Archive for 6月 13th, 2011

「テレビ画面で考えるコミュニケーションの問題」
(1)この問題でまず気になるのは、管首相の発言です。「“一定のめど”がついたら」といった曖昧な言い方で、辞めるそぶりを見せて、不信任案が否決されたら、今度は、「圧倒的な差で否決されたのだから」と居座る意向を示しました。鳩山元首相まで、「管首相はペテン師だ」と批判しました。しかし、こういうのを「目くそ鼻くそを笑う」と言うのです。しかも彼は、後でこの発言を撤回しています。「議員も辞める」と言っていたはずの鳩山氏が、気が変わったのは、勤続25年で表彰される日(6月12日)が近かったからだと言われています。やはりわが身のことしか考えていなかったようです。

(2)鳩山氏のように態度を変えることを「豹変」と言いますが、今はこのように悪い意味で使うことが多いようです。「君子豹変す」という諺を思い出しますが、この諺の意味は何でしょうか。私の旧友の奥津文夫さんが最近出版した『英米のことわざに学ぶ人生の知恵とユーモア』(三修社、2011)という書物には、「臨機応変が大切——君子は豹変するもの」という見出しで、”A wise man changes his mind, a fool never.” を示して、「賢者は考えを変えるが、愚者は決して変えない(君子は豹変す)」という訳文が載っています。それに続いて、2ページほどの日本語による解説もなされています。同様に、この書物には 200 ほどの諺が扱われています。著者は「ことわざ学会」と「日英言語文化学会」の会長を兼任して、数多くの英語の諺に関する本を書いていますが、この本は最新でもあり、従来と違った特徴もありますから、一読を強くお薦めします。

(3)鳩山、管の両氏に話を戻しますが、君子は豹変してよいのです。しかし、それは、「臨機応変に事態に対応するため」であって、保身のためなどではないのです。管首相は、1年生議員10名ほとの小さな会合では、「私も辞めて清々したい」と言ったと報道されました。彼が本当に被災地の人々のことを考えていたならば、こんな言葉が口から出るはずがありません。被災者たちは、風呂にも自由に入れず、仮設住宅では、水道が使えないところさえあるのです。気温の上昇とともに、病気の流行が心配されています。

(4)そして、国会では、辞める時期については、「常識的な判断で」と答えています。香山ユカ『いまどきの「常識」』(岩波新書、2005)を読むと、「常識」なんていうものは、価値観の変遷に伴ってとても変化していることがわかります。そんな曖昧な用語を使うべき時ではありません。アメリカのCNN は、日本の政治状態を “political circus”(政治的サーカス) と報じました。「歴代首相の綱渡り状態」と言った方が日本人には分かりやすいかも知れません。一国の指導者は、夢のような大きいことを言ってよいのです、いや、夢や理想を語るべきです。ただし、その実現のためには、細心の注意を払って、堅実に行動すべきです。管首相には、そのいずれも欠けていると思わざるを得ません。(この回終り)