Archive for 4月 6th, 2012

最近の入試では、数個の選択肢の中から正答を一つだけ選ばせるという解答方式が広く用いられています。これが多数の受験者の解答をすばやく機械的に処理することができるからです。しかしこの方式の難点の一つは、選択肢の作成が容易でないことです。正答に対する誤答の選択肢、つまり正答以外の選択肢 (distractors)を作るのが難しい。正答でない選択肢のことを「錯乱肢」と呼ぶことがありますが、問題作成者が三つまたはそれ以上の錯乱肢を考え出すのは容易ではありません。そして学習者は、難しい選択を迫られる項目が多ければ多いほど「運」に作用されます。四つの選択肢では、ランダムに解答して正答に的中する確率は4分の1です。センター試験のリスニングは25問ですから、でたらめに選んでも6問くらいはヒットする計算です。受験者が正解を得るカンを働かせると、その確率はもっと高くなるでしょう。こうして設問を難しくすればするほど、学力的に下位の者だけでなく、中位の受験者にとっても「運」が結果を左右し、テストの信頼度がうすれるわけです。

 そういうわけで、今年のセンター試験のリスニングテスト平均点が24.55(50点満点)というのは低すぎます。標準偏差が8.03ということは、受験者の70%くらいが17点から32点の間に分布するということです。でたらめに選んでも6問正解で12点くらいは得点できますから、その分布は正規曲線よりもピークが左側に偏ったものになっているでしょう。一般に、問題を難しくすればテストの弁別力が高まると信じられているようですが、それは事実ではありません。多肢選択問題では事実は逆です。リスニングテスト作成者は英語リスニングの専門家でしょうが、テスティングの専門家とは限りませんので、そういう誤った信念をお持ちの方もおられるかもしれません。来年度以降のテスト問題作成者は、問題をもっと易しくして、平均値が60% くらいになるように努力してほしいと思います。センター試験が国立大学の志願者のみを対象とする時代はとうに過ぎました。今はほとんどの私立大学が利用しています。それはもはや選抜のための試験ではなく、高等学校教育の達成度をみるテストなのです。

 今年のセンター試験のリスニングテストの中では、第4問の形式が標準的なリスニングテストと言えます。つまり、話された(音読された)モノローグを受験生に聴かせ、その内容についての設問に答えさせる形式のテストです。第4問はAとBから成っています。Aではやや短めのモノローグ(100語前後)を聴かせ、印刷された設問と選択肢を見て解答させます。モノローグは3種類あり、それぞれに1問ずつの設問が付いています。Bではやや長めのモノローグ(216語)を聴かせ、印刷された3つの設問とそれぞれの選択肢を見て答えさせます。

 具体例として、第4問Aの中からQuestion No. 20を引用します。このモノローグの内容はさほど難しくありませんが、選択肢は少しひねりがきいていますので、学力中程度の受験生の中にはまごついた人もあったでしょう。しかしこの程度はセンター試験の難易度として許容範囲と思われます。(註:モノローグの最後の一文を削除して選択肢を作り直すと、この問題はもっと平易になる)

Question No. 20Towering skyscrapers are a symbol of modern society. In the late 1800s, new technological developments made very tall buildings possible. One development was steel building technology. Before that, architects were required to create thicker stone walls to support taller technology. These walls were extremely heavy and allowed less room for windows and light. After mass production of steel was introduced, architects began to use steel frames to support a building’s weight. Steel was much lighter and stronger than stone, while taking up much less space. At the same time, elevator technology and fire-resistant building materials also helped make skyscrapers possible.

問20:According to the speaker, what is true about steel frames in skyscrapers? ① Steel frames allow more space for windows. ② Steel frames improve elevator safety. ③ Steel frames make skyscraper walls thicker. ④ Steel frames take up more space in skyscrapers.

正答は①ですが、 ‘more space for windows’ となっていることで、解答者は「おや?」と思ったかもしれません。「窓のスペースが大きく取れること」がスティールの決定的利点とは言えないからです。受験者が①を正答とする確信を得るには、他の錯乱肢を完全に消去できなければなりません。本来のリスニング活動とはあまり関係のない、こうした心理作業を受験者に要求することが、多肢選択問題の欠点の一つです。問題作成者はそのような点を考慮し、いたずらに受験者を錯乱させない工夫が必要です。そうしないと、リスニング力とは無関係の要素が結果に混入します。(To be continued.)