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Author: 松山 薫

< 原発論争に備えて ④ >

④ 再生可能エネルギーの可能性を考える

 30数年前、NHKの同僚が中南米へ取材に行った際に、現地の新しいエネルギー源に興味を引かれ放送で紹介したことがある。多分日本で初めての「バイオマス(さとうきびエタノール)」の放送であったと思われるが、ほとんど反響はなかった。同じ頃、私は子供達を連れて八幡平へスキーに行った際に珍しい発電所を見学した。岩手山の中腹にあった地熱発電所である。こういった自然エネルギーを含む再生可能エネルギーはあるにはあったが、「ついに太陽をとらえた」という原子力エネルギーが、政・財・官・学一体となった大キャンペーンで国の政策として推進され、まさに日の出の勢いの原発に押されて影が薄くなっていった。しかし、今度の原発事故で形勢が逆転しかかっている。逆転の切り札は菅前首相の置き土産である「再生可能エネルギー特別措置法」である。特措法が来年7月に発効すると10年前のドイツのように劇的な変化が起きるという予測もある。果たして再生可能エネルギーが原子力にとってかわる可能性はあるのだろうか。

<再生可能(renewable)エネルギー>というのは、

「資源が枯渇することのないエネルギー」で、一般的には、太陽光、太陽熱、風力、波力、地熱、小水力、バイオマス( biomass : トウモロコシ、サトウキビ、廃木材などから作るバイオエタノールなどのアルコール)、バイオガス(家畜の糞尿から発生するガス)、木質バイオマス発電(間伐材、廃材、端材などを燃やした熱で発生させた蒸気で発電)などをさし、おおまかに、自然エネルギー、新エネルギー、クリーンエネルギーなどと呼ばれることもある。一般的には、大規模なダムによる水力発電は含まれない。また、新エネルギーには、このほかに、燃料電池( FC : fuel cell水素の化学反応によって発電)、蓄電池( battery 例えば最近普及しつつある電気自動車 EV のバッテリーには一般家庭二日分の電気が貯められる )がある。

< 再生可能エネルギーの現状 >
★ 世界のエネルギー事情  (電気事業連合会 2010)
         日本             世界
  天然ガス   29.3%         21.3%
  原子力    28.6           13.5
  石炭      25.0           40.9
  水力       8.5    15.9
石油      7.5 5.5
  自然エネ    1.1    2.8

★ 世界の自然エネルギーの市場規模 (経産省)
  2009年 太陽熱、太陽光、風力、燃料電池、蓄電池 
 30兆 円 2020年 86兆円予測 (その時点の自動車産業
全体の半分)。

〇 太陽光発電の現状 (世界全体 2008年) 設備 1億3
千 425万kw/h
(内訳) ドイツ 40% スペイン 25% 日本 16% アメリ
カ 8.7%。イタリア 3.4% 韓国 2.7%
〇 風力発電は世界的に導入が進んでいる。
  * 世界 2010年 3580万kw/h 原発35基分 5年前に比
べ3.3倍。10年で17倍。 (世界風力エネルギー協会) 
* 世界の風力発電のシェア アメリカ 22 中国 16 ドイ
ツ 16 スペイン 12 インド、イタリア、日本は1.3%で
13位。
  * 日本の風力発電 1683基 北海道 266 青森 200 
 鹿児島 106 秋田 104 稼働率 25%~30%。現在は
赤字のところが多い。
* 三菱電工 洋上風力発電 2015年 年間 200基受注見
込む ヨーロッパで普及。 
〇 小水力  ダムではなく川や水路から水を引き入れ水車を回
し、また水を元に返す。水力発電のうち商業ベースに乗りにく
い出力1000kw/h以下のもの。全国に19、000ケ所ある。出
力合計 500万kw/h 設備費 1kw/hあたり200万~300万円
かかる。1000kw/hで20億円程度かかるが50年程度もつ。量
産で価格下落の可能性。
〇  バイオマス 日本では、10年前から、政府の「バイオマス・
 日本」計画によって200あまりの事業が実施されたが、多
    くは 赤字で、効果は上がっていない。
〇 バイオガス ドイツでは5,000ヶ所で実施中(2009)、日本で
   は北海道に30ヶ所ほどある。国内の家畜糞尿年間9千万ト
   ン。44億kw/hの能力あり、1kw/h 20円~30円で売電可
   能といわれる。
〇  地熱 日本はアメリカ・インドと並ぶ「3大地熱資源国」のひ
   とつ。
〇 地中熱 地下10メートルより深いところの温度は、その地の
   年平均気温より1~2℃高いところで安定している。つまり夏
   は低く、冬は高いので、地中にパイプを敷設して不凍液を流
   し、これを地上に上げて空調に使う。東京スカイツリーに設
   置。アメリカや中国で普及している。
〇 家庭用燃料電池は、工事費別で270万円かかる。国の補助
   が105万円ある。10月17日に家庭用燃料電池「エネファー 
   ム」が発売される。
〇  電気自動車のバッテリーは、外付け可能のものが開発され
   ている。家庭の電源から充電できる。

