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「メタ認知」について

Author: 土屋澄男

私たちが外国語である英語を学ぶときには、自分の中に持っている認知力(知的能力)を総動員して取り組む必要があります。英語に限らず世界の自然言語はどれも構造が複雑で、それが表す意味の世界は広大です。しかもそれは異文化の世界です。片手間にやってモノにできるような簡単なものではありません。週に3時間か4時間、学校の授業に出ていれば身につくようなものでもありません。それでも、日本人で英語や他の外国語の習得に成功した人はそれほど珍しくはありません。また少数ですが、複数の言語の習得に成功した人もいます。ではそれらの成功者に共通して見られる特徴は何でしょうか。私のこれまでの研究で得た結論では、そういう人は第1に自分の持っている認知力を最大限に活用することのできた人、第2に自己動機づけを巧みに操作することのできた人です。ほかにもありますが、外国語学習の成功の秘訣はこの2点にしぼられると私は考えています。今回は第1の問題、次回に第2の問題を取り上げます。

 第1の問題はメタ認知の問題です。メタ認知とは、自分の学習のあらゆる面でなされている認知的プロセスを内省し、意識化し、学習の改善をはかることです。もう少し具体的に述べないと分かりにくいかもしれません。「レコーディング・ダイエット」というのをご存じでしょうか。筆者自身はダイエットの必要を感じたことがないので実行したことがないのですが、テレビの健康番組でそういうダイエット法があることを知りました。それによると、毎日の食事で食べたものを記録するのです。その記録の仕方にはいろいろあるようですが、要するに食べたものを記録し、次にどのくらい食べるかを考えることで無理なく減量していくというのです。この減量法が実際にどれくらい有効かについて筆者は正確に評価することはできませんが、おそらく相当な効果があると思われます。なぜなら、メタ認知の理論から充分に説明がつくからです。つまり、自分の食べたものを記録することで、自然に自分の食事について内省的に考えることになります。自分の体重を気にしている人は、「今日の焼き肉はおいしかったけれど、ちょっと食べすぎたかな」と反省するでしょう。そして「今度はもっと量を減らさないといけない」などと考えるでしょう。毎日きちんと記録するという根性を持っているほどの人ならば、成功する確率は高いと思われます。NHKの「ためしてがってん」では「測るだけダイエット」というのをやっていました。こちらは毎日朝夕2回体重を測るだけで減量できるというのでした。これもメタ認知的内省をすることのできる人には効果があると思われますが、レコーディング・ダイエットほどの効果は期待できないのではないかと思います。

 これでかなりお分かりいただけたかと思いますが、メタ認知とは、要するに、自分のしていることを意識に上らせて内省し、自分の目標にてらしてそれを評価し、どのようにしたらその目標に近づけるかを考えることなのです。外国語の学習を上手に進めている人はそういうことをちゃんとやっている人です。そしてこのような能力は誰もが潜在的に持っていると考えられています。第2言語や外国語の学習に成功する人の特質として、多くの研究者は一致して次の4つのメタ認知の能力と技能を挙げています。

1)自らの明確な学習目標を持ち、その目標を達成するために必要かつ有効なステップを組み立てることができる。

2)それぞれの学習場面で適切な学習方略(ストラテジー)を選択し、それらを有機的に組み合わせて用いることができる。

3)学習の過程で、自分が何を理解し何を理解していないか、また何ができて何ができないかを正しくモニターし、学習を調整することができる。

4)自分自身の学習結果を正しく評価し、それをフィードバックして次の学習に活かすことができる。

これらはどれも「学び方」の解説書の1章を占める重要なトピックですが、それはまたの機会にして、次回は「動機づけ」の話を取り上げます。(土屋澄男)