Archive for 11月 3rd, 2012

(115)英語との付き合い−40

<英語を学ぶ日本人の考え方> (2)

2.日本人にとってどんな英語が必要か

● アンケート回答者の選択 (末尾の数字は後掲の10冊の本    の番号)

* もう20年も前から私は、今や日本の英語教育は中学高校は勿論のこと、大学の教養課程での英語も、教材の内容は全て日本のこと、つまり日本文学、日本の歴史や社会といったぐあいに、なにもかも日本のことを正面に据えて英語を学ぶ必要があると主張してきた。(8)
* 英語人といっても、英米の英語人より、非英米の英語人の方が多くなってきました。それに伴って英語も実に多用な英語が使われています。そういう英語も含めて、英語はますます国際語としての役割を強めていくと思われます。(6)
* 「子どもから始めないとネイティヴのように話せない」という考えがある。しかし、いったいネイティヴのようになるとはどういうことなのだろうか。さらに言えば、私たちは英語を母国語とする人のレベルまで英語力を高める必要があるのだろうか。…相手にまったく通じないような発音では問題だが、国際交流言語としての英語を学ぶことが、日本人には求められている。(7)
* 私の場合で言うと、正式な英語を完全に聞きとれることが「8割」だ。正式な英語とは、ある程度以上の知的水準の人が、正式な場で用いる英語である。これは私だけでなく、仕事のために英語を使う多くの人に当てはまることだ。正式な英語の典型例は、テレビやラジオのニュース番組である。(3)
* 国際英語とは、英語は国際的に普及し、国際コミュニケーションの有力な媒体となっていることを示しているのです。つまり国際英語とは、英語の構造ではなく、機能に焦点を置いた呼び名といえるでしょう。...別の言い方をすると、国際英語とは国内ではなく、国際コミュニケーションのための英語ということになるでしょう。専門家はこれを国際言語としての英語(English as an International Language )と呼びEILと約します。(5)
* いまの受験英語は、訓古学であり、暗号解読の場となっている。コミュニケーションを高めるための訓練という視点が欠落している。受験英語の弊害は、コミュニケーションの道具としての英語の教育を妨げているだけでなく、中学高校で多数の英語嫌いを生み出していることにもある。受験英語の最大の問題は、つねにただひとつの「正解」を求めることである。このような、強圧的、威嚇的な雰囲気の中で形だけのコミュニケーション英語を詰め込もうとしても無理だ。(6)
* 夏目漱石は40才まで英語教師であったが、とにかく(聞く、話す、読む、書く)の4技能の円環的習得を教授法にしていた。この4つのうちいずれかひとつも欠けてはならないし、どのひとつも偏重したり、偏軽してもいけない。(9)
* 英語には、土着英語、民族英語、国際英語の3種があり、今日本人が英語を学ぶ時、はっきりと区別して考える必要があります。どの英語を目標と考えるかによって、学習の仕方、特に教材の選び方と、英語に対する日本人学習者の心構えが、まるきり違ってくるからです。...もし多くの日本人が、広く世界の人々との交流を第一に考えて英語ができるようになりたいと思っているならば、その人達は以上三種の英語のうち、三番目に挙げた国際補助語としての英語を、はじめから目指すべきだと私は考えます。(8)
* アジア諸国で英語を公用語としている国々では、ネイティブ志向が不適切であることを正しく認識しています。私たちは自分の英語感を考えるときに、このような態度を大いに参考にすべきでしょう。(5)
* 日本人は一般に日本社会の中で英語を学習するので、ネイティブのように話すという英語教育の目標は非常に無理があり、有効でも適切でもありません。それは日本人の英語に対する消極的態度を引き起こすだけで、便利な英語運用能力を育成することにつながりません。(5)
* 日本式英語を生み出す努力。...受信が主であった時代では、発音は勿論のこと、文法や文の運び方や発想まで、ネイティヴそっくりにやらなければと言われ、英語を自己流に作ってはいけないと厳しくいわれもしました。...しかし今は違うのです。...第一の理由は、両者の力関係が変化したことです。...第二の理由は、英語が今や国際補助語の面を強めてきたという言語上の変化です。現にインドやフィリピン、シンガポールなどではそれぞれの国の英語が生まれています。自分たちの生活、生存をかけて本気で英語を使えば、その英語が英米の英語とは違ったものになることは避けられません。日本は今、まさに国際的な生き残りをかけて英語を使って発信しなければならない立場にあるのですから、英米人の英語だけが正しい英語だという旧来の狭い考え方から一日も早く脱却して、日本式英語をむしろ積極的、意識的に生み出す努力をしなければならない立場に立っているのです。(8)

