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(番外)< NHKの現状を憂う >

  私は週刊誌を買って読むことはほとんどない。といって週刊誌を軽視しているわけではない。時には大手メディアが報じない特ダネ的記事をのせるからである。そこで、新聞を読む際に、週刊誌の広告から面白そうな記事をメモしておき、毎月一回降圧剤をもらいに行く医院の週刊誌からメモしておいた記事を読むのである。何しろ1時間以上待たされるのだから、全部タダで読める。それが今週は、何年かぶりに週刊誌を駅の売店で買った。「週刊フライデー」である。
 
 “ 国谷キャスターは涙した・・・安倍官邸がNHKを土下座させた一部始終 ”という見出しに惹かれたわけだ。「週刊フライデー」は私の行く医院の本棚にはおいてないのだから買うしかない。大見出しのわりには、写真を除けばたった1ページ、内容も例によって薄っぺらなもので、裏付け取材もないし、NHK広報には「ご指摘のような事実はありません」と軽くいなされている。

 それでも私は、26年間NHKにいた体験から、「ご指摘の事実はなかったかもしれないが、ご指摘のような事実はあった」だろうと推測する。「ご指摘のような事実」とはおおよそ次のようなものである。

 7月3日の「クローズアップ現代」で、国谷裕子キャスターがゲストの菅義偉官房長官に「集団自衛験の行使容認」について質した。私はこの番組は見ていなかったが、この中で国谷さんは「他国の戦争に巻き込まれるのでは」とか「憲法の解釈を簡単に変えてよいのか」と問いかけたという。多くの国民が危惧していることだから、当然の質問だと思うが、番組終了直後に、同伴した秘書官が「いったいどうなっているのだ」と噛みついたという。番組終了後、国谷キャスターは「すみません」と言って涙を流していたと伝えている。

 「週刊フライデー」によると、その数時間後再び官邸サイドからNHK上層部に「君たちは現場のコントロールも出来ないのか」というクレームが入り、上層部は「誰が中心になってこんな番組を作ったのか」「誰が国谷にこんな質問をしろと指示したのか」という犯人探しが始まったというのである。

 私が多分このようなことがあったのだろうと推測した理由の一つは、次の日の「クローズアップ現代」、に国谷さんが出演しなかったからだ。この時は、こんな事件があったとは露しらず、冒頭に、いつもはニュースを読んでいる男性アナウンサーが現れて「今日は私が担当します」と述べたので、「おや、国谷さんはどうしたのだろう。海外取材にでも行ったのかな」と思った。

 それから2~3日経ち、新聞で「週刊フライデー」の広告を見て、そういうことだったのかと合点した。つまり、国谷さんを一日”謹慎”させて部内への見せしめとし、同時にTVを使っての権力への公開謝罪としたのである。NHK在職中経営陣の権力に対する情けない姿をいやというほど見てきた私には、週刊フライデーの記事は、まさにデジャビそのものであった<アーカイブ 2012−6−30 公共放送と政治 2012−7−7 NHKと政治 2014−2−1 NHK会長の資質>。 
            
 「週刊フライデー」は、「籾井勝人氏が会長に就任して以降のNHKの報道姿勢には、疑問を持たざるを得ない」という碓井広義・上智大学教授(メディア論)の指摘を載せているが、私は、NHKの宿
痾ともいうべき権力迎合の姿の一端であり、原発、安全保障、経済運営など国の今後を左右するような重大な問題が山積する今日、NHKが「権力の監視」というジャーナリズムの本旨を忘れ、後世再び、権力に迎合して視聴者に必要な事実を知らせず、国民の利益を損なったという批判を受けるのではないかと恐れている。

 もう一つの理由は、「そのような事実がない」なら、なぜ「週刊フライデー」を告訴し、名誉毀損で損害賠償と謝罪広告を要求しないのか。あれだけ大きく日刊大手紙で「NHKは安倍政権に土下座」と広告され、報道機関としての根幹にかかわる疑惑をまき散らされているのに、なんのアクションも取らないとすれば、「そういう事実があったのだな」と疑われても仕方ないだろう。

 ここまで書いてきて、さてこれで今週土曜日にブログにUPしようかと思っていたところ、翌朝の新聞に”仰天スクープ“と銘打って「NHKプロデューサーが安倍首相に違法献金疑惑”という「サンデー毎日」の大広告が出ていた。通院日はまだ先のことだし、またまた週刊誌を買う羽目になった。

 こちらの方は「週刊フライデ—」より内容のある記事で、裏付け取材もされている。安倍首相のシンパである評論家の娘婿のNHKのプロデューサーが、安倍首相の政治資金団体に”会社役員“という肩書で2011年と12年にそれぞれ20万円づつ寄付しているという内容である。これは、個人献金の上限が年間150万円であることから、評論家ファミリ—が家族に分散して寄付金を増やそうとした
いわゆる分散献金の片棒を担がされたのではないかという疑惑と、肩書を偽った政治資金規正法違反ではないかという法律論、もう一点はそもそも政治的中立をうたうNHKの職員が特定の政治家に献金してもよいのかという是非論である。NHK広報部は例によってまともに答えようとしていない。

 こういう”与太記事”には、いちいちまともに対応しないのが大人の流儀だと思っているのだろうが、週刊誌が世論形成に果たしている役割を軽視していると、NHKの報道姿勢に対する疑問が積乱雲のように堆積し、何かのキッカケで、土砂降りの雨となって降り注ぐことになりかねない。島、海老沢と続いた政治記者上がりの会長にまつわるスキャンダルで、NHKが受信料不払いの激増によって、存立の危機にさらされたことを忘れるわけにはいかない。

 私はこの記事を読んでいるうちに、NHK入局第一日に感じたこの組織に対する暗い予感が、今はほとんど骨がらみになっているのではないかと思わざるを得なかった< アーカイブ 2012−4− −1 NHK(1)暗い予感 2013−12−21 NHKはどこへ行く >。(M)