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(番外) 崩れ行く日本の統治機構

< 誤魔化し横行の司法・行政・立法 >    松山 薫

 昨日、最高裁判所は、昨年12月の衆議院議員選挙の一票の格差について「違憲状態」という判断を下した。違憲状態であって違憲ではないから選挙は無効にはならないという。私には「違憲」と「違憲状態」の違いが分からない。私の日本語感覚で言えば同じことだから、最高裁判所の誤魔化しとしか考えられないのである。

 「本12月8日未明、帝国陸海軍は西太平洋において米英両国と戦闘状態に入れり」というのは、太平洋戦争の勃発を告げる大本営発表であった。我々軍国少年は、ラジオから流れるこの放送を何回も何回も聞いて武者震いしたのだから忘れようがない。その時聨合艦隊はすでに真珠湾を攻撃していたから「戦闘状態に入れり」というのは「戦争が始まった」という意味以外には解釈できない。だから、「衆院選の区割りは違憲状態であった」と言うのは「違憲であった」と変わりがないと普通の日本人が受け取って当然だろう。

 最高裁判所は砂川事件での自衛隊違憲の地裁判決を、統治行為論というわけのわからない論理で覆して以来、憲法の番人としての国民の負託を裏切り続けてきた。今回の判決で、誤魔化しはここに極まったと私は思う。 誤魔化しの「最高裁判事国民審査」を、根本的に改めない限り、事実上の任命権者である内閣への司法の従属は続き、3権分立の根幹を揺るがす。

 また、主権在民という憲法の根本原則を危うくしかねない「特定秘密保護法案」を審議している国会の有様を見ていると”情けない“の一言に尽きる。この重大法案を審議する昨日の参議院特別委員会には、はじめ与党議員は誰も出席しなかったという。次の通常国会で予算措置ができるよう、何とかこの法案を今国会で成立させたい自民・公明と、与党に擦り寄る維新の会の裏折衝が続いていたからだ。

 この裏折衝で出てきた結論というのがまさにfarceとしか言いようのない代物だった。まず、秘密保護期間は最長60年以上となり、指定した人物はこの世の人ではなくなっているから、指定に当たって何の歯止めにもならないし、場合によっては”不都合な真実“が半永久的なブラックボックス入りとなる。その上、特定秘密に当たるかどうかを判断する“第三者機関”というのが、この秘密情報を利用する国家安全保障会議(NSC)の議長をつとめる首相であるというのだから“第三者”という日本語の意味が分からなくなる。

 一方、 行政府の長である安倍晋三首相は、福島第1原発の汚染水は”under control “だと多くの国民があきれるような発言をしてオリンピックを招致した。国家としての品格はどこへ行ったのか。さらに、招致を成功させるため、宮内庁が再三反対したにも拘らず皇族を招致活動に利用した。北京五輪や東京都知事の言動を見るまでもなく、最近の五輪は一大政治ショーになっているから、オリンピック招致運動への皇族の利用は、政治利用にに他ならない。園遊会で、山本太郎が天皇に原発問題の手紙を渡したと騒ぐが、どちらが政治利用として罪深いか言うまでもなかろう。

 「違憲」と「違憲状態」が同じであるとすれば、現在の衆議院議員は違法の存在となる。最高裁と衆議院議員は、「違憲」と「違憲状態」がどう異なるのかを国民が分かるように丁寧に説明する責任がある。もしこれができなければ、行政に従属的な最高裁によってお墨付きを与えられた、法律上何の権限もない議員達が、国民主権をないがしろにする「特定秘密保護法案」のような重大法案を成立させることになり、3権分立による日本の統治機構は、もはや基盤が腐ったとしか言いようがない。(M)