Archive for 4月 2nd, 2012

前回、センター試験のリスニングテストのうち、その多くの部分を占める日常的内容の対話スクリプトを厳しく批判しました。読者は筆者の激しい口調に驚かれたかもしれません。筆者はもう80歳を超えた老人ですが、50万人もの若い大学受験生に大きな不安を与え、法外な努力を強いるこの試験をこのまま存続させるわけにいかないと感じ、これはなんとかしなければならないと心を熱くしているわけです。しかし急いで付け加えますが、筆者はリスニングテストを実施することに反対しているのではありません。もっとリスニングの本質を捉えた、受験生の取り組みやすいテストに改良する必要があると考えているのです。以下は筆者の改善案です。

 まずテスト問題を高校卒業生の英語学習経験に合致した内容に改めることです。対話(または会話)のスクリプトがすべてダメなわけではありません。それがテストとして用いられる場合には、それがなされる状況や登場人物を明らかにすることが必要です。どんな人たちがどんな場面で話しているのか分からないような音声の提示は、聴く人を惑わせます。たとえば、学校におけるいろいろな活動場面を使って、生徒同士または生徒と先生の間のやり取りを聴かせることができます。受験者がそれを聴いて話の内容についての設問に答えるというのならば、彼らがいつも教室で経験していることですから、リスニングテストの妥当性は大きく改善されます。そしてその内容は、高校生がクラスで話題とするような事柄を取り上げることができます。たとえば歴史、社会、時事問題、文化、人間、科学などに関する話題。そのほうが日常的な会話などよりもずっと内容的に厚みのあるスクリプトが作れます。そしてテスト全体に占める対話スクリプトの割合は、筆者は30%くらいが適当と考えます。

 今年のセンター試験リスニングテストの対話スクリプトの中では、第3問Bだけが日常的な話題から外れて、モロッコ・マラソンという珍しいトピックを取り上げています。それは女性 (W) と男性(M)の対話で、スクリプトは約130語から成ります。対話は次のように始まります。

Questions No. 17 to 19   W: What are you doing?  M: I’m filling out an entry form to run in this year’s ultra marathon in Morocco.  W: What’s that?  M: It’s a six-stage endurance footrace almost 250 kilometers long. Here, look.  W: Oh, I see. Each stage is a different distance. In the fifth stage, you run a regular marathon, right? It’s a 42 kilometers.  M: Uh-huh. And the hardest part is before that—more than twice the distance of the third stage.  W: That’s tough.  M: Yea, but I’m most worried about Stages 2 and 3, which are run over desert sand for a total of 72 kilometers….

そして設問は、マラソンコースのStage 1, Stage 4, Stage 5の距離を、与えられた6つの選択肢の中から選ぶこととしています。これは内容的に面白く、よく考えられた問題ですが、やや凝り過ぎた感じがします。問題冊子に、「対話の場面」として「二人の友人が、モロッコで行われる長距離マラソンについて話しています」という註が付いてはいますが、受験者がこの対話を聴きながら頭の中にマラソンコースをイメージし、各コースの距離をすばやく計算して正確に記憶するのは必ずしも容易ではありません。おそらく正答率は低いでしょう。これをもっと素直に、第4問のようなモノローグの形にすれば、受験者にはずっと容易になるはずです。この問題は受験生を惑わすためにかなり意地わるく作られているように感じます。

 今年のセンター試験のリスニングテストの中では、第4問のAとBが通常のリスニングテストと言えるものです。それらについては次回に検討することにして、リスニングテストのもう一つの問題点であるテストの難易度ということについて述べます。これは聴かせる音声スクリプトの難易だけではなく、設問の仕方や選択肢の作り方にも関係します。先の段落の最後で筆者は、「この問題は受験生を惑わすためにかなり意地わるく作られているように感る」と述べました。これには筆者の主観も入っていますが、ある程度客観的な分析も可能です。筆者がこのように言う論拠の一つは正答率です。今年のリスニングテストの平均点がすでに発表されており、それは次のようです。

総受験者数 514,748 平均点 24.55(50点満点)標準偏差(8.03)

以上の結果から言えることは、全般的にこのテストは難しすぎるということです。正答率は49.1% にしかなりません。このような四つの選択肢から選ばせる問題では、正答率は少なくとも60% またはそれ以上を目指すべきです。正答率と標準偏差は難易度を判定するのに貴重な数値で、それらが適切でない場合には、そのテストの信頼性が疑われることになります。(To be continued.)