Archive for 2月 18th, 2012

<TPPを考える ④−4 各論—4 公共工事>

各論—4 政府調達(公共工事)

政府というと我々は直ぐ国の政府を考えがちだが、TPP第11章のgovernment procurementのgovernmentは、国の政府及び地方自治体を含む。またprocurementには、公共工事の他、公共サービス例えば、学校給食なども含まれるものと解釈される。政府調達では、加盟国の業者は全て国内の業者と同等に扱われる。第11章は英文で13ページあり、これらを極めて詳細に規定しているが、ここでは中心になる公共工事について考える。

 公共工事というのは、道路、橋、河川改修、ダム、空港、港湾、公園、水道、建物など、いわゆるハコモノづくりで、戦後の復興期から、政官財の癒着、補助金の無駄使い、談合、元請のピンはねなどが横行し、九頭竜川ダムの建設に題材をとった石川達三の「金環蝕」では、周りは輝いているが、中は真っ黒と評された。特に田中角栄の「日本列島改造論」で日本は土建国家と言われるほどになり、50万を超える建設会社が工事を奪い合い、乱開発が拡がった。。

 1990年代の日米構造協議では、日本の内需を拡大させ、対米輸出を抑制させるためとして、アメリカ側の要求で10年間に630兆円もの公共投資が実施され、また、バブル崩壊後の不況では、手っ取り早い景気浮揚策として数次にわたる数兆円規模の公共工事を中心にした補正予算が組まれ、これらが今日の膨大な財政赤字の遠因になったと言われる。そして、最近では、作りすぎたハコノモの保全費用が自治体の財政を圧迫し、修繕費がなくて崩壊の危険が迫っているものもあるが、バブル崩壊以後、公共工事の半減で、建設会社が激減して、東日本大震災での復旧工事やこのところの大雪では、建設労働者や建設機械不足が問題になっている。

 一方世界的には、中国、インド、ブラジル、ベトナムなど新興国を中心に公共工事の需要が大幅に増え、世界全体では数十兆円規模にのぼると見られており、各国の大手企業がインフラの輸出などに乗り出している。TPPの政府調達・公共工事については、こうした公共工事の戦後の歴史と現状を踏まえて判断する必要がある。

 公共工事の自由化に関しては、WTO(世界貿易機関)でも、国は6億9千万円以上、都道府県と政令指定都市では23億円以上の工事については、外国の企業も参入できることになっている(日本での実績は数件にとどまる)が、TPPではさらに市町村レベルのより規模の小さい工事まで自由化されるのではないかとみられている。そうなった場合の問題点として挙げられているのは、地域建設業振興策として設けられてきた次のような条件が撤廃されるのではないかという懸念である。
* 入札における業者のランク別、地域別の制限 * 最低入札価格 * 地域産材料の使用 * 仕事を分けけあうためのジョイント・ヴェンチャー制度
その結果、外国建設業者の参入が増え、低賃金の開発途上国の測量技師や建設技術者、労働者、監視員などの導入により、地域の雇用の受け皿としての建設業の機能が失われ、地域全体の荒廃を招きかねない。そのほか、規制の撤廃で、市町村レベルの小規模工事にまで国内大手ゼネコンが入り込んでくると心配する地方の建設業者もあるという。

 一方で、外国企業の参入で、談合などの不明朗な慣習がなくなるのではないか、日本はもはや土建国家ではなくなっているから、海外企業にとってそれほどうまみのある市場ではないという意見もある。また、日本のゼネコンなどがアジア・太平洋地域へのインフラの輸出を拡大できるし、アメリカが実施している公共事業へのアメリカ製品の使用義務付け(バイ・アメリカン)の撤廃を要求できるなどのメリットがあるとされる。しかし、そうなったとしても、メリットを享受できるのは、建設業の大部分を占める中小の業者ではなく、大手企業に限られるだろう。見積もりから入札、契約まで、膨大な書類を英文で用意しなければならないからである。(M)