Archive for 5月 7th, 2012

英語の話し言葉のスピードにどう対処するか——これは英語学習者が必ず直面する課題の一つです。実は言葉のスピードの問題は英語だけでなく、母語である日本語でも起こります。日常会話では、そのスピードは話者によって個人差が大きく、時にコミュニケーションに支障が起こるほどです。一般に若い人ほど早口のようです。年配者は概して遅くなります。筆者も最近では、若い人の話す言葉が速くて聞き取れないことがあります。速さだけではなく、使う語彙や語法の違いに原因があるのかもしれません。ですから、英語学習の基礎段階では、母語話者の自然な会話をモデルにすることは実際的ではありません。やはり言語的にある程度コントロールされた文章の音読やレクチャーやスピーチをモデルにするのがよいでしょう。ニュースキャスターがニュースを正確に報道しようとするときのスピードが一つの標準になるかもしれません。

 話し言葉のスピードは1分間に話す(読む)語数によって表わされます。英語母語話者が普通に音読するスピードは150~180語くらいと言われています。ニュース報道もだいたいそれくらいです。時に200語くらいで読まれることもあります。VOAのような外国人向けの放送ではやや遅く、120語くらいと言われています。声を出さずに読む(つまり黙読する)場合は音読よりも速度を上げることができますから、200語以上になります。すると、基礎段階(つまり高校修了段階)で目指す音読のスピードは180語くらいとしてよいでしょう。もちろん最初からそれができるわけではありません。120語くらいから始めて徐々にスピードを上げ、150語くらいを中間目標とし、それができたらさらに180語くらいを目指すのが実際的と思われます。1分間180語くらいのスピードで音読やシャドウイングができるようになると、その程度のスピードで読まれる英語はそんなに速く感じません。

 今ためしに、1分間に120語、150語、180語のスピードがどれくらいかを実感していただきましょう。次は今年の大学入試センター試験のリスニングテストQuestion No.21のスクリプトです。今年の問題の中では無理のない、標準的な難易度の問題です。このスクリプトを1回目に「やや遅く」、2回目は「やや速く」、3回目に「できるだけ速く」音読してタイムを測ってみてください。

     Ireland is a nice place to visit all through the year. The peak months of the tourist season are July and August, but the weather in May, June, and September is usually good as well, and hotels are not busy. Flowers are most beautiful in April and May. In October, many art festivals are held. Winter has its own appeal. You can have fantastic places all to yourself, like the beach at Roses Point near the town of Sligo. Although it gets dark early and some museums and attractions are closed, as are many hotels, this quiet season is most relaxing for some visitors.  (103 words)

 この103語のスクリプトを読むのに要する時間は、1分間120語のスピードで読むと52秒弱、150語では43秒弱、180語では35秒弱です。皆さんのタイムはどれくらいだったでしょうか。音読に慣れている人は、120語くらいで読むのはさほど難しくないと思います。学校の教室で行なう音読練習はたいてい、それくらいのスピードだからです。音読はそういうものだと思っている人は、150語では速すぎて難しいと感じるでしょう。まして180語となると、相当の練習を必要とするかもしれません。しかし無理をしてはいけません。速く読もうとして音が崩れるのではいけません。いくら速くても音はしっかりと保つことが重要です。

 いつも120語くらいのスピードで音読している人は、150語のスピードで読まれるテキストは速すぎてついていけないと感じます。いつも150語くらいのスピードで音読している人は、180語のスピードで読まれる英語は速すