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学習意欲の心理学(4)

Author: 土屋澄男

不幸にして学校で自己学習について充分な指導を受ける機会のない(なかった)学習者は、自分で学習法を工夫するほかありません。それはなかなか難しいことのように思われますが、そうして自律的に英語学習に取り組んで成功した人は珍しくはありません。それに取り組む決断さえすれば誰にでも実行可能な学習です。筆者が英語学習を始めたのは第二次大戦中で、みな戦局が気になって、勉学に打ち込む雰囲気は失われていました。そんなこともあって、先生方も「予習と復習をしっかりやれ」と言うだけで、具体的に何をするかまでは指導してくれませんでした。私たちは自分で学習の仕方を工夫するしかありませんでした。それでも同年輩の人たちの中には、この桐英会ブログのメンバーに見るように、戦後のアメリカ英語・アメリカ文化との接触をきっかけとして、英語を専攻することを決断する人は少なくありませんでした。大切なのは、学習者個人の決断ではないでしょうか。

 自律的学習者が最初になすべきことは、学習目標をはっきりとさせ、そこに至る道程を考えることです。中学生くらいでは、自分にとって英語が将来どんなことで必要になるのかは分からないかもしれません。それは英語を学びながら考えていくことにして、とにかく学校で使う教科書(文科省検定教科書)の英語を自分のものとすることに専念するのがよいでしょう。中学校3年間に学ぶ教科書の英語を自由に使えるようになったら、英語の基礎の大部分は出来上がっていると言ってよいのです。多くの英語教育専門家が言うように、高校生や大学生になって英語の基礎が不充分だと感じたら、その時点でもう一度中学校の教科書に戻って再学習をするのが最善の方法です。学校を出た後でもう一度英語をやり直そうとする人たちに対しても、筆者は同じアドバイスをします。あるいは、最近そういう人たちのための良いテキストが出てきましたので、それらの中から選択するのもよいでしょう。たとえば、この桐英会ブログの投稿者の一人である松山薫氏が監修なさった『0(zero)からスタート再学習の英語(前編、後編)』(茅ヶ崎出版)はすぐれたテキストですから、自信をもってお薦めできます。

 ここで、「中学校で学ぶ教科書の英語を自由に使えるようになる」という言葉に注意してください。自由に使えるようになるということは、教科書に書いてある英文の意味が分かるというだけのことではありません。教科書に出ている単語を全部暗記しているということでもありません。また、テキストが上手に音読できる、練習問題がすべて解ける、というのでもありません。もちろんそれらは大切なことです。しかし、教科書の英語を自由に使えるということは、そうこうことができる以上のことです。それは、教科書の英語をいったん自分の中に取り込んで自分のものとし、こんどはそれを自分の言葉として自己表現のために使うことができるということです。ですから、それは学校の授業だけではとうてい達成できることではなく、学習者自身が意図的に自主学習の中に組み入れ、長い時間をかけて積み上げていかなければならないものなのです。

 そこで重要なことは、教科書の英語をどのようにして自己表現に使えるレベルまで習熟するかということになります。中学校の教科書はやさしいから意味は分かる、単語もだいたい分かる、なんとか音読もできる、というレベルまではかなりの生徒が到達するのではないかと思います。しかし、教科書の英語が思いのままに使えるところまで達した人は少ないのです。ですから、中学校から6年間も8年間も英語を学んだのにまったく使えないということが起こるわけです。単語は中学校教科書に出てくる1000語くらいでは足りないでしょうが、文型や文法の基本的なものはほとんど出てくるので、それらを思いのままに使うことができるようになれば、かなりのことが表現できるはずなのです。そのための練習の方法を学校の授業できちんと指導してもらえるかどうかも問題ですが、生徒のほうも積極的に英語で表現しようとする気持ちを持つことが大切です。授業で暗唱やスピーチやプレゼンテーションをする機会が与えられたなら最善を尽くすべきです。学校や地区で英文暗唱コンテストやスピーチコンテストが開かれたなら、積極的に参加するとよいでしょう。また教科書だけでは満足せずに、ラジオの基礎英語やテレビの英語会話番組などを積極的に聴くようにしてください。そこには教科書に出てくるいろいろな表現の実際場面での使い方や、教科書に出てこない新しい表現法を学ぶこともできます。できれば英語を使うことのできる外国人(必ずしも英語のネイティブ・スピーカーでなくてよい)と友だちになってメールやカードの交換をすると、楽しく英語を使うことができます。(To be continued.)