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今回は「談話」の文法について述べる予定ですが、その前に、前回の最後に挙げた例文の構文解析と和訳を示してほしいという要望が読者からありましたので、それにお応えしたいと思います。例文は次のようでした。

Now while he was serving as priest before God when his division was on duty, according to the custom of the priesthood, it fell to him by lot to enter the temple of the Lord and burn incense. (Luke 1:2-9 RSV )

この文は多くのフレーズと、いくつかのクローズから構成されていて複雑です。それらをここで詳しく解析すると相当の紙面を必要としますので、意味を取るために必要な程度の大まかな分析に留めます。まず、この文はコンマによる区切りに従って3つの部分に分けられます。さらに、区切り内のフレーズやクローズの構成から、次のように6つに区切ることが可能であり、そうすることによって意味解釈が容易になります。

 ① Now (「さて」という意味の副詞または間投詞)

② while he was serving as priest before God(whileは時を表す副詞節を導く接続詞。その副詞節はon dutyまで続き、全体でit fell to him以下の主節を修飾。「彼(ザカリヤ)が神の前で祭司を務めていたとき」の意味)

③ when his division was on duty(whenも時を表す副詞節を導く接続詞。この節はwhileの導く副詞節の一部をなし、直前のクローズを修飾。「彼の組が当番であったとき」の意味)

④ according to the custom of the priesthood(「祭司職の慣例に従って」の意味の副詞句。次の主節で述べられている事柄の背景または理由を説明)

⑤ it fell to him by lot(「くじ引きで彼に当たった」のような意味。itは形式主語)

⑥ to enter the temple of the Lord and burn incense(この不定詞句は、it… to~ の構文における実質上の主語。この場合の動詞enterとburnの意味上の主語は、「祭司のだれかで、くじ引きで当たった人」が含意されている)

 これは新約聖書の引用ですので多くの日本語訳があります。その中から筆者の好みに合う訳をお示しします。

「さてザカリヤは、その組が当番になり神のみまえに祭司の務(つとめ)をしていたとき、祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所(せいじょ)にはいって香(こう)をたくことになった。」(『口語訳』日本聖書協会)

 さて、ここから「談話」(ディスコース)の話に入ります。「談話」とは、コミュニケーション行為の結果として産出される言語のことで、文よりも大きな単位の文章や会話(パラグラフ、対話や会話、インタヴューなど)を指し、その研究を「談話分析」(discourse analysis)と呼んでいます。むかし(筆者の学生時代のころ)もそういう研究はあったと思いますが、当時学校で教える文法は「文」(センテンス)を最大の単位としていましたから、文を超える単位を扱うことはほとんどありませんでした。しかし英文解釈の授業では、パラグラフやチャプターなどを単位として解釈を進めることは普通のことでしたから、「談話分析」という用語はまだ生まれていなかったけれども、それに似た分析は古くから行なわれていました。

 現代の談話分析は、大まかに言うと、次の2つの問題に関心があります。

・結束(cohesion):小さな発話をつなげてまとまった談話に発展したり、節をつなげて文にし、文をつなげてまとまったパラグラフや長い文章を作る場合には、接続詞や代名詞や時制の選択が重要になります。その選択が適切になされないと、談話や文章のまとまりが失われ、理解しにくくなります。

・意味的連結(coherence):これは発話と発話、文と文を意味的につなげるやり方です。たとえば、A: Could you give me a lift to the station? B: Sorry, I’m visiting my brother in the hospital. の対話において、AとBの発話に文法的な関連はありません。しかしAとBが共有している知識(Bの兄のいる病院が駅と反対方向にあること)によって、相互の理解が可能になります。発話や文章の理解は、話し相手または読者と知識を共有していることが重要なのです。

 このように、文と文を結びつけて形式的・意味的に一貫した談話やテキストを構成する能力を談話能力といいます。日本語の場合には、小・中・高の「国語」の授業でそういう能力が育成されますが、当然のことながら、英語の学習でもそのような能力が養成される必要があります。次回は、大学入試センター試験の英語問題から、そのような能力にかかわる項目を取り出してみましょう。(Tobe continued.)