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今回はリスニングの評価について考えてみます。大学入試センター試験のリスニングテストは、2006年度の試験で導入されて以来、今年で7回目になりました。毎年50万人もの高校卒業生が受験するのですから、その影響は大きいものと想像されます。センター試験にどのような問題が作成されるかは、受験生にとってはもちろん重大な関心事でしょう。事実、リスニングに関する学習者用参考書が数多く出版されていることからも、それへの関心が増大していることが実感できます。

 一方、英語を指導する側はどうでしょうか。センター試験のリスニングテストは、英語の先生がたにとっても一大関心事であるはずです。特に高校において、それがどのように日常の授業に影響を与えたのか、ぜひ知りたいところです。しかしその影響は今のところはっきりしないようです。そのことを幾人かの高校の先生方に尋ねてみましたが、受験指導の一環としてリスニングテストを意識するようにはなったけれども、センター試験のテストのために日常の英語指導が大きく変ったというようなことは見えてこないと言います。学校でのリスニング指導についての実践報告も聞こえてきません。センター試験にリスニングを導入するために膨大なエネルギーと費用が注がれましたが、いったんそれが実施されてしまうと、実施上のトラブルだけが注目されて、その内容についての実質的な議論があまりなされていないのは不思議です。全国英語研究団体連合会や高等学校教科担当教員からの意見・評価は公開されていますが、それらはかなり形式的・部分的で、実質的・包括的な論評にはなっていません。

 そこで私たちは、学習者の立場に立った独自の観点から、今年1月に実施されたセンター試験のリスニング問題を見てみることにします。そこではどんなリスニング力をみようとする問題が作成されているのでしょうか。そして学習者は、センター試験のリスニングテストを受験することで、どこまで自分のリスニング力を知ることができるのでしょうか。これらのことを検討してみたいと思います。

 今年のセンター試験のリスニング問題は第1問から第4問までの四つの大問から成っています。第3問と第4問はAとBの二つの設問に分かれていますので、問題の種類としては6つになります。それらの形式と内容は次のようです。

1問:男女2人による短い対話(30語前後)を聞いて、問題冊子に印刷された問いの答えとして最も適切なものを、与えられた4つの選択肢の中から選ぶ。問いは6問ある。選択肢は6問中2問がイラスト、1問は図で示されている。

2問:男女2人による短い対話(20語前後)を聞いて、最後の発言に対する相手の応答として最も適切なものを、印刷された4つの選択肢の中から選ぶ。問いは7問。選択肢はすべて短い英語の応答表現。

3問A:男女2人による対話(40~50語)を聞いて、印刷された問いの答えとして最も適切なものを、与えられた4つの選択肢の中から選ぶ。問いは3問。形式的には第1問と同じであるが、内容的にやや難度が高い。

3問B:男女2人によるかなり長い対話(約140語)を聞いて、印刷された表の中の3箇所の空白を埋めるのに最も適切なものを、与えられた6つの選択肢(距離を表す数字)から選ぶ。註として、「二人の友人が、モロッコで行われる長距離マラソンについて話しています」という対話場面が書かれている。

4問A:第4問はA,B共に対話ではなく、まとまりのある説明文(100語前後)を聞いて、印刷された問いの答えとして最も適切なものを、与えられた4つの選択肢の中から選ぶ。説明文は3つあり、それぞれについて1つずつの問いがある。

4問B:これも音声で与えられるテキストはやや長めの説明文(約210語)で、これについて3つの問いが印刷されており、それぞれ与えられた4つの選択肢の中から最も適切なものを選ぶ。内容はハワイのアロハシャツの由来に関するもの。

 これらの問題をここで詳しく論じることは本稿の目的ではないので、筆者の検討の結果だけを簡潔に述べることにします。まずセンター試験のリスニングテスト問題の全般的評価ですが、筆者の出した結論ははなはだ芳しくありません。100点満点で評価するならば50点未満、つまり落第です。問題の構成の仕方や難易度だけでなく、テストの根本問題である妥当性・信頼性に関して重大な疑問があります。このテストはもっと改善していかなければ、日本の英語教育を著しく損じる危険さえあると筆者は考えます。何が問題であるかについて、次回にいくつかの項目に整理して述べます。(To be continued.)