Print This Post Print This Post

英語が好きになる近道の一つは英語の音を楽しむことです。その楽しみ方はいろいろあるでしょうが、小学生や中学生では、英語の歌が好きになって英語を学ぶことが楽しいと言う生徒が多いようです。2011年度から小学校5,6年生で「外国語活動」という授業が導入されました。そこでは毎回楽しい英語の歌を聴かせて歌えるようにしてはどうでしょうか。英語を学ぶことが好きな生徒がきっと増えるでしょう。それに加えて、絵本を見せながら、外国の童話や民話を英語で(ときどき日本語を交えて)聴かせたら、もっと多くの子どもたちが英語を学ぶことに興味を持つことでしょう。小学校では、中学校でやっているような発音や単語や文構造のややこしい規則を説明したりしないように、先生方にはくれぐれもお願いします。英語はまず聴いて楽しむことが重要です。

ところで、新聞やテレビなどでよく見る「音楽を聞くように英語を聞き流すだけで英語がどんどん好きになる」という広告は信じてよいでしょうか。この広告が長続きしているところをみると、きっとその教材は売れているのでしょう。売れているから信用できるわけでもありません。一般的に言って、英語学習者ができるだけ多くの英語を耳からインプットするのは大切なことですから、自分の学習段階に合致したレベルの英語を聴くことは望ましいことであり、その学習を継続すれば必ず効果があるはずです。効果が出れば英語が好きになるのは自然のことです。この理屈に従えば、この広告の教材によって効果が期待できるのは、その教材のレベルが学習者のレベルに合致している場合です。使ってみて合致していないと思ったら止めるべきです。こういう広告は健康食品やサプリメント剤の広告と同じで、その効果を期待しすぎてはいけません。すべての人に一様の効果が期待できるものでは決してありません。

音を楽しむ活動はたいてい話すことと連動しています。同じ歌をいつも聴くだけでは退屈するでしょう。子どもたちに英語の歌を聴かせていれば、彼らは自然にそれを歌うようになります。筆者が子ども(4,5歳)のとき、どういうわけか新しい蓄音器がわが家に持ち込まれました。私は気に入った幾枚かのレコード(その一枚は東海林太郎の「赤城の子守唄」でした)を繰り返し聴いて、それらをソラで歌えるようになっていました。遊びに来た伯母がそんな私を褒めたので、いい気になって何か歌ったのを覚えています。たぶんそのおかげで、小学校の「唱歌」(現在の「音楽」)の評価はいつも「優」でした。子どもはそういう風にして、言葉のメロディーを身につけていくものなのでしょう。英語のメロディー(注1)も、母語話者は子ども時代に多くの歌や詩文に触れることによって、その特徴を脳の中に刻みつけていくのだと思います。日本の小学校からの英語教育に意義があるとすれば、英語の歌や詩文にたくさん触れさせることによって、英語に特有の発声の仕方、リズム、抑揚などの特徴を脳に記憶させることだと筆者は考えています。

40年以上も前の話になりますが、筆者が中学校の教師をしていたとき、いろいろな歌を生徒と一緒に歌って楽しみました。その体験を通して、英語のメロディーは理屈で理解させるよりも、こうして歌で体得させるほうがずっと効果があると思いました。前回ハンバーガーでおなじみのMcDonald’sの発音のことを書きましたので、それと関連して今回はOld MacDonldの歌(注2)をご一緒に歌ってみましょう。歌詞は易しいのですが、リズムを取るのはけっこう難しいと思います。しかしちゃんと歌えると気分のよいものです。ぜひ皆さんの歌のレパトリーに入れておいてください。

Old MacDonald had a farm, E-I-E-I-O! / And on his farm he had some chicks, E-I-E-I-O! / With a chick, chick here, and a chick, chick there, / Here a chick, there a chick, everywhere a chick, chick, / Old MacDonald had a farm, E-I-E-I-O! (マクドナルドのところには農場があってね / 農場にはヒヨコがいてね / こっちでピヨピヨ、あっちでピヨピヨ / ここでも、あっちでも、どこでもピヨピヨ / マクドナルドのところには農場があったんだ)

次に、英語の音を自分の口から出す楽しみがあります。上に挙げたような歌をうたうときにはこまかい発音には目をつぶり、大きなリズムの流れを楽しむのがよいでしょう。こういう歌は中学生よりも小学生のほうが、はやく上手に歌えるようになるのではないでしょうか。中学生は細かい発音を気にする傾向があります。あまり細かい発音のことを気にしては歌う楽しさが失われ、しまいには歌うことが苦痛になります。歌は気楽に楽しむのが一番です。何回も歌っているうちに、細かい発音にも気づきます。「英語の音を楽しむ」についてはまだ触れるべきことがありますので、この話題は次回に続きます。(To be continued.)

(注1)「英語のメロディー」というのはあまり使われない用語ですが、英語に特有の総体的な音声特徴をこのように言うことがあります。言語学者や音声学者が言語音声を研究対象とするときには、言語を構成する母音・子音などの音素の記述と共に、「ストレス(強勢)」と「イントネーション(抑揚)」のパターンを特に重視します。しかし言語音声には、これらの他にもいろいろな特徴が見られます。たとえば呼吸法や発声の仕方、声の出し方(音声器官の用い方)、口の開け方、声の大きさ、話す速度、間の取り方など。それらが混然一体となって一種の音楽的なメロディーをつくり出すわけです。そしてそれは個人による違いもありますが、言語によっても、それぞれ特徴的な違いがあります。そして同じ英語でも、イギリス人とアメリカ人の話す英語のメロディーには、かなりの違いがあるように感じられます。

(注2)Old MacDonaldの歌詞は5番まであり、1番ではchicksがchick, chickとなきますが、2番ではducksがquack, quack、3番ではturkeysがgobble, gobble、4番ではpigsがhoink, hoink、5番ではcowsがmoo, mooとなきます。歌詞の中のE-I-E-I-Oは、童謡などによく使われる「はやしことば」です。(久埜百合監修『うたって遊ぼう小学生の英語の歌」(小学館)を参照)