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発話にしても音読にしても、まとまりのある英文を口にするときいちばん注意すべきことは、強勢のある音節を強くしっかりと発音し、強勢のない音節を弱く素早く発音することです。すると英語らしいリズムが出てきます。そうでないと、どんなに一つひとつの語を丁寧に発音しても英語らしい英語にはならず、むしろ通じにくい英語になります。学校で英語を学習した日本人の多くが、そういう英語を話します。あなたの英語が通じないとすれば、英語の強勢パタンがしっかりと表現されていない可能性があります。学習の途上にある方々に英語のいろいろな強勢パタンに気づいていただくために、次にいくつか文例を挙げて説明します。

最近のアメリカ週刊誌Time(July 8 / 15)が ‘The Pursuit of Happiness’ と題する興味ある記事を提供しています。そこからいくつかの文章を引用します。読者の皆さんはそれらを音読し、きちんと読めるようになったら、次に顔を上げて誰かに向かってそれを伝える感じで言ってみてください。はじめに、アメリカ第32代大統領(1933−44)フランクリン・ローズベルトの妻で、文筆家としてもその名を残すエレノアさんの言葉を見てみましょう。

Happiness is not a goal, it is a by-product. (Eleanor Roosevelt)

短い言葉ですが「なるほど」と思わせる金言です。人はいつも青い鳥を追い求めてあくせくしていますが、鳥はいくら追っても捕まることはありません。必死になって追いかけるほど、さらに手の届かぬ所へ飛んでいってしまいます。しかし追求の過程で、それは思いがけずやってくることがあるというわけです。

さて、この文を読むときには文中の太字になっている音節に注意してください。その個所に強勢を置いて言うとうまくいくはずです。ただby-productという語に注意してください。この語はハイフンで結ばれていますが一つの語です。2個所に強勢がくることになっていますが、このような場合には、相対的にどちらかの音節がより強く(第1強勢)、他の音節はやや弱く(第2強勢)発音されます。この場合は意味的にby- に第1強勢が、prodに第2強勢が置かれます。そのようにして読むと、英語らしい強勢パタンが得られます。

上のローズベルト夫人の言葉と同じ内容を、合衆国初期の大作家ナサニエル・ホーソン(1804−64)は次のように書いています。

Happiness in the world, when it comes, comes incidentally. Make it the object of pursuit, and it leads us a wild-goose chase, and is never attained. (Nathaniel Hawthorne)

およそのところ、内容語に強勢が置かれ、機能語は弱く発音されます。しかし強勢が置かれる音節がどれも同じような強さで発音されるわけではなく、強勢をもつ音節や語が続くところでは強勢のレベルが微妙に変化します。先のローズベルト夫人の言葉ではby-productがそうでした。このホーソンの言葉の中ではa wild-goose chase(むだな追求)で強勢のある音節が3つ続きます。これは一種のセットフレーズ(成句)で、多くの辞書がwildとgooseに第1強勢を、chaseに第2強勢を置くとしていますので、それに従うのがよいでしょう。ついでにもう一つ、 incidentallyという語があります。この場合はdenに第1強勢が、語頭のinに第2強勢が置かれます。その理由は、この語がもともとincidentという名詞から派生した語なので、語頭のinにその強勢の痕跡が残るわけです。

最後にイギリスの数学者・哲学者であり、平和運動家としても知られたバートランド・ラッセル(1872−1970)の言葉を見てみましょう。

Beggars do not envy millionaires, though of course they will envy other beggars who are more successful. (Bertrand Russell)

これにはhappinessについての直接的な言及はありませんが、人の幸福感や不幸感というのは、自分の身近にいる人々との比較から生じるものだという事実を見事に表わしていると思います。この文には接続詞thoughや関係代名詞whoがあって、かなり複雑な構造をしていていますので、相当に英語に自信のある人でも読みにくいと感じるかと思います。接続詞や関係代名詞の前で区切ると読みやすくなるでしょう。また強勢については、多音節語のmillionairesで第1強勢がairesに、第2強勢がmilに置かれることに注意してください。なおこの文の接続詞thoughと関係代名詞whoについて、これらにまったく強勢を置かなくてよいのかどうか、疑問をもつ方がおられるかもしれません。実は、弱く発音する音節にも弱さのレベルに微妙な違いが生じます。そのことについては次回に触れるつもりです。(To be continued.)