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② 原発の是非

 原子力発電をどうするかは、この国のあり方にかかわる重大な問題である。国の内外を揺るがした福島第一原発の過酷事故から2年4ヶ月余り、安倍政権は、原発再稼動を既定の事実として推し進めようとしている。今月8日には原子力規制委員会の新しい「安全基準」が施行され、これまでに6原発の12基の再稼動申請が提出された。時事通信社の調査によると、全国9電力会社と日本原電で、福島第一原発を除き、所有する原発の廃炉を検討しているところはなく、このままだと50基の原発の多くが、遅かれ早かれ、再稼動することになりかねない。事故直後から再稼動をもくろんで、反原発の空気が薄らぐのを待っていた財界や経済産業省にとっては思う壺だろうが、本当にこれでよいのか。
原発を抱える国、これから設置する国、それに賛成する人も、反対する人達も、重大事故を起こした日本がどんな道を歩むのかをを見つめている。日本人の生き方が問われているのである。有権者、特にこれから21世紀を生きて行く人達は、この選挙を機に、立ち止まって、もう一度、原発の是非について深く考えてみる必要があるだろう。

原発是非論
  
メディアで展開された原発是非論を整理。 ○ 是 ● 非

① 安全性

● 地下に無数の活断層が走る日本列島に原発を作るのは無謀。
● 地震の巣のような日本列島は、原発には最も不向きなところだ。
● 自然災害を予測することは困難であり、万全の対策はない。
● 原発から30キロ圏に9百万人が住むこの国で、避難計画が機能する可能性はない。
● 事故原因の中心課題である1号機のメルトダウンを招いた復水機が地震で壊れたのかどうか結論が出ていない。
● 原発の集中立地(同一敷地内に複数の原発)は、制御しきれない大災害を呼ぶ可能性が高い。
● 国会事故調の7つの提言に、政府、国会は何も答えていない。
● 政府、民間事故調の報告もたな晒しのままになっている。
● アメリカは昨年34年ぶりに原発の新設を許可したが、NRC(アメリカ原子力規制委員会)のグレゴリー・ヤッコ委員長は、これに反対し「福島のような事故が二度と起きないと保証できない限り、新たな原発の建設には賛同できない」と述べて、辞任した。
○ 政府から独立した規制委員会が安全を確認すれば、原発は稼動すべきだ。
○ 規制委は「世界最高水準の安全基準」を作ったと言っている。それを信用すべきだ。
● 規制委員会の構成に疑義がる。反対派はいるのか。
● 規制委員会の組織体制は不備で検査も手ぬるい。( 職員 500人。NRC(アメリカ原子力規制委員会)4000人、検査官が104基の原発全てに常駐し、抜き打ち検査をしている。日本の規制委は、80人体制で3チームに分けて、通告後検査。)
● 規制庁(規制委の事務局)の職員の大部分は、電力会社との馴れ合いを批判された旧保安庁からの横滑りだ。
● 原発技術については、原子炉メーカーや電力会社のほうが規制委より詳しい中で、本当に規制や検査が機能するのか。
● 「原発事故で死者は出ていない」という趣旨の自民党政調会長の発言や、これを擁護した官房長官の発言に、政府・与党の事故認識の甘さが感じられる。
● 災害関連死(原発事故を含む」は、福島県だけで1400人認定されている。
● 福島の立地自治体では、政府や東電は「これ以上ないほどの安全対策をしている」と繰り返し説明していた。
● 日本の原発発祥の地である東海村が脱原発に踏み切った教訓に学べ。
● 原発作業員の被曝許容量についての議論が全く進んでいない。
● 重大事故後も、福島第一原発や東海村で杜撰な管理が頻発している。
● 原発のテロ対策の不備について、アメリカから警告を受けている
● 福島第二原発に街宣車が侵入したことがある。
● 作業員の身元確認がいい加減だ。テロリストを排除できない。
● 放射能は半減期が長いから、除染は不可能で、移染するにすぎない
● 森の除染は不可能。福島県の71%、97万haは森林。

