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前回は文中で強勢のある音節に焦点をあて、そこにいろいろなパタンがあることを学びました。では強勢のない音節はどうなのでしょうか。それらはただ弱く発音すればよいのでしょうか。これについての多くの人々の理解は、強勢のない音節は弱く素早く発音すればよいということでしょう。筆者も以前そのように書きました。しかし英語のニュースや朗読されたストーリーなどを注意深く聴いてみると、強勢のない音節の発音も一様に弱く発音されるわけではなく、微妙に変化していることに気づきます。それは単に強勢がないというのではなく、弱いなりに強弱の変化があるということです。第1強勢や第2強勢ほどには強くないけれども、弱いなりに強勢も感じられると言ったらよいでしょうか。専門家はそのような強勢を第3強勢と呼んでいます。文例によって確かめてみましょう。

前回に紹介したタイム誌の ‘The Pursuit of Happiness’ の中に次の文がありました。この文の強勢を細かく見てみましょう。文の内容は、収入を気にしている人とそうでない人とでは、どちらが生活の満足度が高いかを述べたものです。第1強勢または第2強勢が置かれる音節を太字で表わします。

People who care about other people’s incomes are typically less happy with their lives.

この文を二、三度音読してみてください。英語をある程度知っている人にはさほど難しい文ではないでしょう。すると次のような事柄に気づくはずです。

(1)区切る個所がしぜんに決まってきます。incomesの後です。そこが主部と述部の切れ目だからです。14語から成るこの文をひと息に読むのは不可能ではありませんが、7語ずつのチャンクに分けると楽に読めます。

(2)第1強勢と第2強勢の区別は微妙ですが、それはあまり意識しなくてよいでしょう。むしろ、それぞれのチャンクを読むときの音調(声の上がり下がり)に注意してください。英語はチャンクの最後のところで音調が急激に変化するのが特徴です。People who care about other people’s incomesでは、最後のincomesで音調が変化します。inを高音にして強勢を置き、comesで音を下げ、後につながるように宙ぶらりんにして区切ります。するとこのチャンクでは、inのところに音調と強勢が重なって、そこが第1強勢となります。

(3)後半のチャンクはare typically less happy with their livesですが、ここでいちばん強調したい部分はどこでしょうか。typicallyが気になるかもしれませんが、これは「概して」くらいの軽い意味で、さほど強調する必要はありません。するとless happyか末尾の livesのいずれかになります。おそらく多くの人は less happyと答えるでしょう。そこがこの文の筆者のいちばん言いたいことだからです。less とhappyではlessに第2強勢がきて、hapの音節に音調と強勢が重なって第1強勢がきます。そしてwith their livesで音が下がり、livesに第2強勢が置かれて終わります。

(4)最後に第1強勢や第2強勢が置かれない音節に注目します。それらの中にはwho, about, are, with, theirという機能語が含まれます。それらも一様に弱く発音されるのでしょうか。強勢を意識しながらもう一度読んでみてください。するとaboutなどは、aとboutでは微妙に違うことに気づくでしょう。aよりもboutのほうが強いはずです。この語は常に第2音節に強勢があります。

このように検討していくと、先の文の中でほぼ無強勢と認められる音節は次の下線部だけで、イタリック体の部分にはいくらか強勢のあることが分かります。

People who care about other people’s incomes / are typically less happy with their lives.

このことから次の二つの事実が判明します。

(1)文中の無強勢の母音は、原則として、「あいまい母音」の /∂/ になるか、または無声化する。(:people の場合には語尾の /l/ の音が半母音となり曖昧化する。またhappyの語尾は弱い /i/ である。)

(2)機能語は一般に弱く発音されるが、完全に無強勢になるよりも、弱い強勢(第3強勢)が置かれることが多い。

以下に練習問題として2つの例文(同じタイム誌の記事)を挙げます。強勢のレベルを意識して数回音読してみてください。読んでいるうちに、意識にかけるエネルギー量が減少することに気づくでしょう。(無強勢の下線は省略)

People who dwell on the past and future / are less likely to be happy / than people who concentrate on the present.

Money can boost happiness / if it allows people to obtain more of the things / they need and desire.

(To be continued.)