Archive for 2月 15th, 2014

(番外) ポピュリズム

Author: 松山 薫

(番外)< ポピュリズム >

 最近関心を集めた4つの選挙、名護市長選、東京都知事選、大阪市長選、それにタイの国民議会選挙、これらの選挙名を模造紙の四隅に書き入れ、真ん中に大きな丸を書いて、これらの選挙に通底する文字を書き入れるとすればどんな言葉になるだろうか <アーカイブ年末所感2013・12・28>。私なら”ポピュリズム”と書き入れる。

 ポプュリズムとは、一般に「大衆迎合主義」と訳されているが、政治学的には、次の二つの源流があるという。(日本型ポピュリズム 大嶽秀夫 中公新書)
1.19世紀末にアメリカで農民が職人や労働者と連合して人民党を創設して行なった「下からの運動」 
2.ラテンアメリカでアルゼンチンのペロンらカリスマ指導者が扇情的なスローガンあるいは大衆迎合的な政策を使って大衆動員を図った「上からの運動」

 この分類によると、名護市長選挙とタイの議会選挙は1型、東京都知事選と大阪市長選は2型となる。

 Ⅰ型の名護市長選挙では、戦う相手は ”裏切り者”の仲井真知事とその代理人、さらには彼等を支える安倍政権であり、タイの選挙ではインラック首相と彼女を陰で操るというタクシン元首相である。こういう選挙では往々にして相手を誹謗中傷するnegative campaign が横行し、真の争点についての論争の影が薄くなる。名護市長選挙では、安倍政権と自民党が見えも外聞もない札束攻勢をかけたので、一層この傾向があらわになり、「アメリカ軍基地を沖縄に置くことが本当に必要なのかどうか」という本質的な議論がかすんでしまった。また、
タイの国民議会選挙の方は、対立がエスカレートして、最大野党のボイコットで選挙が中断されている。

 タイの選挙で興味深いのは、都市部の富裕層や中産階級を中心とした少数派の野党勢力が、タクシン派与党を支える多数派の農村部の有権者と同じ一票では不公平だと主張していることだ。社会に対する貢献度や有権者の質を問題にしているのである。つまり、一種の制限選挙論でポピュリズムへの反撃と見ることもできる。

 一方、2型の選挙では、政策論争よりも、弁舌を含めたいわゆる〝タマ“のよしあしが選挙結果を左右する。都知事選挙は、争点がなんであるかが争点になるという中で、その傾向が一層強くなった。若い人達にはほとんど記憶がない細川候補が亡霊のごとく現れたが、TVに映し出される顔も亡霊じみていて、東京オリンピックまで知事をつとめると82歳になるというのでは、いかに当代随一のポピュリストと言われる小泉元首相が助太刀を買って出ても当選は初めから無理だった。宇都宮候補は人柄が地味すぎる上、共産党アレルギーもあり、無党派層の票を細川候補と分け合うことになったから、これが精一杯のところだろう。そこで、舛添候補が漁夫の利を得て圧勝するのは初めからわかっていた。この人物の経歴
を見ると、多分にオポチュニスト的な傾向がありそうだから、都知事の椅子も、次へのステップかもしれない。オポチュニストとポピュリスト、どこかで通ずるものがある。

 都知事選挙では、いつの間にか第4の候補に祭り上げられた元空幕長の田母神候補が、60万票の支持を得た。若者中心のネット右翼が支持母体だというが、それに石原信者や自衛隊関係者が加わっての結果で、予想外とは考えないほうがよいのではないか。この人物も、次の参議院議員選挙で維新の会か自民党の比例代表として国会へ出ることになるだろう。このようにして元自衛隊幹部が国政の中枢に数を増していくことの影響と、発足以来60年を超え、社会のいたるところに根を張ってきた元自衛隊員や自衛隊関係者、そしてその家族の影響力が相まって、戦前、戦中の在郷軍人会や戦後のアメリカ在郷軍人会のような政治力を持つ日が来ないとは限らない。それを良いことと考えるか、悪いことと考えるかで社会のありかたが変わる。

 さて最後は、来月23日に行なわれる大阪市長選挙である。小泉元首相に並ぶ若手随一のポピュリストが影響力の低下の中で最後の賭けに出たとする見方が一般的だが、ポピュリストに必要な大義名分がない。本人は大義があると言っているが、結局、独り相撲の上、裸の王様で終る公算が強い。

 ところで、都知事選挙では、前日の大雪の影響も加わって、投票率は46.14%と過去3番目の低さだった。候補者が事実上一人になりかねない大阪市長選挙はもっと低くなるだろう。最低どれだけの票を獲得すれば「有権者の代表」にふさわしいと言えるのであろうか。「民主主義という不思議な仕組み」(佐々木毅 ちくまフリーマー新書)によると、世論調査では一番多い回答は60%で、70%、50%がこれに続いている。 もし、50%以下の選挙は無効と法律で定めておけば、選挙の姿は大きく変わるまた、候補者個人についても、有効投票率ではなく絶対得票率(有権者総数に対する得票率)に下限を設ければ、選挙の姿は大きく変わる。ちなみに、東京都知事になった舛添候補の絶対得票率は19.5%、であった。(M)