② 必要性

○ 経済再生には原発のエネルギーが欠かせない。
○ 原発の地元では、生活のためにやむをえない。
○ 世界各国が原発を使っているなかで、日本がやめれば、国際競争に敗れる。
  (原発1基4000億円。2030年までに400基かそれ以上建設)
○ 日本経済にとって電力の安定確保は至上命令であり、原発なしには安定確保は困難。
○ エネルギー資源のほとんどない日本にとって、原発は不可欠。
○ 原発を動かせば1基で年間1千億円収支改善。電気料金値上げが避けられる。
○ 原発を動かさないと、天然ガスや石炭の輸入で赤字になる。
○ 再生可能エネルギーは、海のものとも山のものともわからない。原発反対の人達は、代替手段の実現への道筋を示していない。
○ 再生可能エネルギーの多くは、自然変動に左右されて、電力の安定的確保が難しい
○ 盛夏や厳冬に電力需要が供給を少しでも上回れば、大規模な停電を引き起こし、経済的、社会的大混乱になる。
○ 火力発電所は現在フル稼働で、点検もままならない状況であり、事故が起きたら忽ち電力不足になる。
○ 温暖化防止には、原発のクリーンエネルギーが欠かせない。
○ 原発1基を石炭火力に置き換えると温暖化ガス排出用年間0.7%増える。
○ 原発は、潜在的核抑止力として保持すべきだ。
● 電力は足りている。猛暑となった7月8日でも、各電力会社の発電能力には10%前後の余裕があった。(危険レベルは3%。電力会社は冬季が危ないと言う)
● 古い設備を最新式の節電型設備に変えれば、電力は30%少なくて済むという試算がある。
● 再生可能エネルギーは、ネットワーク化(スマートグリッドなど)や蓄電によって安定供給できる。
● 現在2基稼動させて電力が足りているのに何故54基もつくったのか不思議だ。
● 温室ガス削減については、京都議定書に代わり、各国の自主性を尊重する方向にかわりつつある。
● 原発を安全保障に使うことは、北朝鮮に核兵器保有を正当化させる
● 長崎原爆のプルトにウムはアメリカのハンフォード工場で作られたが、再処理工場というのはこの工場と同じ仕組みであり、核兵器製造が疑われる。

③ 再稼動

○ 原発を廃炉にするにしても、原発技術を継承するために原発の再稼動は必要。
○ 昨年度9電力会社は、合計1.6兆円の赤字を出し、内部留保金が枯渇している。特に今回最初に再稼動を申請した4社は切羽詰っている。再稼動しなければ電力料金の大幅値上げにつなかる。
● 政府が、原発についての基本方針を明らかにしないまま、再稼動に前のめりなのは不可解。
● 政府は、再稼動を認める前に、エネルギー政策についての将来像を示すべきだ。
● 安倍政権は成長戦略に「原発の活用」を盛り込んでおり、今度の選挙に勝てば、再稼動から全面再開へ、なし崩しに原発を解禁するのではないか。
● 規制委員会の『安全基準』は再稼動を前提にしたもので、原発回帰のテコ。
● 「経済産業省は、事故直後から再稼動を考えていた。」と事故当時の斑目内閣府原子力安全委員長は言っている。そのシナリオ通りに進んでいるだけ。
● 再稼動は、与党、財界、経産省、原子力ムラが、電力小売の完全自由化をつぶす策略の第1歩だ。
● 原発再稼動によって、自然エネルギーの買取りが制限され、自然エネルギーの開発が抑制される。
● 政府、国会、民間、の事故調の検討が済んでいないのに、再稼動とは。
● 事故の完全な収束と原因究明、責任の明確化、被災者の完全救済が政府の喫緊の課題であるのに、何一つ満足に出来ていないうちに再稼動とは。
● 事故の際の避難計画が未整備で、訓練もしていないのに再稼動してよいのか。
● 東電の再建計画への政府収支金5兆円の内、3.8兆円はすでに使ってしまった。
● 一体いくら東電につぎ込むつもりなのか。復興予算のでたらめな使い方を見るにつけ、  税金の無駄遣いになる心配がつよい。
● 東電は、税金を食う底なし沼だ。早く清算して、国が責任を持て。
● 25年間にわたって国民は復興特別税を負担するのだ。
● 原発事故の被害者には、まともな賠償金が支払われないことがはっきりした
● 原発事故による15万人の避難者や、風評被害で苦しむ近県の農林漁業者をよそに、東電が自己の利益を追求することは許されない。
● 民主党は電力関連労組に引きずられるな。
● 電源立地交付金を廃止して、立地自治体の産業構造転換への支援制度に変えよ

