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前回、大学入試センター試験のことにふれました。それは高校修了時の学力の到達度を測るテストですから、学習者が英語の基礎をどこまで習得したかを自己評価するために、これを利用できると考えたわけです。その場合の最大の問題点は、この英語のテストで測られる言語技能がリスニングとリーディングだけで、スピーキングとライティングが含まれていないことです。問題作成にはそういう配慮もなされていることが分かりますが、ペーパーテストではしょせん本当の発表能力をみることはできません。しかしリーディングと語彙・文法の基本的知識・技能に関してはよく練られた問題が作成されており、これによって高校修了までに期待されている英語力のおよその到達度は判断できると思います。

 では、学習者の自己評価にこれはどのように利用することができるかを考えてみましょう。まず、このテストで何点とれば基礎レベルの英語力を獲得していると判定できるでしょうか。これはなかなか難しい問題で、万人の一致する答えは得られそうにありません。このテストで100点満点に換算してそれに近い点(90点以上)をとった人は、このテストに含まれる基礎的英語力に関して合格とすることに異論はないでしょう。では80点、70点ではどうかとなると、いろいろな意見が出てくるでしょう。筆者の意見を述べる前に、まず大学入試センターから公表されているデータを見てみましょう。

 大学入試センター発表による一昨年と昨年の結果をホームページで見てみます。英語は筆記試験200点満点、リスニングテスト50点満点で集計されています。そのうち筆記試験の結果は次の通りです。

平成22年度 ①受験者数512,451 ②平均118.14 (100点満点では59.07) ③最高点200 ④最低点0 ⑤標準偏差39.96 (100点満点では19.98) 

平成23年度 ①受験者数519,538 ②平均122.78 (100点満点では61.39) ③最高点200 ④最低点0 ⑤標準偏差41.24 (100点満点では20.62)

両年度の結果を比べてみると、100点満点に換算した場合の平均に2.32の差、標準偏差に0.64の差がありますが、いずれも問題作成者が目標としていると思われる平均の60点に近く、その差はわずかです。また標準偏差も両者共20前後で、ほぼ同じ値を示しています。50万人という大きな受験者数からして、得点は正規分布に近いものと推測されます。正規分布ならば、受験者の68%が40点から80点までの範囲内にいます。しかしこのデータから言えることは、個々の受験者が50万人中のどのあたりの得点を得たかということだけで、何点取れば高校までの基礎学力が身についているかを判断することはできません。65点を取った人は自分が平均より少し上だということは分かりますが、それ以上のことは分かりません。受験者の平均値は、高校生の卒業時の学力の実態を表しているでしょうが、それが基礎レベルのあるべき英語学力ではありません。到達度テストで望ましいのは、多くの受験者が満点を取ることです。

 しかし、こういう試験に平常心でのぞむことはなかなか難しいことです。そこで、個人の英語力の自己評価という観点からは、このテストで80%以上正解した人は合格としてよいのではないかと筆者は考えます。つまり、英語の基本的な語彙と文法の知識、およびリーディングの技能に関しては、80点以上を基礎レベルに到達していると判断するわけです。本当は90点以上としたいところですが、試験というのは受験者の身体的・心理的条件に左右されることがありますし、受験会場の環境的条件などの影響を受けることもあることもあります。統計的には、80点以上の得点者は受験者の16%くらいと推定されます。

 では70点台はどうでしょうか。その人たちは高校までに学習した基礎的な英語知識のほとんどを身につけてはいるが、どこかに欠陥があることを示しています。ですから自分のおかした誤りを点検し、自分の知識のどこに欠陥があるかを確認し、自分でその欠陥を補修する努力をする必要があります。自己評価とは、自分を他と比べて相対的な位置を確認するだけではなく、基礎レベルの達成という目標に対して自分が立っている位置を知ることなのです。

 大学入試センター試験の英語で70点未満の人は、率直に言って、高校までに学んだ事柄を再学習する必要があると思います。まずは①語彙、②文法、③リーディングの正確さ、④リーディングの速さ、の4つの点に関して自己診断を行ない、中学・高校の教科書を使って再学習するようお薦めします。次回から、その場合の学習法と評価法について少し詳しく述べます。(To be continued.)