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Q1 :(東京の中学2年生女子)先日電車の中に外国人の家族がいました。2人の子どもは幼稚園くらいでとてもかわいかったです。ああいう人たちと知り合いになれたらいいなと思いました。しかし話しかける勇気はありませんでした。こんな時はどのように話しかけたらよいのでしょうか。

Q2 :(英会話に関心のある大学生)外国人と英語で会話するとき、いつも相手が話の主導権を握って僕は聞き役になってしまいます。もっと対等に話をしたいのですがうまくいきません。自分が話を主導するにはどうしたらよいかご教示ください。

A : 上記の質問はいずれも会話のルールに関係する事柄です。まずQ1 ですが、これは「点火のルール」(注)に関するものです。会話を始めるには何かのきっかけが必要です。どんな風に会話を切りだすかは状況によって異なります。この場合のように、電車の中で知らない人に話しかけるのは普通のことではありません。この中学生が子ども連れの外国人家族を見て話しかけたくなった気持ちは理解できます。そして思いとどまったのは適切な判断でした。日本人の中には英会話の練習のためにやたらに外国人に話しかける人がいるそうですが、日本に来ている外国人にとっては(日本人に英語を教えることに興味を持っている人を除いて)たぶん迷惑なことです。そのような行為はエティケット(etiquette)に反します。

「点火のルール」とは、結局のところ、話すべき時に話し、話すべきでない時には黙っているということです。電車の中で知らない人と会話が始まる典型的な状況は、乗っている電車の行き先などその電車に関する情報を知りたいとき、または誰かから尋ねられたときです。あるいは、気分の悪そうな人に「大丈夫ですか」などと問いかけるようなこともあるでしょう。しかし都会では一般に、電車の中でやたらに知らない人に話しかけることはしないものです。以上は都会の電車内での会話ルールで、必ずしも普遍的なものではないかもしれません。

次にQ2 にいきます。どんな会話も何かの話題をめぐって展開するものです。話題は会話が成立するための重要なポイントです。非公式なパーティーでの初対面の日本人と外国人との会話場面を考えてみましょう。そういう場合がいちばん難しいのではないかと思います。近くにいる人と目があったら、それが点火の合図になります。互いに簡単な自己紹介をすることから始まることが多いでしょう。さて次に何を話題に取り上げるかですが、外国人と英語で会話をする場合には、自分から先に話題を提供することが主導権を握るために決定的に重要です。相手の持ち出した話題で始めたら、たいていは相手に主導権を握られ、あなたはもっぱら聞き役になることを避けられません。

たとえば、あなたが日本の天候や気候に関する話題を得意とするなら、そこに話が行くように仕向けるのです。パーティーの会場が東京なら “How do you like the weather in Tokyo?” のように問いかけます。食べ物のことを話題にしたいなら “What’s your favorite food?” のように持ちかけます。外国語として英語を学んでいる日本人は、母語話者のように広い話題をカバーすることはできません。英語で話すためには、その話題に関連する知識と語彙が必要です。日本語では論じることができても、英語ではそうはいきません。英語で話すとき、自分には言いたいことがたくさんあるのに思うように話せない、という経験を誰もがします。いろいろな話題について英語で論じる準備を普段からしておいて、外国人と話す実体験をたくさん積むことによって、しだいにカバーできる話題が広がっていくのです。

もうひとつ、日本人であるあなたが会話の主導権を握る場合に注意すべきことがあります。それはあなたに興味のある事柄ならどんな話題を取り上げてもよいわけではないことです。そこにはやはり暗黙のルールがあります。以前は宗教と政治の話題は避けるべきだと言われていました。たしかに、あまり深入りしないほうが安全です。しかしあなたが相手の立場や言い分を聞く耳を持っていれば大丈夫です。それよりも、privacyや racism, sexismに関わる話題には注意すべきです。また、日本人がよく使う “we Japanese” や “you Americans” という言い方で、個人が国民全体を代表しているような議論はしないほうがよいでしょう。外国人と個人的に話をするときには、自分は日本人の代表で相手はアメリカなど特定の国の代表だなどとは考えないことです。そうではなくて、私はあなたと同じ「人間」なのだという気持ちで話すのがよいと思います。これは筆者が自分の体験から得たコミュニケーションのルールです。(To be continued.)

(注)J. V. ネウストプニー著『外国人とのコミュニケーション』(岩波新書 1982)p. 42以下を参照。日本人の多くは「英語ができないから、コミュニケーションができない」と考えているが、この本の著者は「コミュニケーションができないから、英語ができないのだ」と主張し、当時の日本人学習者に大きなインパクトを与えました。