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前回の「基本語A, B」を受けて、語彙の種類についての説明を続けます。

(3)基本語C前置詞、接続詞、代名詞のような「機能語」(function words)と呼ばれるものがここに入ります。これらは伝達しようとする内容よりも、文中の語や句の(または文と文の間の)文法関係を示すものです。冠詞、前置詞、接続詞がその典型的なものです。どんな語を機能語とするかについては議論のあるところですが、一般には、次の品詞に属する語を機能語としています。

*機能語: 冠詞、前置詞、接続詞、人称・不定代名詞、指示詞、疑問詞、関係詞、助動詞

面白いことに、英語で最も頻度の高い語はthe, of, andの3語で、それらが英文テキストの10%近くを占めると言われています。これが本当かどうか、英語の本で調べて確かめてみるとよいでしょう。ところでこの種類の語はどのようにして覚えたらよいでしょうか。たとえばtheを「その」、ofを「の」、andを「そして」と覚えてもあまり役には立たないでしょう。これらは意味よりも使い方が大切な語であり、その数も限られているので、フレーズやセンテンスで覚えるのか王道です。これらの語が使えるようになることは、文法の学習に直接つながります。

(4)派生語:これらは基本語から派生した語なので、派生の規則を知っていれば、その意味や用法は容易に基本語から推定できます。多くの派生語は、基本語の語幹(stem)に接頭辞(prefix)や接尾辞(suffix)を付けて作られます。派生語の形成についての知識があれば記憶に要するエネルギー量は大幅に節約できますので、この知識を使わない手はありません。1つの基本語から多くの派生語を産みだす例を2つだけ挙げておきます。

例1. luck(幸運)の派生語:lucky, luckily, luckiness, luckless, lucklessly, lucklessness, unlucky, unluckily, unluckiness

例2.separate(分ける、引き離す)の派生語:separable, separably, separableness, separability, separated, separately, separation, separatism, separatist, separative, separator, inseparable, inseparably, inseparableness, inseparability

ところで、収録語数の多いことで知られるアメリカの英語辞典『ウェブスター第3版』は約267,000語を収録していますが、そのうち基本語、派生語、合成語の語数および総語数に対する割合は次のようです(注)

*基本語:54,241 (20.3%)  派生語:63,773 (23.9%)  合成語:67,177 (25.2%)

これを見ると、基本語(あるいは基本形)の数よりも派生語や合成語の数のほうが多いことがわかります。つまり、一定の数の基本語を記憶すれば、それとほぼ同数の派生語および合成語を少ないエネルギーで覚えることができるわけです。こうして語彙の拡張は、学習の段階が上がるにつれてますます速度を増し、学びの楽しさをいっそう味わうことができます。

(5)合成語(または複合語):多くは2つ、3つの基本語の組み合わせからできているので、それらの基本語を知っていれば、その品詞や意味を推定するのは容易です。中級程度に達した学習者は、ここで語彙(主として受容語彙)を飛躍的に拡張することができます。次はselfをヘッドにした合成語ですが、この形の合成語はものすごく数が多く、『ウェブスター第3版』では約500項目が見出し語になっています。次はその一部ですが、多くの語について、それぞれに対応する日本語を見つけ出すことができます。それぞれにどんな日本語が当てはまるか挑戦してみてください。

*Selfで始まる合成語の例:self-abhorrence, self-absorption, self-analysis, self-assertion, self-assurance, self-centered, self-conceit, self-confidence, self-conscious, self-content, self-control, self-criticism, self-deception, self-defense, self-denial, self-determination, self-devotion, self-discipline, self-educated, self-esteem, self-evident, self-examination, self-expression, self-government, self-interest, self-justification, self-portrait, self-protection, self-realization, self-regard, self-respect, self-restraint, self-satisfaction, self-service, self-support, self-timer, etc.

(6)固有名詞:固有名詞の数はほとんど無限であり、出逢った固有名詞をすべて記憶しようとする必要はありません。それはまた、賢いことでもありません。辞書に載っている固有名詞もほんの一部です。一般によく使われる固有名詞や自分に興味のある分野の固有名詞は承知している必要があるでしょう。しかし自分に関心のあるもの、また自分自身が使う必要のあるものは、何回か出てくるうちに自然に記憶されるものです。無理をすることはありません。

(注)『ウェブスター第3版』の収録語の分類とそれぞれの語数(正確には推定語数)については、望月正道ほか『英語語彙の指導マニュアル』(大修館書店2003 p.25)を参照してください。なおそこに掲載されている表の原資料は次の論文によります。Goulden, R., Nation, P. and Read, J. (1990): How large can a receptive vocabulary be? Applied Linguistics, 11, 341-363.