Print This Post Print This Post

「東日本大災害の1年」の報道に思うこと
(1)2012年3月12日は、東日本の大災害から1年ということで、マスコミはその前からこぞって、様々な報道をしました。その2,3週間前からNHK は被災地の1年前と現状に関する特別番組を放送していて、その趣旨は、「この未曽有な体験を風化させてはならない」ということのようでした。この目的は私にも分かります。

(2)しかし、その少し前にはある精神科医が、「あの津波被害を経験したり、その時親や兄弟姉妹を失ったりした子どもたちには、悲惨な光景はトラウマになっているので、思い出させないような配慮が必要」という忠告をしていたはずです。今は、多機能の録画再生機器がありますから、録画したものを子供が寝てから見ることも可能でしょう。しかし、被災地の方々には、そうした余裕などないのが普通だと思います。「小さい子供には見せるな」と言っても、その対応は難しいのです。

(3)他局に遅れるな、とばかりに民放各局は、子供の心理などお構いなしに、同じような場面を何回も繰り返していました。中には、明るい復興の話もありましたが。失敗を公表して、その顛末を報告したのは、NHK の「家族に乾杯!」(3月12日夜)でした。この番組は、笑福亭鶴瓶がもう一人のゲスト(この回はマラソンの高橋尚子さんでした)とある地域を突然訪ねて、驚くその土地の人たちと交流するものです。

(4)この回では、東北の被災地(岩手県陸前高田市など)を訪ねていましたが、鶴瓶はある建物の中で、勉強している少女たち、後ろから声をかけて、「あんたら兄弟何人や」と問うたのです。少女の一人は振り向きもしないで、「ひとり」と答えました。その瞬間に鶴瓶は、「しまった」と思ったようですが、その子の親は消防士で、津波に流されて死亡していたのです。

(5)スタッフは後からそこを訪ねて、その子たちの元気な声をビデオレターの形でまとめたものを放送しましたが、私にはどうもすっきりしない印象が残りました。鶴瓶の反省で終わらせておいた方がよかったと思うのです。失敗があっても、後から修正ができて、いつもハピーエンディングに終わらせる手法ばかりでは、離れて行く視聴者も出てくるのではないでしょうか。

(6)「ぶらり途中下車の旅」や「所ジョージの“日本列島ダーツの旅”」(日本テレビ系)のように、突然にある地区を訪ねて、素朴なその土地の人たちとの交流を番組にすること自体は、私も反対しませんが、あまり事前事後に手を加えたような演出では、わざとらしさが目立ちます。ネット上では、こうした番組について、「やらせではないか」といった疑問も出されています。大勢のスタッフ(カメラ、音声、照明などを担当)を引き連れて、全く自然な“不意の訪問”などあり得ないわけですが、そういうことに考えが及ばない視聴者には無理もない疑問だと思います。こういう視聴者にも対応した“正直な”番組制作をしてもらいたいと思うのです。

(7)今回は、放射能汚染のことは、話が複雑になるので触れませんでしたが、重大な課題であることは認識しているつもりです。別の機会を見て考えてみたいと思っています。(この回終り)