り組む姿勢が生徒を刺激し、先生を目標にして自分も頑張るぞという気持ちにさせるのです。

 ここで筆者の手許にある新聞記事をテキストに見立て、簡単な予習プリントを作ってみます。このテキストは特に語彙の面で高校生にはちょっと難しいと思われますので、「時事英語」を学ぶ大学生か成人のクラスを対象としていると考えてください。それは先日のアメリカ大統領選挙でのオバマ再選を報じている新聞記事(The Japan Times, Nov. 8)の一部です。(スラッシュはパラグラフの切れ目を示します。)

The election sorted out winners and losers, but it left intact a polarized governing structure in Washington that has been unable to produce much more than gridlock over the past couple of years. / President Barack Obama appeared on track to become the first president in modern history to be re-elected with a smaller share of the vote than he got in his first bid. And while voters opted to keep Congress in the same hands as the past two years, congressional approval ratings are at near-record lows. / After an intensely negative campaign in which both parties defined themselves by who they were not and where they would not compromise, neither can claim that voters gave them a mandate to actually accomplish anything. / But as they return to Washington and a set of immediate challenges, starting with the yearend “fiscal cliff,” the election has given them a new understanding of what they are up against. (Source: The Washington Post)

 <予習プリント> 次の下線部に注意してそれぞれの語句全体(名詞句)の意味を考え、その具体的な事実(または内容)をしらべてみよう。

① a polarized governing structure in Washington that has been unable to produce much more than gridlock over the past couple of years

② the first president in modern history to be re-elected with a smaller share of the vote than he got in his first bid

③ an intensely negative campaign in which both parties defined themselves by who they were not and where they would not compromise

④ the yearend “fiscal cliff

⑤ a new understanding of what they are up against

 これはほんの一例ですが、このような予習プリントを配布して生徒に予習の習慣をつけさせるポイントを3つほど挙げておきます。第1に、プリントの作成があまり教師の負担にならないようにすることが大切です。負担がかかり過ぎると長続きしません。できるだけ簡単に作成できるものにします。この仕事は ‘sustainability’ (持続可能性)ということが非常に重要です。第2に、プリントの課題が生徒にとってなるべくチャレンジングなタスクになるようにします。与えられた選択肢の中から選ぶというような単純な作業よりも、辞書をしらべ、頭を使って考えさせるもののほうが優れています。こうして予習プリントで授業の準備をすることによって、生徒は今日の授業で学ぶことを予測することができます。第3に、予習をしてきた生徒が授業で達成感を味わうことができるようにしたいものです。意欲的な生徒にとっては、予習プリントのタスクがチャレンジングであればあるほど達成感が大きいかもしれません。しかし生徒の負担が大きすぎないよう、クラス全体への気配りも必要でしょう。(To be continued.)