Archive for 12月 19th, 2012

高校の先生方には、40人のクラスでは発表活動などできはしないと最初からあきらめている人が多いのではないでしょうか。生徒に英語を使わせる経験を積ませることは大切だが、その時間をどのようにして生み出したらよいのか分からない、というわけです。たとえば、各生徒に1分を割り当てても、全員が発表するには40分以上かかり、たぶん1回の授業では済まないでしょう。しかし、そういう時間が月に1回か2回あってもいいのではないでしょうか。1分あれば100語以上は話せますから、けっこう内容のあることが言えます。

 あるいは、毎授業に5人ずつ割り当てておいて、1分間のプレゼンテーションをさせるというのはどうでしょうか。クラス全員が発表を終えるのに8時間の授業が必要ですが、生徒にとってその機会は重要な意味を持つでしょう。クラスメートの前で英語を話すというのは、生徒にとって生涯初めての衝撃的な出来事であり、けっして忘れることのできない貴重な経験になるからです。1か月後に再び発表の機会が訪れることを知っていれば、彼または彼女は、こんどはもっと上手にやろうと心の準備をするでしょう。経験したことがなければ、何も起こらないのです。

 筆者はかつて担当した英語専攻の大学1年生のクラスで、高校の授業で英語のプレゼンテーションを経験したことがあるかどうかを尋ねたことがありました。驚いたことに(その後はそんなことに驚かなくなりましたが)、そういう経験を持つ学生が2割にも達しないことを知りました。英語専攻の学生でそうですから、他は推して知るべし。現在はもう少し改善しているかもしれません。ぜひそうあってほしいと願っています。

 しかし少ない授業時間の中で、なんとか生徒による発表の機会を作ろうと努力している教師たちがいることを筆者は知っています。今年11月に行われた語研大会(一般財団法人・語学教育研究所研究大会)の研究協議会において、「生徒の発話を促すinteraction」というテーマで二つの高校の研究授業が紹介されました。一つは矢田理世氏(筑波大学附属高校)による高校1年生の授業、もう一つは由井一成氏(日本女子大学附属高校)による高校2年生の授業でした。いずれも生徒の学力が高いことで知られている高校なので、そのまま一般の学校で真似のできる授業ではないかもしれません。しかし授業の構成の仕方などには参考になる点があると思いますので、その授業展開を見てみましょう。

 それらは語研における中学・高校の授業研究の一環として行われたもので、どちらの授業にも生徒によるプレゼンテーション(story-retelling)が含まれているのが特徴です。矢田氏の授業の展開は以下のようになっています(2012年度研究大会プログラム・資料集『語研FORUM』に基づく)。

1. Greetings (1 min.) 2. Small talk: about working dogs—guide dogs, police dogs, sheep dogs (5 min.)  3. Review: story-retelling practice (10 min.) 4.  Story-retelling presentation (16 min.)  5. Introduction of the new material (14 min.)  6. Silent reading with answering questions (4 min.)  7. Greetings

 一見してこの授業はかなり盛りだくさんに見えます。整理をしてみましょう。まずsmall talk(雑談)は授業の導入と考えてよいでしょう。テキストの題材に関係する事柄(ここではworking dogs)を取り上げて雑談的に生徒と英語でやり取りをします。これはできるだけ英語で授業を進めようとする教師がよく用いる授業の1こまです。この授業の目標「生徒の発話を促すinteraction」の趣旨にも合致しています。

 この授業の主要部の前半は3と4です。生徒にプレゼンテーションを準備させ、数人の生徒に実演させるという活動です。その内容は前の授業で学習したテキストのretellingですから、前の授業でしっかりと音読やread and look-upのリハーサルをしていることが前提となっています。しかしここでは、いきなり実演に入るのではなく、準備のための時間が10分用意されています。授業者はそのほうがスムーズに進行することを経験的に知っているのでしょう。

 授業の後半部(5と6)はテキストの次のパートのoral introductionおよび黙読です。ここでの主な目的は、テキストの内容を耳で聴いて理解すること、そしてそれを目で読んで理解することです。その所要時間が20分足らずであることに注目してください。理解したものを音声化してretellingできるようにするには、次の授業での音読指導と生徒各自によるプラクティスが必要になります。(To be continued.)