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< 総選挙を前に思う > 松山薫

 総選挙が間もなく実施されることになった。
83歳の私にとっては、これが人生最後の総選挙になるだろうから、悔いのないような投票をしたいと思う。選挙の時々に自分なりに考えて候補者を選んできたつもりだが、後になってみると、なんであのような人物を選択したのかと思うこともある。公約を弊履のごとく捨て去る政党や政治家が悪いのか、人を見る眼がなかった自分のせいなのか、或いは両方であったかもしれない。

 20歳で選挙権を得て以来、今まで一度も棄権したことはないし、私の判断基準は一貫して、第一が反戦平和、第二が、公正な社会を目指しているのかどうかであった。今回も当然この基準で選択するつもりである。

 政党政治である以上、まずは政党を選び、その政党の候補者に投票するのが筋であり、私はほぼ日本社会党、社民党を選択してきたが、前回は民主党候補に投票した。なんとしても政権交代が必要だと思ったからである。政権交代は実現したから、自分の投票行動は間違っていなかったと思っている。
 
 しかし、民主党は圧倒的多数を与えられながら、政権公約の多くを実現できなかった。その上、松下政経塾出身の野田、前原、玄葉らは、集団自衛権を認めて憲法を実質的に反故にしようとしているようだし、TPPに参加して、日米同盟の深化というお題目で対米従属を一層進めることになるだろうと思うから、今回は選択外だ。

 かといって、自民党へなどという選択はあり得ない。安倍は前に総理を勤めた際、教育基本法を改正し、今度は憲法改正をもくろんでいるからだ。それに、この党は、戦後50年にわたる一党支配の中で、国と国民をeconomic animalsと化した経済至上主義、その挙句国家財政を破綻の淵に追いかんだことへの反省が毛頭見当たらないのだから問題外である。

 そこで、かなりの有権者がいわゆる第三極に期待をかけているようだが、私には、これはかなり危険な道に見える。第三極の大連合を呼びかけている石原は核武装論者であり、尖閣、竹島での緊張関係を利して、排他的ナショナリズムを復活させる恐れが強い。こういう人物と手を組もうという橋下は、教育にもバウチャー制をという新自由主義的競争原理主義者である。
維新8策の中には、官僚制の打破、地方主権、首相公選制など、私の持論と一致するものもあるが、競争原理主義に基づく限り、行き着く先が、”We are the 99%.”の 超格差社会であることは、サッチャー、レーガン、小泉の前轍で明らかである。

 こう考えてくると、有象無象の政党は15もあるが、選ぶべきところがない。私としては、「平和憲法護持、脱原発、格差社会の解消」の三原則の下に、競争原理ではなく、創造原理によって持続可能な経済社会を目指す日本版”緑の人々“のような国民大連合が生まれることを期待しているのだが、私の目の黒いうちには実現しそうもない。せめて、そのための萌芽になるようなものが生まれることを願って比例区の投票をしたい。

 小選挙区制のもとで、選ぶべき政党がないとなると、候補者選びは極端に難しくなる。候補者の数が少ないので、自分の基準に沿う人物が直ぐには見当たらない上、昔のような立会演説会もないから、候補者の本音はなかなかうかがい知ることができない。結局、選挙公報と候補者の履歴、それにTV,RADIOの政見放送が頼りだ。

 その際私がまず排除するのが、世襲議員である。公正な社会を作るという第二の基準に真っ向から反するからだ。自民党は総裁初め党三役全員が親の跡目を継いだ世襲議員である。民主党は党三役には世襲議員はいないが、最高顧問なる老人の多くが世襲議員である。とにかく、一応自由選挙がおこなわれている国で、これほど世襲議員が跋扈している国を知らない。世間の風当たりの強さに、自民党も民主党も、世襲議員を制限する案を考えたようだが、いつの間にか立ち消えになった。これらの案にあったように、勿論政治家の親族にも政治家を目指す自由はある。いわゆる落下傘候補として見知らぬ土地で自ら地盤を築き上げて政治家になるのならだれも文句はないだろう。解散直後の議員総会での野田首相の「世襲政治家の跳梁跋扈を許してはならない」という絶叫だけには共鳴した。

 私は、NHKにいた頃かなりの数の政治家に合い、保守党の中にも立派な人物がいたことを知っている。また、NHK労組の役員として委員長だった上田哲の選挙専従をつとめ、多くの革新政党の政治家に会い、彼等の社会変革にかけた人生に感動したこともあった。だから、政党によって政治家が選べないとしたら、保革を問わず、本当に公正な社会を目指す信念を持った人物かどうかを出来るだけ見極めて、bestやbetterではなくても、worstにならないように、人生最後の総選挙の投票をしたいと考えている。(M)