Archive for 9月 25th, 2013

英語の単語を覚えることは忘却への挑戦です。忘却曲線との闘いです。つまり、いかに忘却を防ぐかということが単語の記憶の最大の課題です。そしてその有効な手段は有意味化することだと前回に述べました。では単語の学習をどのようにしたら他の語句と関係づけ、それを有意味化する—つまり自分のすでに所有している構造化された語彙ネットワークの中に統合する—ことができるでしょうか。

これまでの言語心理学的研究から、記憶された語彙は個人の脳の中でさまざまなネットワークを形成していることが分かっています。それを明らかにしようとして古くから使われている研究方法は連想法です。私たちの多くは「寒い」と言われると「暑い」という語を連想します。「成功」に対しては「失敗」を思い浮かべます。高名な心理学者ミラー(Miller, G. A. Language and Communication 1951)による連想の分類を参考にして英語の例を挙げると次のようです。

(1) contrast(対比):man-woman, husband-wife, come-go, give-take, black-white, cold-hot, sweet-bitter, up-down, etc.

(2) similar(類似):father-dad, mother-mom, woman-lady, chair-stool, sky-heaven, pretty-lovely, swift-fast, etc.

(3) subordinate(下位概念):human-woman, animal-cat, flower-rose, tree-oak, fish-sermon, planet-earth, color-blue, etc.

(4) coordinate(等位概念):bird-fish, cat-dog, apple-peach, lettuce-tomato, rose-tulip, lady-gentleman, cup-saucer, bread-butter, etc.

(5) superordinate(上位概念):apple-fruit, spinach-vegetable, panda-animal, boy-human, trout-fish, table-furniture, etc.

(6) assonance(押韻):boy-toy, pack-tack, bread-spread, seeing-believing, handsome-lonesome, diligent-intelligent, etc.

(7) part-whole(部分と全体):door-house, petal-flower, nose-face, string-violin, minute-hour, day-month, town-city, etc.

(8) completion(完成):basket-ball, black-board, boy-scout, fox-hunter, control-tower, yellow-card, Zen-Buddhist, etc.

(9) word derivatives(語の派生):run-ran, swim-swimming, mouse-mice, beauty-beautiful, careful-carefulness, etc.

(10) predication(主述関係):dog-bark, cat-mew, spring-come, summer-hot, student-study, mountain-lofty, etc.

上記の分類はよく考えられてはいますが便宜的なものです。すべての連想語がこの分類にうまく当てはまるわけではありません。たとえばchairの刺激語に対してbrokenが連想されたとすると、それはたぶん「主述関係」に分類されるでしょう。しかしgrandmaが連想されたとすると、それはどの項目に該当するでしょうか。そういう連想は必ずしも突飛なものではありません。被験者はchairという語から、かつて祖母が座っていた椅子をイメージしたのかもしれません。私たちの日常的連想は実に自由で多様ですから、異なる観点からすると、また別の分類も可能かと思われます。しかし語の連想に関するこれまでの研究によって、人は語を有意味なものとするために、「対比」(contrast)と「グループ分け」(grouping)という2つの基本的な認知操作を行うことが分かっています。

第1の「対比」というのは、「暑い—寒い」のように、意味的に両極にあるものが互いに連想を引き出すことです。すべての言語は多数の形容詞の反意語を持っています。そしてそれらが互いに連想反応を引き起こします。これは明らかに言語に関する普遍的現象の一つとして挙げられます。いま筆者の手許にあるJames Deese, The Structure of Associations in Language and Thought (1965) に、相互に高い頻度で連想反応を引き起こす一般的な英語形容詞のリストが載っています。それを以下に資料として挙げておきます。単語帳やカードを使って記憶しようとする学習者は、反意語のある語については、それを並べて書いておくことをお薦めします。

alone – together / active – passive / alive – dead / back – front / bad – good / big –little / black – white / bottom – top / clean – dirty / cold – hot / dark – light / deep – shallow / dry –wet / easy – hard / empty – full / far – near / fast –slow / few – many / first – last / happy – sad / hard –soft / heavy – light / high – low / inside – outside / large –small / left – right / long – short / married – single / narrow – wide / new – old / old – young / poor – rich / pretty – ugly / right – wrong / rough – smooth / short – tall / sour –sweet / strong – week / thick – thin

(次回は第2のGroupingの説明に入ります。)