● 私の見解

 英語会の設立15周年の記念講演の中でもふれましたが、国際局の英語ニュース班に配属された直後は、各国の海外放送のモニターがおもな仕事でした。聴き取れるようになってみると、これらの放送はたいへん聴きやすいのです。かつてイギリスの植民地であったインドの、オールインディア・レイディオーなどは、KING’S ENGLISHなのかと思うと、さにあらず、まさにインド独特の英語です。海外放送は、それぞれの国の、それぞれの英語の特徴が出た、ある意味お国訛りの放送なのですが、それがなんの障害にもなりません。基本的な部分は語彙も発音も文法もきちんと整っているからです。
 一方で,最後まで悩まされたのが、アメリカの南部出身の同僚の英語でした。テキサス出身のブッシュ大統領は自分で、英語が下手だと認めていますが、ジョージア州生まれのカーター元大統領の英語は極めて分かりづらく、彼の弟にいたってはほとんどわからず、中継をTVでモニターしてニュースにするのに苦労しました。私は、南部出身者に限らず、英語の分かりにくいアメリカ人やイギリス人の同僚には、最初から遠慮なく、“Would you speak more clearly so that I can catch you ?“ と頼みました。驚いたり,native speakerとしての誇りを傷つけられたように感じたりした人もいたようですが、たいていはわかりやすく話してくれるようになりました。そのことは、多分、彼等がその後日本に滞在中、日本人とコミュニケーションをはかる上で、役立っただろうと思います。一方、海外放送がわかりやすいのは、聴取者が必ずしも英語を母語とする人たちばかりでないことを想定し、基本の整ったわかりやすい英語を使うよう組織的に努力していることのほか、ラジオ放送そのものが、音だけで事象を伝えるための細かい工夫をしているからです。
 これらの工夫は、各放送局が発行しているSTYLE−BOOKを見るとわかります。我が田に水を引く感じになりますが、私としては、英語が世界の共通語としての役割を充分に果たすためには、ネイティヴ・スピーカーを含めて、このような英語を身につけ、あるいは理解することが望ましいと考えており、またそれが歴史の必然だと思います。IT(情報伝達技術)の発達によって、情報の世界ではborderless化が急速に進んでいます。たとえば、TVのデジタル化によって衛星の使用単価が大幅に安くなりました。そのため、多くの国が国益をかけて、TVの国際放送の拡充を進めています。お隣の韓国では、1997年頃の大不況をきっかけに、重厚長大産業から、情報産業への脱皮をはかりましたが、それが今日「冬のソナタ」に象徴される「韓流」の隆盛につながりました。「冬ソナ」は韓国の国営放送KBSの作品ですが、KBSでは、TV国際放送の拡充とともに、韓国ドラマに英語の字幕を付けて、アメリカへ売込みHOLLYWOODと張り合うことを考えているということです。また、中国では、2008年の北京オリンピックを控えて、国営CCTVが、国際放送の拡充を進めており、特に最近の経済発展を反映して、全世界を視野に入れた英語の経済番組に力を注いでいるようです。さらに、イラク戦争でおなじみになったカタールのアルジャジーラは、中東、アフリカに3つの放送局を作り、英語のTV国際放送を全世界に流す計画です。
 ITの発達で、放送局を持つことが比較的簡単になり、情報の世界では、平準化が進んでいます。AP. UPI. REUTERS, AFPの4大通信社の寡占体制の下で、世界の情報発信の80%が占められ、知らず知らずのうちに、世界を西欧的な視点で見ることにならされている現状が、必然的に変わっていくと思います。そしてこのことはまた、必然的に、KING’S ENGLISHやアメリカ東部の英語を規範とする英語の世界にも変化をもたらすことになると思われます。
 今はまだ、その変化がどのように進んでいくのか確言は出来ませんが、イギリスで出版された「英語の未来」(ディヴィット・グラッドル著、チャールズ皇太子が前書きを書いている)が、ひとつの示唆を与えているように思います。この研究書は、数多くの調査や資料を駆使して、英語を外国語として学んだ人の数が、近い将来英語を母語とする人を圧倒的に上回ることは確実で、学ぶことによって身につけた英語が、世界標準になるだろうと予言しています。

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1  日本語力と英語力   斎藤孝・斎藤兆史  中公新書   2   英語は日本人教師   上西俊雄      洋泉社 
3  超英語学習法     野口悠紀雄     講談社 
4  英語の音読指導    土屋澄男      研究社 
5  世界の英語を歩く   本名信行      集英社新書 
6  あえて英語公用語論  船橋洋一      文春新書  
7  英語を子供に教えるな 市川力       中公新書    
8  日本人は何故英語が出来ないか 鈴木孝行  岩波新書 9  誰がこの国の英語をダメにしたか 澤井繁男 NHK出版 
10.英語屋さんの虎の巻  浦出善文      集英社新書          
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