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(137)<北の核−6>

 終章(2)希望 

 真偽はさだかではないが、断片的な情報によると、北朝鮮の核爆弾は、これまでのところ全て原爆で、プルトニウム爆弾が主体であったが、近年はウラニウム爆弾に転換中で、あわせて数発程度を保有しているのではないかという。北朝鮮は鉱物資源の豊富なところで、大規模なウラン鉱もある。ウラニウム爆弾は劣化が進むプルトニウム爆弾にくらべて管理保管が容易なところから、濃縮施設が整えば、核爆弾の備蓄が進む可能性が高いという。核弾頭は、3回の核実験によって1トン以下に小型化されていると見られ、実験による地震の規模から、威力は数キロトン(nominal bombの数分の1) と推計されているが、3回目の実験は水爆に近い強化原爆であったという推測もある。強化原爆が完成すれば、威力は200キロトン (nominal bombの10倍 )以上ということになる。

 一方、運搬手段のミサイルは、V2をモデルにソビエトが開発したスカッド・ミサイルの系統に属し、短距離のものから射程1300キロの「ノドン」、3000キロの中距離「ムスダン」、その改良型で数千キロ程度のKN08, それに1万キロを超える大陸間弾道弾「テポドン」を保有しているといわれる。装着できる弾頭の重さ(payload)は、1トン程度ではないかとみられており、ブースターには常温の液体燃料を使用するため1時間程度で発射可能であるともいわれる。いずれにせよ正確なところはわからないが、仮に上記のような核兵器が実戦配備となれば、韓国は勿論、日本全土、アメリカの東海岸までが核攻撃の対象になる。

 北朝鮮の核による攻撃が迫っていることをアメリカが察知すれば、アメリカは通常兵器による北朝鮮ミサイル基地の攻撃に踏み切るだろう。つまり、考えられるシナリオはこうだ。北朝鮮が、核攻撃を準備していることをアメリカが偵察衛星で察知した場合、アメリカ軍は、B-2やB-52、潜水艦から発進させた通常弾頭の巡航ミサイルで北朝鮮の核ミサイル基地をたたく。同時に米韓合同軍が地上及び海上から北朝鮮へ侵攻する。同時に或いはその前に北朝鮮軍が韓国へ侵入する。つまり、休戦中の朝鮮戦争が再開されるわけだ。北朝鮮の核基地は、地下化や、移動基地化され、所在もよくわかっていないらしいから通常兵器による第1撃で壊滅させるのは不可能かもしれない。

 そうなると、北朝鮮の核ミサイルが発射される。核ミサイルは一旦発射されれば完全に防ぐ手段は今のところない。アメリカの迎撃システムBMDは、確度90%以上だというからテポドンは多分大気圏外で撃墜されるが、もし、一発とどけば300万人、最大6000万人が死傷するという計算もある。韓国については、アメリカはすでに戦術核兵器を引き揚げているし、北朝鮮は韓国を併合するつもりだから、多分土壇場まで核兵器は使わない。そうなると最大の被害を被るのは日本だ。日本については原発も狙うと公言しているので、朝鮮半島中部西側の旗対嶺付近にあるあるという基地から核ミサイル「ノドン」が発射されれば、まさに指呼の間にある日本海側の島根、福井、新潟などの原電には、7~8分で届いてしまうから防ぎようはないだろう。そうなると、「日本は人の住めないところになる」という金正日の遺言はまんざら妄言だといえなくなる。

 北朝鮮が核戦争へ向けて暴発するという悪夢の予感は消しがたいが、私には、そうはならないのではないかという希望的観測もある。その根拠は「個人と組織は違う」ということだ。

 北朝鮮は狂気ではあっても、狂人ではない。刃物を持った狂人の暴発は止められないが、組織という集団の中には、暴挙への歯止めとなる部分がある。日本を核兵器によっては廃墟と化した後、北朝鮮という国が国際社会の中で果たして生きていけるのか、国民は隣国の無惨な姿を狂喜して迎えるのか、と考える人達がいるはずだと私はどこかで信じている。

 前回核兵器の使用を検討したアメリカの例を挙げたが、中国も核兵器の使用を検討したことがあったといわれる。1069年東部国境をめぐって両国が武力衝突した時のことだ。特に、アムール川(黒龍江)支流の中洲、ダマンスキー島(珍宝島)をめぐる師団規模の戦闘では、中国側には数百人の死者が出たという。当時中国は文化大革命という異常事態にあり、共産党指導部内の激しい権力闘争の中で、異常な判断が下される可能性はあったのではないか。しかし、そうはならなかった。人類を破滅に追いこみかねない核兵器の使用への懼れが、指導部を踏みとどまらせたのだと私は思う。

 核とは人類にとってなんなのか。北朝鮮の核問題を契機に、より多くの国々、より多くの人々が本気で考え、行動することになれば、禍を転じて福となすことが出来るかもしれないと願ってこのブログを書いている。(M)