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英語文法の学習(1)

Author: 土屋澄男

英語の文法は一般に「英文法」と呼ばれていて、「英語文法」というのは通常の日本語のコロケーションから外れていることは筆者も承知しています。それにもかかわらずあえて「英語文法」としたのは、ここで述べる英語の文法がこれまで学校(特に高校)で教えられてきた英文法とは違う考え方に立っていることを表したかったからです。とは言え、これまでの英文法を全面的に否定するつもりはありません。しかしこれまで学校で教えられていた英文法は、「5文型」に見られるように、主として英文理解に役立てるための文法でした。英文を見て、どれが主部でどれが述部で、どれが動詞でどれが目的語かというようなことが分からなければ、正しい解釈ができないというのは確かです。しかし、センテンスを解析して5つの文型に当てはめることができるようになっても、そういうセンテンスを産出する(作り出す)ことができるわけではありません。筆者がむかし東京高等師範の英文科を受験したときには、たいていの英文は5文型に当てはめて解析することができました。しかし自分の考えをきちんとした英文で述べることはできませんでした。それは語彙の問題もありましたが、英文解釈に役立つ英文法と、英文を産出するのに役立つ英語の文法とは違っていたからです。

 英語で文法的に正しいセンテンスを作り出すためには、5文型のようなおおざっぱな分類ではなく、それぞれの動詞がどんな語の結合を作り出すことができるかを知る必要があります。たとえば、I like(またはI’ d like)と始めたならば、そのあとに何が好きなのかを言わなければなりません。次のようです。

    I like music / singing / to sing / her to sing, etc.

Likeは目的語を伴いますが、目的語は名詞であったり、動名詞や不定詞であったり、人+不定詞になったりします。こういうのを厳密にはコロケーションとは言いませんが、最後のI like her to singの形は注意を要します。これを第3文型か第5文型かなどと議論することはあまり意味がありません。それよりもlikeというのはこういう「動詞パタン」を取り得ることを知ることが重要です。動詞パタンというのは、それぞれの動詞が一定の文法的構造をもった語のつながりを伴うという意味で、それを「文法的コロケーション」と呼ぶことができます。いま筆者の手許に一冊の小さな辞書があります。その書名はThe BBI Dictionary of English Word Combinations (Revised edition 1997) で、それぞれの英単語が他のどんな語と結びつきやすいかを記述したものです。それらのすべてがコロケーションとは言えませんが、この辞書は「like somebody to不定詞」のような動詞パタンもそこに含めています。筆者もその考え方に従って、そのような動詞パタンをここで取り上げることにします。

 さて、動詞パタンがいくつあるかは研究者によって異なりますが、最もよく知られているのはOxford Advanced Learner’s Dictionary (OALD) の基になっているホーンビー(A. S. Hornby)の考案した動詞パタンです。OALDの第6版(2000)は、動詞の用法を20のパタンに分類し、それぞれの動詞がどのパタンに用いられるかをラベルで表示しています。この知識は外国語として英語を学ぶ私たちには英文を作るときの必須の知識で、その知識なしには正しい英文を作ることができないと断言してよいでしょう。ちょっとスペースを取りますが、その20の動詞パタンを以下に列挙します。(V = 動詞、N = 名詞句)

1.Vのみ  2.V+副詞/前置詞句    3.V+N  4.V+N+副詞/前置詞句  5.V+N+N(補語)       6.V+形容詞句  7.V(be動詞など)+N   8.V+N+形容詞句     9.V+N+N(2重目的)     10.V+that節     11.V+N+that節      12.V+wh-節  13.V+N+wh-節     14.V+to不定詞  15.V+N+to不定詞  16.V+N+原形不定詞    17.V+現在分詞   18.V+N+現在分詞     19.V+直接話法   20.V+N+直接話法

英語の平叙文では、動詞はたいてい主部をなす名詞句のすぐ後に置かれて、動詞句を導く形になっています。ですから、日本語の動詞とは違って、英語の動詞はセンテンスの中心、いわば心臓とも言える位置を占めています。上記の動詞パタンをご覧になれば、英語の文型とは動詞パタンのことであることが分かります。たしかに5文型よりは複雑です。しかし自分が使おうとする動詞がどのようなパタンを取り得るかを知らなければ、後が続かないでしょう。たとえばpromiseを使おうとして、He promised meと言い始めて、その後にto不定詞にするか、that節にするかの選択がすばやくできなければ、ライティングの場合はともかく、スピーキングでは間に合わないでしょう。そういうわけで、学習する動詞の取り得るパタンについて学ぶことは、英文を作るときの必修事項になります。(To be continued.)