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「いじめ防止対策推進法」の成立で考えたこと
(1)“いじめ防止対策推進法”という法律が、2013年6月21日に成立して、施行されるのは今年の秋からです。国会での審議では、反対はごく少数だったようですが、この法律の効果については、賛否両論があるようです。私もこういう法律が出来れば、“いじめ”が無くなるとは思いません。今まで学校長や教育委員会の人たちが頭を下げて謝る光景を何度も見せられました。あの“隠ぺい体質”は、報告を義務付けたくらいですぐに改善されるとは思えないのです。

(2)話は変わりますが、“男女雇用機会均等法”が出来たのは、1972(昭和47年)のことです。しかし、どこの職場でもこの法律が守られているとはとても思えません。最近アメリカの大リーグでは、野球選手(当然男子のみ)に赤ん坊が生まれた場合に、その選手は3日間だけ育児休暇が取れることになったと報道されました。この権利の取得には、40年間の闘争の歴史があったそうですから、アメリカでも楽に得られた権利ではないようです。

(3)日本のテレビの世界では、“カメラマン”という呼び名は市民権を得ていますが、“カメラウーマン”という用語は聞かれないように、日本社会は依然として男性優勢社会です。例えば、天気予報を“カワイ子ちゃん”に言わせる放送局がありますし、甲子園の高校野球の中継でも、“カメラマン”が応援団の“カワイ子ちゃん”をアップで見せる場面がよくあります。

(4)テレビでは女性アナウンサーは40歳を過ぎるとラジオに回されるという噂があります。そのラジオにしても、女性は30代くらいの人が多いようです。夕方のニュース番組(フジテレビ)の安藤優子キャスターのように、不倫騒動で騒がれようと断固として地位を守る人は稀だと思います。しかし、彼女にしても、NHK 出身の木村太郎キャスターがそばにいて助言をしています。

(5)このような社会では“いじめ”の根絶は無理でしょう。では、イギリスやアメリカでは、“いじめ”は無いのかと思うとそうではありません。私はその実例として、学校関係者には、まずサマセット・モームの『人間の絆』を読むことを薦めたいと思います。これまでに何度か訳されたこの長編小説も、行方昭夫訳『人間の絆』(岩波文庫、2001)が出版されてとても読みやすくなりました。文庫本3冊になっているのも有難いことです。

(6)この小説の主人公フィリップ少年は、幼い時に母が亡くなるという不幸に見舞われますが、その上、生まれながらにえび足という不具者だったのです。そういう劣等感に加えて、学校に行けば級友たちにいじめられ、二十歳頃になれば、好きだと思う女性ともうまくいかなくて悩むのですが、このあたりは、“いじめられっ子”の心境を知るのにとても参考になるはずです。

(7)学校関係者は、法律の文章を読むことも必要ですが、いじめられる生徒の心境を知ることをまず心がけるべきでしょう。法律は義務を強調しますが、“いじめ”の解決のためには、“無償の愛”が最も必要だということを『人間の絆』を読んで知ってもらいたいと私は念願します。(この回終り)