Print This Post Print This Post

<社説よみくらべ 3> 

「日米首脳会談」と「北のミサイル発射」

2月10日から3日間にわたる日米首脳会談の初日にワシントンで発表された安倍首相とトランプ大統領の共同声明と、最終日の夕食会の席上にもたらされた北朝鮮のミサイル発射の知らせに対する共同会見についての各社の社説をよみくらべてみたい。

< 日米首脳会談共同声明についての社説 >

読売新聞社説  「経済で相互利益を追求したい」
朝日新聞社説  「“蜜月”演出が覆う危うさ」
毎日新聞社説  「厚遇の次に待つものは」
北海道新聞社説 「”親密外交”の代償が不安だ」
河北新報社説  「もの申す関係を構築せねば」
中日新聞社説  「蜜月の影響見定めねば」
京都新聞社説  「友好演出では物足りない」
中国新聞    「同盟の行方 防衛強化に傾かないか」
琉球新報    「″辺野古唯一“ 許されない」

読売新聞社説は、「初の首脳会談としては上々の滑り出し」であるとして会談の成功を讃え、特に安全保障面での「尖閣安保適用」を高く評価している。そして日本もアメリカに頼るだけでなく「積極的平和主義」の下で自衛隊の国際的な役割を拡大するよう求めている。一方経済問題、特に貿易面では日米が同床異夢の面もあるので今後のアメリカの出方を注視する必要がるとしている。
朝日新聞社説は、経済や安全保障問題で一定の合意が得られたことは日本にとって安心材料だと言えると一応は評価しつつ、国際的な関心事であったアメリカを多国間の枠組みに引き戻せるかどうかについては、安倍首相が全力を尽くした形跡はうかがえないと失望している。そして、対米一辺倒の外交は危ういとして、アメリカの要求に便乗した軍事費の拡大に懸念を表明し、中国、韓国、豪州、東南アジア諸国などとの多角的、多層的な関係を深めるよう求めている。
毎日新聞社説は、経済と安保が中心議題だったが、アメリカ新政権下の日米関係は順調に滑りだしたように見える。自動車や為替操作など懸念された経済問題についても特段に注文は無く共同声明は日本側にとっておおむね満足のいくものだったとしている。ただ、先に日本側の取りたいものをとらせ、今後アメリカ側の要求を拒めなくする戦術かもしれないと疑念を示している。
北海道新聞の社説は、トランプ大統領から懸念された強い対日批判や要求は出ず、安倍首相はひとまず胸をなで下ろしているに違いないと推測しながらも、今後アメリカが同盟強化の見返りに、貿易投資などで譲歩を迫ることは十分予想され、安全保障面でも新たな要求に警戒が必要で、会談結果を手放しで歓迎することはできないとしている。
河北新報社説は、第一歩は友好的にというのは当然と言えば当然か。だが大統領が持論を撤回したわけではあるまい。絆という「総論」を確認しつつ、摩擦を生みかねない「各論」へ深入りを避けた印象だ。
安倍首相は施政方針演説で「自由、民主主義、人権、法の支配」という価値観を共有する国と連携していくの述べたが、トランプ政権で大きく変質したアメリカに、自らの価値観に基づいて物申す関係を築くべきだと注文を付けている。
中日新聞社説も、道新の社説と同じく、安倍首相にとっては胸をなでおろす会談だったと言えるのではないかとした上で、安全保障に関連して、普天間の代替は辺野古が唯一の解決策と声明に書き込まれたことは残念であり、「国外・県外への移設の検討をもとめている。また尖閣諸島の安保条約5条の適用は当然のことで、政権が交代するたびに確認するのは、かえって条約の脆弱性を示すことにならないのかと疑問を呈している。
京都新聞の社説は、安保から経済まで両国の友好協力関係を推進する基本的な立場は確認できたとする一方、これは両国が友好関係を演出した結果で、防衛面での負担や為替政策など、具体的な問題での協議が始まれば、摩擦が生ずる懸念は消えないと述べている。
中国新聞社説は、首相はほっとしていようが、首相が目指す相互利益の関係を構築できるかどうかは見通せない。同盟強化が通商交渉の取引に使われる懸念も打ち消せないとしており、防衛費が聖域化するのではないかと案じている。
琉球新報社説は、日米首脳が沖縄の頭越しに、辺野古が唯一の代替案と規定するのは許されない、辺野古の海は日米への貢物ではないと怒りをあらわにしている。

このように社説の多くは、首脳会談が総論で意見の一致を見たことを一応評価しながらも、今後の各論で対立が生ずるのではないかと懸念している。また、これら社説の多くは、トランプ大統領の「7か国からの移民の一時入国差し止め」という大統領令を安倍首相が「内政問題だ」として言及しなかったことについて、日本の国際的なイメージを低下させるのではないかと指摘している。さらに、一部の社説は、会談の直前というタイミングをとらえて、トランプ大統領が中国の習金平主席と電話で会談し、「ひとつの中国」の原則を確認したこのに触れており、朝日新聞は「”日米蜜月”が中国を抑止し、日本を守るという発想だけでは、もはや通用しない」と指摘している。

