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 たばこは18歳(未成年!)のときに吸い始めました。東京高師の入学式が終わり、クラス担任の藤井一五郎教授がみんなを連れて戸外に。「さあ、もうたばこを吸っていいよ」と先生がおっしゃると、待ち構えていたように学生たちがポケットからたばこを取り出し火をつけます。猛烈な劣等感に襲われました。家に帰る途中でたばこ(赤いボックスの「光」)を買い、列車を降りた駅前で一服。急に目の前の景色が一回転し、ヘナヘナと道路に崩れ落ちました。それ以来80歳の今日まで、一度も禁煙など考えたこともなく、フィルターなしのLucky Strikeとピースを吸っています。「トム・ソーヤーの冒険」の作者マーク・トウエイン(Mark Twain)の名台詞があります。”It’s easy to quit smoking.  I’ve done that a hundred times!” (たばこをやめるなんて簡単じゃよ。わしなんか、もう百回もやめとるぞ)。

 ではお酒はどうでしょうか。いつどのように酒を口にし始めたのかは、はっきり記憶にありません。卒業してから藤井教授に誘われてキャンパス近くの料理屋に行き、宴会が終わって玄関まで歩いたとき、廊下の両側の壁が妙に馴れ馴れしく交互に近づいてきたのを覚えています。お勤めを始めてからは、何とかの一つ覚えみたいに、毎日缶ビールを一本飲み、それが長く続きました。学生時代、アルバイトで旭ガラスの重役のお嬢さん(中学生)の家庭教師をやったことがありますが、レッスンが終わるといつも立派なお弁当と一緒にJohnny Walkerというラベルがついたウイスキーが出ました。「ウイスキーはうまい」と舌が覚えていたのでしょう、やがて私はビールを卒業してスコッチの世界にのめり込みました。こんどは、スコッチをはじめ、アイリッシュ・ウイスキー、カナデイアン・ウイスキーと片っ端からトライし、酔い心地に満足しました。そこでアメリカ留学。今度はアメリカの地酒バーボン(bourbon)です。スコッチと比べるとちょっとクセはありますが、何とも言えない甘味があるバーボン。これもケンタッキー州、テネシー州産のブランドを総なめです。その次はワイン。日本航空のファーストクラスで提供されていた「シャトウ・マルゴー」(Chateau Margaux)の妙なる美味に圧倒され、今度はワインの世界にどっぷり。「白ワインならミュスカデ(Muscadet)か、カリフォルニア州ナパのロバート・モンダビ(Robert Mondavi)だな」などと、いっぱし通を気取る有様なのです。頻繁にハワイを訪ねるようになると、ポリネシアのカクテルに熱をあげ、さんざん飲みまくったあげくに「ロイヤル・ハワイアン・ホテルのビーチサイドにあるマイタイ・バーで飲むマイタイ(Mai Tai)がイチバン」との結論を得ました。元来凝り性なもんですから、いろんな酒を飲みまくったあげくに到達した最後のこたえは・・・日本人のふるさとは日本酒にあり、ということでした。酒は飲むもの、飲まれるものではありません。酩酊して自己喪失に陥ったり、いわんや他人に迷惑をかけたりするのはもっとも恥ずべきことです。したがって、食事を別にしてお酒だけを飲もうという気にはなりませんし、酒場やバーに入り浸りなどということもありません。日本酒は食事の味を引き立てます。ですから、水のように爽やかな、そしてそのお酒独特の風味を備えた酒を銘酒だと思っています。一度でいいから、自分好みの日本酒を自分で醸造してみたい・・・こんな思いで生まれたお酒の写真をお目にかけましょう。