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<英語との付き合い○23>

NHK(6) WRITING−1

 英語の4技能の中で、最も難しいのはwriting であると思う。150語ほどの日本文を渡して、それを英語にして自分で読んでもらうと、ほぼその人の英語力が分かる。後年、「英語会」で対話クラスのinstructor をつとめた時に、最初の学習会でそのようにして参加者の英語力を確認したが、ほとんどはずれたことはなかった。

 私が最初に書かされた英語ニュースは、「国後島沖で日本の漁船がソビエトの監視船に拿捕され、ウラジオストクへ連行された。」という共同通信の一報だった。今の私だと、見たとたんに、The Japan Coast Guard says a Japanese fishing boat has been captured in waters off the Soviet-held Japanese island of Kunashiri in the Northern Pacific and taken to the Soviet Far Eastern port of Vladivostok.という英文が頭に浮かぶから15秒もあれば書ける。

 ところが私があれこれ調べ30分もかかって苦心惨憺書き上げた英文は多分次のようなものだったと思う。A Japanese fishing boat was caught by a Soviet patrol ship in the sea off Hokkaido and is being taken to Vladivostok. 先ずはニュースソースが海上保安庁であることすら私には思い浮かばなかった。style bookにニュースソースを明確にすると書いてあったのを実際に直面したらすっかり忘れていたのである。また、もし海上保安庁だと気づいても、官庁名簿で 調べてthe Japanese Maritime Safety Agencyと書いたろう。これでは外国人にはどんな仕事をするところかわからない。拿捕に当たる英語は、captureのほかapprehend, seizeなどがあるが、catchしか思い浮かばなかった。それも、was caughtと過去形を使った。style bookにlead sentenceは現在形か現在完了形を用いるとあったのを見事に忘れていた。かろうじて頭に浮かんだのは“Write as you speak!”と言う原則だけだった。

 これをタイプで打ってデスクに出すと、デスクは、その紙をチラッと見て、ピリピリと破って屑篭に捨て、「共同に電話して拿捕地点と漁船は一隻かどうか聞け」と言うので電話すると「直ぐ続報を出します」とうことで、共同のスティッカーから「2隻の拿捕漁船の船名と所属漁協、拿捕地点はソビエトの主張する領海内」という記事が出てきた。さらに「漁船員は合計○○名、全員連行、死傷者はない模様」と言う続報がでて、間もなく、まとめ記事が送稿されてきた。しかし、もはや、デスクは共同の原稿を私には渡さず、ベテランのライターに「次(のニュース)に間に合うように」と言って渡した。次のニュースまで10分もなかったが、彼は5分ほどで書き上げ、次の正時に見事な英文ニュースになって流れた。モスクワでは日本の反応を注視しているはずだ。日本の国際放送はその第一報でもある。正確さと速さが絶対条件だから、私の”まがい物 ”がピリピリと破られ、ライター失格と判定されたのは当然の運命だったが、私は再び、絶望的な気分に襲われた。(M)