< 再生可能エネルギーの問題点 >
★ メリット
  * 資源が枯渇しない。
  * 戦略物資としての需給操作に左右されない。地政学的リ
     スクもない。
  * 石油(年間輸入額20兆円)のように投機による価格変動
     の影響を受けない。
  * 環境にやさしいものが多い。
  * 地域分散型で地域経済に貢献する。
  * 地域分散型なので大規模停電が避けられる。
  * 世界的に普及率が上がっていてコストが低下中。
  * 日本の技術力を生かせる。新産業の創設につながる。国
     連の予測によると、自然エネルギー産業で働く人は、
     2006年の233万人から2030年までに少なくとも2千万
     人増える。
  * 原発のような深刻かつ広範囲な災害をもたらすリスクが
    ない。 
★ デメリット
  * 発電コストが高い。産業の競争力が低下する。 環境省
    の試算では、太陽光発電は買い取り価格を36円に設定
    しても採算が取れない。
  * 設備コストが高い。
    現在は 家庭用の太陽光パネルの設置費が370万円程度
    かかる。(内 国、自治愛の補助70万円)15年ローンで
    月2.6万円支払い。太陽光発電設備 昨年出荷 100万
    キロW 家庭用が80%、技術開発、家庭用パネルの量産
    によるコストダウンが必要。
  * 電力供給の安定性に欠ける。
     電気は原則貯められないので、需要と供給を均衡させる
     必要がある。原子力は定格なので現在は火力で調節
     している。再生可能エネルギー安定供給にはスマート
     グリッドの開発が必要。
  * 風力発電は、風力発電には低周波障害、倒壊の危険が
     伴う。天候 風向き 騒音 強風に弱い。 定格出力が
     決まっており強風時はロックすることも。雷の被害。 日
     本は欧米 に比べ 平地が少ない。 洋上発電 建設コス
     ト、メンテナンスコストがかかる。 強風による倒壊。
  * バイオマスは、大規模な森林破壊、食糧生産との競合が
     問題。
  * 小水力発電には水利権交渉が必要。
  * 地中熱利用はコストが問題。
  * 地熱発電の適地の多くが国立、国定公園内にあり、景観
    への影響、温泉の枯渇も気がかり。 

< 発電コストについて >

1kw/hの電力を生み出すのにいくらかかるかについては、前提条件の違いなどによりいろいろな試算がある。

* 発電コストについて 環境省エネルギー白書 (1kw/h)
   原子力 5~6円  LNG 7~8円  水力 8~13円 
   風力 10~14円 太陽光 49円
   但し、原子力には開発促進費や再処理、最終処分の費用
   は含まれておらず、これを含めると 10~11円と言う試算も
   ある。また、9電力会社電気料金の計算そのものに問題
   があるという指摘もある。さらに、東電では、賠償費用を料
   金に上乗せすることになる。
* 原子力による電気料金試算  1kw/h
  日本学術会議 5.9円  電気新聞(業界紙) 20.2円  
  大島立命館大教授 12,2円  地球環境産業技術研究機
  構  原発稼働率  60%~80%で12.5円~8.1円
  (9月現在の稼働率は 20.6%)
* 原発を停止し再生エネで代替した場合 月 943円~2290円
   増という計算
* 原子力発電コスト: 9電力会社は、地域独占企業であり、コ
   スト計算の上に利潤を上乗せして決める「総括原価方式」
   をとっているため絶対赤字にならない。結果は第三者の
   チェックなしに放置されてきた。この方式に枝野経産相は、
   見直しを指示。
* 電気料金の中には、原発事業への膨大な宣伝を行なってき
   た電気事業連合会への支出をはじめ、原発立地自治体な
   ど立地3法の交付金、電力会社による寄付のばら撒きなど
   が含まれていない。
* 原子力発電のコストには再処理工場の費用 2兆2千億円が
   含まれていない。
* 日本の産業用の電気料金は割高で、フランス、アメリカ、韓
   国の2倍という指摘も。

