Archive for 1月 30th, 2012

最初に「語彙」(vocabulary) の自己評価から始めましょう。語彙の学習についてはこのブログですでに書きましたが、ここでは見方を変えて、学習者各自の獲得する英語語彙の自己評価という観点から述べることにします。語彙の研究者によれば、語彙知識は3つの次元から成ります。第1に「語彙の広さ」、つまり、どれだけ多くの語を知っているかということ、第2に「語彙の深さ」、つまり、それぞれの語についてどれだけよく知っているかということ、第3に「語彙の流暢さ」、つまり、語をどれだけ速く認知し使用することができるかということです。そういうわけで、語彙についての自己評価も、それら3つの観点からなされる必要があります。

 まず「語彙の広さ」について考えてみましょう。中学と高校で学ぶべき語数は学習指導要領によってその目安が示されています。中学で1200語、高校で1800語、合わせて3000語です。語のカウント方法については、中学校学習指導要領解説に「綴りが同じ語は、品詞にかかわりなく1語として数え、動詞の語尾変化や、形容詞・副詞の比較変化などのうち規則的に変化するものは原則として1語とみなす」と書かれています。つまり、規則変化する語を除き、語の形が違えばすべて別の語としてカウントするわけです。したがって派生語はすべて別の語としてカウントされます。今年4月から使用される中学校検定教科書は、この方式でカウントされます。来年4月から使われる高校の新しい教科書については、このカウント方式に従うものもあり、そうでないものもあるようです。

 ところで中学校学習指導要領の語彙カウント方式は、あくまで初歩の学習者を考慮したもので、一般に用いられるカウント方式とは違っています。英語のネイティブ・スピーカーはもちろん、中級以上の英語学習者や英語使用者も、動詞の不規則な変化形を別の語としてカウントすることはないと思いす。たとえばsee / saw / seenは同じ語の異形です。また、派生語の多くも1つの語としてカウントするのが普通です。careful / careless / carefully / carelessly / carefulness / carelessnessはみな違っていますが、これらは一定の派生ルールに従って形成されていますから、すべてcareの派生語として扱うことができます。すると、高校までに学習すべき3000語という語彙リストは、活用形・変化形や派生形を含めるかどうかで大きく違ってきます。

 大学入試問題はどうでしょうか。それは学習指導要領のカウント方式で作成されるのでしょうか。それを判断する資料が存在しないので断定はできませんが、多くの大学は変化形や派生形をひっくるめて1語とする一般のカウント方式によっていると考えられます。それが英語使用者の常識となっているからです。大学入試センター試験は、基本的に高校までの到達度をみるテストですので、語彙に関してはすべての高校教科書を調査して慎重に選定しているようです。しかしそこでも変化形や派生形は原則的に1語としてまとめる一般のカウント方式によっていると考えられます。ですから、たとい教科書に出ている単語を全部覚えたとしても、受験生は試験でいくつかの未知語に遭遇してまごつくことになりかねません。なぜなら、高校までの教科書で3000語に出合ったとしても、そこにはトピックに関連した特殊な語も含まれていますので、基本3000語に含まれるべき語がかなり抜け落ちている可能性があるからです。1種類の教科書だけで勉強した高校生にはそういう抜けが生じます。語彙に関しては、受験生は教科書だけに頼るのは危険です。

 自分の語彙サイズを知るにはどうしたらよいでしょうか。もっとも簡便な方法は、「基本3000語」のリストでどれだけの語を知っているかを自分でチェックすることです。ただし、この場合にチェックできる語彙知識は、単語の綴りを見て、その代表的な意味または定義を知っているかどうかをチェックするだけです。「基本3000語」の語彙リストにはいろいろなものがありますが、『JACET 8000英単語』というのが信頼できるものの一つです。これは大学英語教育学会が作成した「基本語リスト」に基づいており、1000語ずつ8つのレベルに分けられています。これによって「レベル3」(3000語)までの語をチェックするわけです。ただしこのJACETの語彙リストは、活用形や変化形は基本形のもとに1つにまとめてありますが、派生語はそれぞれ別の語として扱っていますので、これで3000語をカバーできたからといって大学入試センター試験に安心というわけにはいきません。少なくとも「レベル4」(4000語)まではチェックする必要があります。また、各自の語彙サイズを簡単に知ることのできる「英語語彙サイズ測定テスト」というのが専門家によって研究されており、近く実用化される見通しです。(To be continued.)