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英語の学び方Q & A(1)

Author: 土屋澄男

Q : 英語を勉強すると、将来どんな風に役立つのですか。

A : 大修館書店発行の『英語教育』2011年6月号は、「生徒からの質問にどう答えていますか」というテーマの特集の中で、上記の質問を中学と高校の2人の先生に答えてもらっています。中学の先生は、自分がかつて参加したベトナム難民への援助活動で英語が役立った経験を述べていました。「英語がわかってよかった、英語のおかげでかけがえのない友人ができた」という先生の思いは、生徒たちの心になんらかの波紋を投げかけたことだろうと想像します。

もう一人の高校の先生は、就職活動を目前に控えている高校3年生に対して、どんな職業に就いてもそこでプロを目指してほしいと言い、「何かを深めようとしたとき、日本語で書かれている文献は、実はほんの一部だし、日本語で発信して読んでくれるのも世界のほんの一部にすぎない。英語ができれば、さらに深めたり、広げたりすることができる」と説いて、英語の必要性を強調しています。この答えも、自分の将来を考え始めた高校生にとって、英語が自分とどんな関わりを持つかを考えるきっかけになったと思います。

これら2人の先生の話は、一部の学習者にとっては参考になります。しかしこれがすべてではありません。さまざまな学習段階にあるさまざまな種類の学習者への回答は無数にあり、雑誌の特集をすべてこの疑問の回答に当てても間に合わないくらいでしょう。私が編集者であったなら、最初の企画の段階でそのような多様な学習者を想定し、彼らをいくつかの典型的なタイプに分類し、それぞれのタイプの学習者に対応できる回答者を見つけ出すという方法を考案したかもしれません。しかし、そもそもこの質問を発する学習者はなぜこのような質問をしたのでしょうか。彼または彼女は何を知りたいのでしょうか。

まず考えられるのは、これから英語を学ぼうとする人たち、とくに小学校や中学校で英語を学び始めようとする子どもたちです。これらの子どもたちには、英語を知っていることでどんな利益が考えられるかを話すことは難しくないでしょう。上記の2人の先生の話は、小学生にも分かるように砕いて話すことができます。しかし多くの子どもたちは、学習を始める前に「なぜ英語を学ぶのか」という疑問を持つことはないように思われます。彼らはむしろ、学校で英語を学べることを楽しみにしているのではないでしょうか。

しかし英語を学んでいるうちに、今自分の学んでいる英語が将来どんな風に役立つのかについて真剣に悩む人は多いと思われます。その悩みはどこかでしっかりと受け止めてあげる必要があります。英語を学ぶ目的はいろいろありますから、人によって学校のカリキュラムが自分に合わないと感じる生徒が出てきくるのは不思議ではありません。学校では受験勉強ばかりで、生きた英語を学ぶことができないと感じる生徒がいます。一方では、しっかり英語が読めるようになりたいのに、授業では自分に興味のない口頭練習ばかりすると不満を持つ生徒もいます。学習者の学習目的の違いにもかかわらず、全員が同じやり方で学ぶことから生じる問題点に、私たちはもっと目を向ける必要があるように思われます。

また、いったん英語学習を始めると、学習者の中にいろいろな心の葛藤が起こります。まず多くの生徒はなんとか授業についていきたいと思うはずです。そのとき授業に楽々と付いていくことのできる生徒はよいのですが、そうでない生徒には次々に課題が押し寄せます。多くの生徒が感じるのは、英語の学習は予想した以上に難しいということです。発音がよく分からない、単語の意味が記憶できない、試験に良い点が取れないなどの、具体的な問題が中心です。最初はなんとかついていこうとしますが、そのうち自分が取り残されていくのを感じるようになります。そうなると英語の授業はだんだん苦痛になってきます。生徒は途方にくれ、あげくの果てに「なんで英語なの?」「英語をやって将来なんの役に立つの?」という疑問に到達するというわけです。

学習の段階が進むにつれ、そういう生徒の数が増してきます。学校の先生方は、その生徒たちの疑問に真剣に答えてあげる必要があります。そうでないと、生徒の不満が増大するだけでなく、その果てには学校の授業が成立しなくなる恐れもあります。このような問題について、これからQ & Aの形式で順次考えていきたいと考えています。(To be continued.)