★ 発電コストについては、10月13日、原子力委員会が見直しを決めた。原子力については電源3法交付金(今年度1318億円)、事故による損害・補償(福島原発事故の試算は5兆7千億円)の費用などを含めてコストを見直す。但し、事故の確率や除染の費用をどの程度に見るかによってコストは大きく異なる。今年末までに、他のエネルギー源についても試算をやり直す予定。

< 再生可能エネルギー普及の努力 >

〇 再生可能エネルギー特別措置法 (2011年8月成立
  2012年7月施行)
  「脱原発」を宣言した菅直人首相の置き土産で、太陽光、風力、バイオマス、地熱、小水力による発電を、固定価格で買い取る。価格は第3者委員会で決定する。
  電気料金への上乗せ制限があり、電力会社に買い取り拒否権があること、送電網の不備などの問題点あり。経産省では、これによって、10年後には、現在の最大2.3倍 3500万kw/hの発電が見込めるとしている。電力会社は、発電会社の求めに応じて自然エネルギーを自社の送電線に接続することを義務付けられるが、安定供給に支障がある場合は除外が可能という抜け道がある。
  ドイツでは2000年に導入され、世界最大の太陽光発電国となった。一方スペインでは、買い取り価格と高くしすぎて失敗した。
〇 発・送電の分離 日本独特の9電力会社による送・配電一体の地域独占体制の見直し。
  日本では戦前は発・送電とも自由競争であったが太平洋戦争の直前、統制令によって日本発送電のもとに一本化された。戦後1951年に占領軍によって、現在の9電力(沖縄を入れると10社)体制になった。
〇 メガソーラー計画 自然エネルギー財団(孫正義)全国の耕作放棄地に太陽光パネルを設置する構想。年間売り上げ3兆円が目標。
〇 メガソーラー計画 電気事業連合会 2020年までに全国30地点で14万KWを発電。
〇 ジャパン・スーパーグリッド構想 自然エネルギー財団 2兆円をかけて日本周辺海域に2千キロの高圧送電網の建設を提唱。
〇 スマートグリッド(smart grid 利口な碁盤目→IT制御の送・配電システム)。次世代送電網と呼ばれる。スペインは、マドリード郊外に国全体の供給コントロールセンターがあり。コンピュータ制御している。規模は東京電力と同じくらい。水力と自然エネで35% 火力32%、原子力22%の送・配電を実施している。
〇 神奈川県の黒岩知事は、選挙公約として任期中の年間で200万戸の太陽光発電パネル設置構想を発表したが、見通しの甘さからあえなく撤回。

<再生可能エネルギーの他に、原子力発電に代わるものとして天然ガスを挙げる人もいる>

● シェールガス( shale gas, shale は頁岩 )
新しいエネルギー源として注目されている。 深い岩盤の間に溜まっている天然ガスで採掘が難しかったが近年モービルなどが採掘に成功した。カナダ、南米、オーストラリア、ポーランド、中国などに埋蔵されており、現在の天然ガスの使用量で数百年分あるとされる。最大の埋蔵地域は中国で、米国メジャーと中国との間で採掘交渉が進んでいると伝えられる。地球温暖化ガスの排出量が多いという指摘もある。
● 天然ガスは、原油と異なり供給量が増えているし、安定供給が見込める。硫黄分が少なく、
改良型火力発電で燃やせば、温暖化ガスも減る。日本近海にも埋蔵されている深海の天然ガスの開発も期待できる。燃焼ガスと廃熱を二重に使うコンバインドサイクル発電で効率のよい発電が出来るという。 (M)