Archive for 11月 25th, 2011

学習意欲の心理学(5)

Author: 土屋澄男

自律的学習者が次にすべきことは、自主学習において自分の学習を正しくモニターし、正しい方向に向かっているかどうかをチェックすることです。これは非常に大切なことで、これを怠るとせっかくの努力が無駄になることさえあります。どのようにして自分の学習が正しい方向に向かっているかをチェックしたらよいでしょうか。

 いろいろな方法が考えられますが、筆者がいちばん良いと考えているものを述べます。それは自分のしたことを記録する方法です。独りで学習したことを書き留めておくのです。多くの時間と労力を費やすようなものは長続きしませんから、簡単なものでけっこうです。記録の仕方はなるべく自分で工夫をするとよいでしょう。自分でフォーマット(形式)を考えて、それを先生や友人に見てもらうのです。友人の中にはそういうことの得意な人がいるのではないでしょうか。学習について話し合うことのできる友人がいて、その人たちと議論しながら作ることができれば最高ですね。考えるためのきっかけがほしい人のために、記録する項目をいくつか並べておきます。ただし、これらのすべてを毎回記録しなければならないということではありません。

①日時・テキスト箇所 ②テキストの内容 ③重要語句・表現 ④暗記すべき表現 ⑤学習活動 ⑥気づいたこと ⑦学習活動の評価(ABCD) ⑧反省点

 しかし、このような記録が何の役に立つかに疑問を持つ方もあるかもしれません。そういう方には筆者は次のように説明します。「レコーディング・ダイエット」というのがあります。これは自分の食べたものを記録し、次に何をどれくらい食べるかを考えるというダイエット法で、それを続けるだけでダイエットができるというのです。なぜそれが効果的かというと、それが実践者の心の中に分析や評価という心的な活動をうながし、食生活や運動に関する新しい気づきを与え、行動を変化させるのです。それと同様に、英語学習者は今日の学習で学んだことを記録し、分析し、評価し、次に自分のなすべきことを考えるという内省的活動をするによって、学習についての新しい気づきがうながされ、行動に変化が起こるというわけです。つまり、自分で自分の意識や行動を制御するという自律的メカニズムによるのです。

 さて以上に述べた自律的な学習は、自分でコツコツと進めることが大切ですが、独りで行なう活動が中心なので刺激に乏しく、短期間に進歩を自覚することもむずかしい。ダイエットの場合には減量という数値によってはっきりと効果が測定できますが、英語学習の場合には必ずしもそうはいきません。自分がどれだけ進歩しているかが実感できないことが多く、せっかく始めたものを途中で止めてしまうということになりがちです。そこで自分自身にノルマを課して、その目標に向かって自分を鼓舞するような工夫が必要になります。その一つの方法として外部デストの利用が考えられます。実用英語技能検定(英検)、TOEIC、TOEFLなどのテストは誰でも受験できますから、自分の現在の英語力に応じて適当なものを選択することができます。学校の先生や友人に勧められて受検することもあると思いますが、他の人たちの圧力でいやいや受検するのでは自律的とは言えませんし、その動機づけ効果は外発的なもの(つまり表面的なもの)にとどまるでしょう。そうではなくて、自分自身の日々の学習効果を客観的に測定するという自律的態度を持つことによって、学習目標がより明確になり、単に合格するかどうかということではなく、自分の取っている学習法が正しい方向に向かっているかどうかを知るチャンスにもなるわけです。

 TOEICやTOEFLは中級レベル以上の人にはお薦めですが、基礎レベルの人にはテスト内容が高度すぎてかえって自信を失う危険がありますので、まずは英検の3級や2級を目標にするのがよいと思われます。現在の英検には初歩の5級から最上級の1級まで7つの等級があり、3級が中学修了レベル、2級が高校修了レベルとなっています。ですから基礎段階の習熟を目指す人はまず3級、そして準2級から2級へと進むように計画を立てるとよいでしょう。志を共にする友人といっしょに励まし合いながら、時に競争しながら進めると、途中で放棄する危険をかなり避けることができます。運動選手が他のライバルと切磋琢磨して優勝を目指すのに似ています。ただし、ライバルに先んじられたからといって落胆しないこと。勝負やテストにはかなり時の運が左右しますし、人間だれしも体調が悪かったり気分がすぐれなかったりすることがあるものです。失敗したらもう一度初心に立ち返ってやり直すことです。 (To be continued.)