④ 核のゴミ

○ 核のゴミ処理については、「核変換技術」によって、半減期を大幅に減らす研究が進んでいる。(見通しが立っているわけではない)
● トイレなきマンションは解決されたわけではなく、解決の見通しもない。
● 再処理が出来ない以上、たとえ、絶対に事故が起きない原発が開発されたとしても、原子力エネルギーは必ず行き詰まる。
● 日本政府の基本方針であった核燃焼サイクルは、実験炉「もんじゅ」の事故ですでに破綻している。プルトニュウムは増えるばかり。
● そのため考え出したMOX燃料の使用も見通しが立っていない。
● 核のゴミの処理は,六ヶ所村の再処理工場の操業開始の予定が立っておらず、運び込まれる放射性廃棄物で貯蔵施設は満杯に近づいており、使用済み核燃料を一時保管している各原発の原子炉建屋のプールも間もなく一杯になる。
● すでに45トン(原発5千6百発分)も貯まっているプロトニウムをどうするのか。
● 放射性廃棄物の最終処理場になる自治体があるのか。
● 原発賛成者は、自分の住む自治体が原発や中間処理施設を建設することに賛成できるのか

⑤ 根本的な問題

○ 日本の高い原子力技術とともに、安全な原発を輸出することは、原発後進国の経済発展に役立つ。
○ 原発事故は千年に一度の巨大地震とそれに伴う大津波による天災だから、責任論は無用。
○ 世界中で原発が稼動しているのに、苛酷事故は3件しか起きていないのだから、日本は運が悪かった。
● 人間は果てしなく科学・技術を進歩させていける。そのような幻想を支えるのが欲望であり、人間の欲望や傲慢さを最も分かりやすい形にしたのが原子力である。
● 経済優先で、原発反対を口に出せない雰囲気なるのが怖い。
● 経済、つまりカネのために命の危険を冒すのは愚かだ。
● 原発に命を預けますか。
● スエーデンでは国民投票で脱原発を決めている。民主主義国で国民投票制がない国はほとんどない。
● 原発事故の最大の責任は、長年原発政策を推進してきた自民党とその政府にある。
● 危機が管理できるという傲慢さで、想定外の事態に対処する方法を講じていなかった東電その背後にある電気事業連合会に責任がある。これに追随したメディアも同罪だ。
● 少数意見を排除し、安全神話を作り出した元凶は、「原子力」ムラだ。
電気を使えるだけ使って便利な生活を楽しんだ消費者にも責任があるのではないか
● 電気は無制限に使えると言う考えを改めなければならない。
● 命を危険にさらして原発で働くことが、雇用といえるのか。
● 福島事故を科学万能主義への反省の原点とすべし。
● 原発問題を深く追求することで、その国の政治、経済、社会の仕組みが全てわかる。
● アベノミックスによって、原子力ムラが急速に息を吹き返している。
● 国民の多くが脱原発を願っている国の首相が、外国に原発を売り歩いているのは異様である。
● NPTやCNBTに加盟していないインドに原発を売るのは問題だ。

<各党の原発関連選挙公約> 

自民党 :  エネルギー政策をゼロベースで見直し、「電力改革システム(広域系統運用の拡大、小売参入の全面自由化、発送電分離)」を断行する。原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断にゆだねる。その上で、国が責任を持って。安全と判断された原発の再稼動については、地元自治体の理解を得られるよう最大限の努力をする。原子力技術等のインフラ輸出の支援体制を強化する。

公明党 :  原発の新規着工を認めず、40年運転制限制を厳格に適用する。可能な限り速やかに「原発に依存しない社会・原発ゼロ」を目指す。

民主党 : 「40年運転制限制を厳格適用」「原子力規制委員会の確認を得たもののみ再稼動」「原発新増設は行はない」の3原則を厳格適用。2030年の原発稼動ゼロを可能にするようあらゆる政策資源を投入。
みんな :  発送電分離。再生可能エネルギーによる発電を2030年には全発電量の30%、2050年には50%とすることを目指す。新規の原発設置を禁止。40年廃炉を徹底。20年代の原発ゼロを国家目標として設定する。

