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大学入試センター試験問題についてはいろいろな批判がなされています。今年も問題配布の手違いとか、英語リスニングテストのための用具の不備など、いくつかのトラブルがあり、マスコミにも取り上げられました。今年は特に多かったようですが、そこでの批判は主に試験実施上の事務的なトラブルで、今後そのようなことが生じないように対策を立ててもらいたいものです。しかし、なにせ50万人を超える受験者を対象とした一斉試験ですから、どんなに注意しても、小さなトラブルが起こることはこれからも避けられないと思われます。それよりも重要なのは、これだけの時間と金と労力をつぎ込んで、本当に良いテスト問題が作られているかどうかです。英語の場合には、毎年の筆記テストに出題される「発音問題」に根本的な疑義があることを指摘しました。これについての筆者の考えに賛同してくださる方々から、すでにいくつかのメールを頂いております。

 今回は語彙についての他の設問と、主として文法知識に関わる設問を取り上げます。センター試験の語彙についての設問は第2問のAがそれに当たります。問1から問10まで10問あります。いずれも文中の空白に当てはまる語または語句を4つの選択肢から選ぶものです。それらが語のどのような知識をみようとしているかを分類すると次のようです。

・語義・語法に関するもの——問1 (動詞)、問4 (前置詞 / 副詞)、問5 (形容詞)、問6 (名詞)、問7 (不定代名詞)

・慣用句に関するもの——問2 、問10

・語の文法形式に関するもの——問3 、問8

・関係詞節の構造に関するもの——問9 (註:これは主として文法の問題)

 センター試験の語彙に関する設問は、上の分類に見るように、語の知識を多面的にみようとしていることが分かります。語義・語法に関しても、動詞、名詞、不定代名詞、形容詞、副詞のように異なる種類の語を取り上げて、それぞれの語をコンテクストの中で正しく用いることができるかどうかをみようとしています。このような問題は、単語の綴りを見て発音と語義を覚えるだけの学習をしている学習者には難しく感じるかもしれません。高校修了時までに学習する語の知識を診断するには10問では少なすぎますが、入学試験は診断テストではないので、センター試験にそこまで要求するのは無理でしょう。しかしこれら10問に8問以上答えられた人は、語彙の学習に関しては合格と判断してよいと思います。「8問以上」としたのは、選択肢の語の中にいくつかの難しい語が含まれています(問1、問5、問6)ので、これらの語の1つか2つに未知語があって、そのために多少まごつくことがあるのは止むを得ないことです。

 次に文法に関する設問をみてみましょう。第2問のCがそれに当たります。文中の語順を問う問題です。これは3問から成り、問1は質問と答えから成る対話において、与えられた語を並べ替えて、答えの文を完成するようになっています。問2と問3は単文で、それぞれ与えられた語を並べ替えて文の一部を完成する問題になっています。紙面の関係で問1だけ挙げておきます。

問1. “Did you install that computer software you bought last week?”  “Yes. And ___ ___ ___ ___ ___ use.”  (①easy ②finding ③I’m ④it ⑤to)

 これら3つの問の中に特に難しい語はなく、与えられた語を並べ替えて文法的な文を作るのに迷うような落とし穴もありません。ですから、これらのどれかに誤答をした人は、英語の基本的文法知識に欠陥があると思って間違いありません。英語は語順を大事にする言語ですので、語を並べて正しい語順にして文を組み立てるというのは、もっとも基本的な文法技能の一つです。そういう理由で、センター試験でも何年かこの形式の問題が採用されています。

 しかし文法は語を並べて文を組み立てるルールに限りません。言語の構造は一般に(1)語彙構造、(2)句構造、(3)文構造、(4)談話構造、の4つのレベルから成っています。文法知識に関する自己評価もこれら4つの観点からなされる必要があります。語彙の文法的な役割についてはすでに述べましたので、次回は高校段階までに習得すべき句構造、文構造、談話構造の基本的知識について述べます。(To be continued.)