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英語の学び方Q & A (3)

Author: 土屋澄男

Q: 私は今中3ですが、NHKテレビの語学番組でスペイン語を学んで、スペインの歴史や文化に興味を持ちました。高校に入ったらスペイン語を本格的に勉強したいと思っています。しかし私の住んでいる地域にはスペイン語を教えてくれる高校は見当たりません。どうしたらよいですか。

A: この質問者がどういう経緯でNHKのスペイン語講座を受講することになったのかは分かりませんが、こういうケースは珍しいことではないと思われます。たとえばNHKの語学番組は、ラジオとテレビで現在九つの外国語(英語、中国語、ハングル、アラビア語、ロシア語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ドイツ語)の講座を提供しています。中学生がスペイン語を受講しても何も不思議はありませんし、若い人たちが世界のいろいろな言語に興味を持つことは、これからのグローバルな世界で活躍する人材を産むという観点からすると、たいへん好ましいことです。

しかし日本の学校教育は、そのような観点からすると、非常に遅れています。とくに高校段階でその遅れが顕著です。ここで日本の外国語教育の現状を概観してみます。大部分の大学は複数の外国語の講座を開設していますが、高校段階では英語一辺倒の学校が大多数(約85%)を占めています。文部科学省の2012年5月の調査によると、全国の高校約5,000校のうち、英語以外の外国語を開設しているのは713校だけです。高校で教えている外国語でいちばん多いのは中国語542校で、ついで韓国・朝鮮語318校、フランス語222校、ドイツ語106校と続きます。スペイン語を開設している高校は100校しかありません。文部科学省は外国語の多様化を図っていると言いますが、そのための環境整備を積極的に行っている様子はうかがえません。事実、英語以外の外国語開設校は2010年をピークに最近は減少しています。現状では高校でスペイン語を学びたいという生徒がいても、その希望に添うことはできません。そういう生徒はNHKの講座などで個人的に学習を継続し、大学に進学するときにスペイン語の講座を開設している大学を選択してもらうしかありません。

中学校は英語一辺倒です。その主な理由は、中学校は義務教育であり、まず日本人として知っておくべき外国語は英語であるということです。『中学校学習指導要領(外国語第3章)』には、「外国語科においては、英語を履修させることを原則とする」と明記されています。その解説書を見ると、「英語が世界で広くコミュニケーションの手段として用いられている実態や、これまでほとんどの学校で英語を履修してきたことなどを踏まえて、英語を履修させることが原則であることを示した」と書かれています。もちろん「原則とする」というのですから、それ以外の外国語を履修させることができないわけではありません。しかし実際には英語以外の外国語を履修させる中学校は非常に少数で、私立学校の一部にフランス語やドイツ語や中国語を選択科目として置いているところがあるだけです。

中学校が英語一辺倒であるのに、昨年度から始まった小学校の英語教育が「外国語活動」となっているのは不思議です。しかし小学校学習指導要領には「英語を取り扱うことを原則とする」となっていますから、実質的には「英語」です。おそらく、小学校における従来の「国際理解教育」の実践の経緯から、ただちに英語を教科として認めることはできないという事情があったのでしょう。また小学校で英語を教える教員養成が間に合わないという問題もあって、文科省はこのような中途半端な形での実施に踏み切ったものと考えられます。ですから「外国語活動」の説明は極めて歯切れの悪いものになっています。このような学習指導要領で小学校の英語教育が始まったことは非常に残念なことです。

そういうわけで、わが国の外国語教育の現状は多くの問題を抱えています。いちばん大きな問題は、世界には日本人の学ぶべき言語が英語以外にも数多く存在するにも関わらず、英語一辺倒になっていることです。小学校と中学校で英語が外国語の中心になるということは、国民の多くが納得していると思われます。しかしいつまでも英語だけというのではいけません。少なくとも高校からは、誰もが他の言語を学ぶ機会があってよいのではないでしょうか。否、ぜひそうあるべきです。それを第二外国語として選択する場合だけでなく、英語に代わる第一外国語として学ぶこともできるようにすべきです。いつまでも英語だけにしがみついている必要はないからです。これからの国際社会で日本人が活躍するためには、多様な外国語の使い手を必要とします。今後は今回の質問者である中学生の希望が手軽にかなえられるような外国語教育を目指すべきです。(To be continued.)