維新 :  発送電分離を早期実施。電力の自由化をスピードアップ。再生可能エネルギーの開発推進により地方の雇用を創出。先進国を主導する脱原発依存体制を構築。原発政策のルールを根本から見直し、より厳格なものとする。

生活 :  原発の再稼動、新設を一切容認しない。脱原発三法の制定。最新型火力発電などの推進で原発ゼロの早期実現。新エネルギー推進、海洋資源開発などで資源先進国日本の確立。発送電分離で地域分散型エネルギー社会の構築。政府主導の抜本的放射能汚染対策の実施。

共産党:  原発の再稼動と輸出を中止し「即時ゼロ」の決断を。事故の収束とは程遠い状況での再稼動や輸出は論外。原発に頼らず、省エネ、節電の徹底と、再生可能エネルギーの大幅導入への抜本的転換の計画を立てて実行する。

社民党:  原発稼動は一切認めず、新増設は白紙撤回。脱原発基本法の制定。電力システムの改革と再生可能エネルギーの促進。

みどり:  脱原発を。止める(再稼動なし)、やめる(2023年までに全ての原発の完全に廃炉に着手、かたづける(核のゴミ処理を確立)の3つのステップで着実に実行。

<管見>

 福島第一原発の事故から、今日で855日になる。この間私は一日も休まず、新聞のスクラップを中心に「原発災害日録」をつけてきた。先日84歳になり、余命いくばくもない時間を割いて何故こんな作業を続けているのか。この事故を絶対に忘れてはならないし、風化させてはならないと思うからである。敗戦からしばらくして、東京高師の学生だった頃、戦中、戦後のいやな記憶は早く忘れたいと思って柔道に熱中したことがあった。しかし、家永三郎先生に歴史の講義を受けて、過去をきちんと学んで総括することなしに現在は理解できないし、未来を語ることも不可能であることを心に刻んだ。このブログにも戦争の思い出を書き残したいと思ったのである。今度の原発事故は私にとって2度目の敗戦に匹敵する衝撃であった。安全保障問題にかかわり、核爆発については、一応の知識があるため、原子炉内で水蒸気爆発(今回の水素爆発とは異なる)が起きて、格納容器が破損する事態を想定し、その場合は”死の灰“が首都圏を覆う可能性が高いが、すでに高齢で、十分生きたと思うから、家内と相談して、避難せず、ここで死ぬことを覚悟した。私は帝国軍人を志していたし、家内は樺太からの引揚者であるから、両人とも死を覚悟したのは、戦争中に次いで二度目のことであった。
* 「水蒸気爆発」はメルトダウンした核燃料が水と反応して起きる大爆発で、原子炉メーカーは、原子炉の形状から「水蒸気爆発」は起きないとしているが、溶融した核燃料が格納容器の外に漏れ出し、地下水などに触れる事態はありうる。京都大学の小出裕章助教は、「水蒸気爆発が一番怖い。起きてしまえば手のほどこしようがなくなる。」と語っており、電力4社が再稼動を申請した翌日に亡くなった福島第一原発の吉田昌郎元所長は、事故直後の東電本社とのTV電話でのやり取りで「水蒸気爆発が起きるかもしれない。その時は終わりだ」 と報告している。

 太平洋戦争の敗戦時に私は16歳であったから、自分には戦争や敗戦に直接責任はないと考えている。しかし、今度の原発事故についてはちだう。原発の作り出す電気の恩恵を受け、”全てを疑え“という記者としての初心を忘れて、”安全神話“によりかかり、原発を無批判に認め、或いは礼賛する原稿を書き、それを放送した責任をまぬかれることはできない。私と同じ年の作家半藤一利は「昭和史」の総括の終わりに、明治以来の富国強兵策を先導してきた政治・経済・軍事の指導者達が「根拠のない自己過信」に陥り、失敗に対しては「底知れぬ無責任」に終始したこと、それは今日の日本人にもみられることで、現代の教訓でもあると総括している。私は、原発に頼る経済発展や安全保障政策は、第2の富国強兵策であり、第2の敗戦の責任を明確にしなければ、第3の敗戦が避けられないのではないかと危惧している。(M)