ところで、安倍首相の3日間の訪米を締めくくる12日の夕食会の席上に、北朝鮮ミサイル発射の知らせがお祭りムードの会談に冷や水を浴びせた。両首脳は緊急記者会見に臨み。安倍首相が「断じて容認できず」という短い声明を読み上げた後、トランプ大統領がこれに和し、待ち受けた記者の質問には答えず、すぐに退場した。

< 北朝鮮のミサイル発射に対する共同会見についての社説 >

読売新聞社説   「日米同盟を試す不毛の挑発だ」  
朝日新聞社説   「北朝鮮の挑発 日米韓のゆるみを正せ」
毎日新聞社説   「冒険主義の挑発やめよ」
北海道新聞社説  「挑発止める連携を急げ」
中日新聞社説   「監視と包囲さらに強く」
中国新聞社説   「危険な挑発、許されない」
西日本新聞社説  「米新政権は指導力発揮を」
琉球新報社説   「北・米の「敵対関係」改善を」

読売新聞社説は、北朝鮮は米本土に達する核ミサイルを完成させ、核兵器保有国の立場でトランプ政権と対等の立場で交渉に臨むという目標に一歩近づいたことを誇示したいのだろう。日米は多層的なミサイル防衛網を構築することが急務だ。と述べている。
朝日新聞社説は、発射から間をおかず、日米の首脳が並んで記者会見し結束を国際社会に示した意味は大きいが、強いメッセージを両首脳がともに発すべきだった。米・韓の政治が不安定な今、日米韓のゆるみを正し、さらなる連携を促すのは日本の役割だとしている。
毎日新聞社説は、日米首脳が緊急の記者発表で一致したメッセージを発信したのは適切だった。重要なのはトランプ政権が北朝鮮の核・ミサイル開発を絶対に許さない断固たる意思を示すことだ。オバマ政権はその点で失敗した。日本は利害を共有する韓国と共にトランプ政権への働きかけを強めよと訴えて
いる。
北海道新聞社説は、国連安保理の制裁決議の順守を徹底することが重要だ。トランプ氏は選挙期間中に金正恩氏との対話に意欲的ともとれる発言をしたが、アメリカが北朝鮮に安易な宥和策をとり、北東アジアの平和と安定を脅かす核保有を認めることがあってはならないと述べている。
中日新聞社説は、トランプ政権が北朝鮮制裁をさらに強めるのか、それとも対話を模索するのか、具体的な政策が動き出すのは今年下半期になるのではないか。三月には定例の米韓合同軍事演習実施され、
北朝鮮がさらにミサイルを発射する恐れがある。米韓は軍事力の差を誇示して挑発を抑え込みながらも、偶発的衝突が起きないように慎重を期すべきだ。と
中国新聞社説は、トランプ氏は選挙戦で北朝鮮との対話や在韓米軍の撤収の可能性に言及していた。ミサイル発射は、オバマ世間から続く北朝鮮への「敵視政策」の転換の可能性を含め、新政権の北朝鮮への東アジア政策をみきわめようとしたのだろうか。トランプ大統領がどう向き合うのかは不透明だが、粘り強い対話を第一に対応を練り直したいと提案している。
西日本新聞社説は、ミサイル発射は日米首脳会談で「北朝鮮の核・ミサイルからの防衛は極めて優先度が高い」など日米が対北朝鮮で連携をアピールしたことへの反発なのだろう。同時にトランプ政権の本気度を「瀬踏み」する意図があることは間違いないと推測している。
琉球新報社説は、ミサイル発射は、最近の日米韓による軍事的包囲網強化への危機感を示したものだろう。断固たる措置は当然だが、ミサイル開発への軍事的対応の強化が新たな北朝鮮の挑発を招き軍事的緊張が高まる悪循環に陥ることが心配だ。根本の問題であるアメリカと北朝鮮の敵対関係を改善する道筋を模索すべきだ。と述べている。

大方の社説が北朝鮮の暴挙を激しく非難し、強い態度で臨むよう促している中で、中国新聞と琉球新報の社説が対話の必要性に触れているのが注目される。武力衝突が起きれば、在日米軍基地の74%が集中する沖縄が攻撃目標となることは必至だから、沖縄の懸念は当然だろう。

さて、私の感想と意見です。

 主役の皆さんには失礼な話ですが、今度の「会談」と「発射」についての報道を見たり読んだりしているうちに、私は少年の頃、親の目をかすめて通ったドサまわりの小屋掛けの芝居を思い出しました。

