Print This Post Print This Post

Q1 : <中学1年生>近所にアメリカ人(奥さんが日本人)が住んでいて、登校するときたまに会います。私はその人に会うとGood morningと挨拶します。するとその人はニコニコして何か言いますが、よく聞き取れません。「ハウアユドー」 のように聞こえます。それはどういうことでしょうか。

Q2 : <大学生>いつも思うのですが、学校で習う英語と母語話者の使う英語はかなり違うのではないかと。そうだとすると、教科書の英語が分かるようになっても、母語話者の英語は分からならないのではないか。実際のところはどうなのでしょうか。

A : 日本では、小学校でも中学校でも、英語の授業をGood morning. の挨拶で始めるところが多いと思います。かつて筆者が中学校の教師をしていたときも、1年生から3年生まで、毎授業をGood morning (afternoon), everyone. で始めていました。生徒は判を押したようにGood morning (afternoon), Mr. Tsuchiya.と答えます。さらにHow are you? と問いかけます。すると生徒は Fine, thank you. And you? と答えるのでした。しかしあるとき、生徒たちが声をそろえて言おうとするために奇妙な抑揚がつくことに気づき、その問いを全員に向かって言うのを止めることにしました。それ以後はHow are you today, Kato? のように、個人に向けて言うことにしました。

こういう授業風景は今もいたる所で見られると思います。そこで日本では、英語で挨拶するときには Good morning (afternoon, evening). と言うものだと多くの人が思い込んでいるのではないかと心配です。しかし人に出合ったときの挨拶にはいろいろあるはずで、日本語がそうですし、英語もそうです。相手や場面によって、いろいろ違った挨拶の仕方があって当然です。Good morning. だけではないのです。外国人と英語で挨拶をする場合には、そのことを知っておく必要があります。

さて、Q1の中学生が近所に住むアメリカ人にGood morning. と挨拶するのはよいことです。そのアメリカ人も心の中できっと喜んでいるに違いありません。ですから彼は反射的にニコニコ顔でそれに応えています。おそらく彼が言ったのは How are you doing? でしょう。それは Good morning. よりもややくだけた感じの挨拶で、日本語で言うと「どうしています?」という感じです。「元気ですか」に似ているかもしれません。アメリカの学校のキャンパスではよく耳にする言葉です。きっとそのアメリカ人はそういう言い方を長年使ってきたのでしょう。これに対しては Just fine. や Fine, thanks. などと答えます。

このように話し言葉というのは、相手との関係によって、また発話がなされる状況によって、いろいろと異なる表現が使われます。学校の英語の授業ではいつも Good morning. かもしれませんが、実社会では多様な表現が使われています。朝の挨拶としてはGood morning. はいちばんフォーマルな(formal形式ばった)言い方です。学校で毎日会う友人などにはそういう挨拶はしないでしょう。もっとくだけたインフォーマルな(informal)言い方が普通です。先ほどのHow are you doing? もその一つです。学校でいちばんよく耳にするのは Hi, John. のような言い方です。相手の名前を呼ぶのが親しみを感じさせます。最近の日本の中学校の教科書はそういう言い方も出すようにしています。

以上のように、話し言葉のスタイルは大きくフォーマルな言い方とインフォーマルな言い方に分けられますが、学校の教科書の英語はフォーマルなものが主体となります。その理由は、私たちは英語を外国語として学んでいるので、生活に密着したインフォーマルな英語よりも、まずフォーマルな英語を身につけるのがよいという考え方が基本にあるからです。それに書き言葉の多くが、新聞の英語がそうであるように、概してフォーマルな文体で書かれていることも関係があります。

これに対して実際生活ではフォーマルな英語を使うことはむしろ例外的で、親しい人たちの間でなされる会話では、だいたいインフォーマルな言い方が使われます。時にはさらにくだけたスラング(slang)のような言葉も使われることがあります。そういうわけで、Q2の大学生の指摘するように、私たち日本人が学校で教えられる英語と、ネイティブ・スピーカーが実際生活で使う英語とでは、かなり違ったものになっているというのが現実です。そのギャップをどうやって埋めるか—これは日本人学習者の直面する大きな課題です。(To be continued.)