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英語の勉強というとひたすら覚えることだと思いこんでいる人が多いようです。その証拠に、英語が難しいと言う人に「何がいちばん難しいですか」と尋ねると、多くの人が「単語を覚えるのが難しい」、または「文法が難しい」と答えます。「文法」というのは「文法規則」と言い換えてもよいでしょう。筆者が教師をしていたときに調査をしたことがありますが、やはりそのような結果を示しました。しかしよく考えてみると、そういう調査はあまり意味のないことだったのかもしれません。なぜなら、英語を学ぶことは英語の単語と文法を覚えることだと昔から言われており、生徒たちは英語を習う前から、それを英語学習の公理として受け入れてしまっているからです。

英語に限らず、外国語を学ぶときには、単語と文法規則を覚えることが大切であることは言うまでもありません。単語と文法規則を知らなくては、相手の言うことが理解できませんし、読むことも書くこともできません。しかし、英語の学習はもっぱら単語と文法を学ぶことだと言うのは誤りです。それは公理とは言えません。なぜなら、私たちが英語を学ぶとき、どんなに努力しても、英語の単語と文法の規則をすべて覚えることは不可能だからです。英語の単語数は無限ではありませんが、どんな大きな辞書でも、実際に使われているすべての単語を収録してはいません。また文法規則も、そのすべてを掲載している文法書は存在しません。さらに重要なことは、たとえ多くの単語や文法規則を覚えることに成功したとしても、それらを使って自由に発話したり読んだり書いたりすることはできないからです。単語と文法規則はただ丸暗記しても、それらの使い方を知らなければ、ほとんど役には立たないのです。

これまでどれだけの英語学習者が、何年も学校で学んだのに自由に英語が使えるようにならないと嘆いたことでしょうか。それは、英語を暗記科目として、ただひたすらに英語の単語を覚え、文法規則を暗記しようとしたことにあるのではないでしょうか。たしかに最近の学校の授業では、多くの先生方がいろいろと工夫をして、生徒に英語を少しでも使わせようと努めています。公開授業では、そういう工夫がなされた素晴らしい授業を拝見することがあります。しかし生徒のほうは、教室で習った英語を教室外で使ってみる工夫をしているのでしょうか。彼らは独りになると、ただ単語と文法規則を覚えようとするだけではないでしょうか。語彙や文法規則についての知識は自分で使ってみて、はじめて自分のものになるのです。

ではどのようにして自分で英語を使う経験を積んだらよいでしょうか。まず新しい単語や文法規則に出合ったならば、それをいろいろなやり方で使ってみることが大切です。覚えることと使うことを別々にするのではなく一体化するのです。つまり、使いながら覚え、覚えながら使ってみるのです。以下は単語の学び方の例です。(文法については次回に取り上げます。)

語は大きく2つの種類に分けられます。冠詞(a, an, the)や前置詞・接続詞(in, of, on, with, as, if, etc.)のような語を「機能語」(function words)といいますが、これらは常に他の語や語句と連動して用いられる語なので、それだけを取り出して覚えることは難しいのです。たとえ辞書に書いてある定義などと結びつけて覚えても(たとえば<in=の中に>のように)、その知識はほとんど役には立ちません。これらはフレーズやセンテンスの中に入れてはじめて意味をなす語だからです。機能語だけを他の語から切り離して覚えるというようなことは、たぶん、学校でもしたことはなかったでしょう。しかしこれらの語は数が限られており、出現する頻度が高いので、中学校3年間の英語学習でだいたい使えるようになるはずです。もしそこで躓いたとおっしゃる方があれば、中学校用の教科書で再学習することをお勧めします。

機能語に対して、それ自体がある意味を表わす語を「内容語」(content words)といいます。内容語は名詞、形容詞、副詞、動詞のいずれかです。これらの多くは単独で意味を持ちます。単語1個で発話の単位となることもあります。たとえば “When will you leave here?” に対して、 “Tomorrow.” のように1語で答えることができます。機能語は数が限られていますが、内容語の数は特定できません。なぜなら、私たちの世界が広がるにつれて、新しい語がどんどん追加されるからです。学習者が単語に苦労すると言うとき、それは主としてそうした内容語のことです。以下に内容語の学び方の例を挙げておきますので、参考になさってください。大切なことは、使いながら(頭の中でその語が使われる場面を想像し、口で言ったり手で書いたりしながら)覚えることです。

(1)語の品詞(名詞、動詞、形容詞、副詞の区別)を確認する。

(2)意味を確認する。ただし多くの語は多義的なので、辞書でどのような意味に使われるのかを確認する。

(3)多義的な語については、一度に全部の語義を記憶しようとせずに、その語と出合うたびに一つずつ使い方を覚えるのがよい。多義的でない語は、たとえば<computer:コンピュータ>のように、英語と日本語を対にして覚えることもできる。

(4)その語を声に出して発音してみる。特にアクセントに注意する。

(5)語を覚えるときは単独で覚えるのではなく、必ずその語を含むフレーズやセンテンスで覚える。その場合には、語のアクセントだけではなく他の語との関係から生じる強勢や抑揚のパタンに注意する。かならず声に出して言ってみることが重要である。

(6)その語を含むセンテンスまたはダイアログ(対話)を自分で作成し、それが実際に産出される場面を想像しながら言ってみる。最後にそれをノートに書いて記録する。