新しくのし上がった大親分と先々代からの古い子分の代貸しが“シマ割りやテラ銭の分け前”について話し合い、代貸しがみっともないほどにおもねった挙句、シャンシャンシャンと手打ちを終わり、大親分がやらせている旅館の豪華な座敷で女房や子分どもをはべらせて上機嫌で酒を酌み交わしているところへ、昔から手を焼いていた一匹狼の無法者のやくざが、代貸しの縄張り近くまで入り込んで、長どすを振り回して試し切りをしているという知らせが入った。二人ともすっかり酔いがさめて、顔をみあわせたが、突然のことでどうしたらよいかよい知恵が浮かばない。だが子分や虎視眈々と成り上がり者の大親分の隙を狙う親分衆の手前黙っているわけにもいかない。外へ出てみると噂を聞いた野次馬が集まっていた。代貸しが、親分に促されて「やくざ仲間の風上にも置けねえ奴だ。断じて許せねえ。皆で懲らしめてやる」と啖呵を切って見せると、大親分も「おめえと俺は杯を交わした一心同体の仲だ、目いっぱい力をかすぜ」と応じたが、さていったいどうなることやら。というのが感想です。

続いて起きた“金正男毒殺”事件は、「朝鮮王朝実録」にもとづく李王朝の韓国歴史ドラマの筋立てにそっくりです。これらのドラマでは、絶対的権力を持つ王が、謀反を恐れて犯人を仕立て上げては殺すのです。殺されるのはたいてい王の異母兄弟とそれに加担したとされる親族や側近で、追放された挙句、側近は八つ裂きなど残虐な刑に処され、異母兄弟は毒殺されることになります。 時には謀反騒ぎの裏に宗主国であった「清」の影がちらつきます。金正恩委員長の義理の叔父で”金王朝“のナンバー2だった張成沢行政部長は中国から帰国したあと、反逆罪に問われ機関銃で粉々に”爆殺“され、14歳年上の異母兄は常に命を狙われていたと言われます。

これらの悲劇は、専制的な権力を持ちながら、或いはそれ故に、孤独と猜疑心にさいなまれる独裁者
によって強行されました。独裁者はこうして国内では恐怖政治を敷き、外国に対しては強硬な政策をとります。そうしなければ政権を維持できないからです。朝鮮王朝の場合、外敵は女真と日本(倭寇)でした。

北朝鮮ではこうした政策の結果、ほとんどの国民が先軍思想に洗脳され、それを先導する「将軍様」に絶対服従を誓っているようです。先年北朝鮮が「光明星1号」ミサイルを打ち上げた際の映像で、見上げる若者の目に涙がうかんでいるのがわかりました。それは70年前、大東亜戦争はアジア解放の聖戦であると教え込まれ、白馬にまたがって皇軍をみそなわす大元帥陛下の御姿に深く感動していのちを捧げることを誓った私の姿に重なってみえました。将軍様とそれを取り巻く勲章だらけの軍人達の映像を見る度に、私は「陸には猛虎の山下将軍、海には鉄血大河内、見よたのもしの必殺陣、出てこいニミッツ、マッカーサー、出てくりゃ地獄へ逆落とし」と本気で歌った昔を思い出します・

このような心象風景をバックに各社の社説を読んでみました。 
     
おおかたがアメリカの核兵器を含む圧倒的な軍事力で北朝鮮の軍事挑発を抑えこむことを期待し、同盟国である韓国と日本が一体となって協力するよう求めています。
私も北朝鮮が極めて特異な国であり、その国が核ミサイルを持つことの危険性は十分に認識しているつもりです。(桐英会ブログ「北の核 1~7」)。今の北朝鮮がかつての軍国主義日本とあまりにもよく似ていることを思うと、外敵の圧迫を受ければ受けるほど国民は貧しさに耐えて一致団結するだろうし、指導者がそれをバックに無謀な行動に出ることは十分に考えらます。北朝鮮が核ミサイルを完成した場合、日本への攻撃を防ぐことは不可能でしょう。核抑止という実際には機能しない考え方に頼るのではなく、外交によって事態を解決する努力を優先すべきであると思うのです。

中国新聞と琉球日報の社説が外交による解決を主張しており、琉球日報は「北朝鮮を仮想敵国とする米韓軍事演習の中止」など米国が敵対政策を転換する中から、「休戦協定を平和協定に改定する対話路線を」という木村朗鹿児島大学教授の提案を紹介しています。

日本は小泉政権時代に、北朝鮮と平和条約交渉のための政府間協議を始めましたが、北朝鮮が拉致被害者の偽の遺骨を送ってきたとして中断しました。拉致被害者についての協議も中断し、老い行く家族達の悲痛な願いにも拘らずまったく進展の目途は全く立っていません。アメリカの歴代政権が北朝鮮との直接対話を避けてきたため、日本が単独で協議を再開することはむ塚しかったのでしょうが、トランプ政権が対話に前向きともとれる発言をしている今が対話再開のチャンスであると思います。(M)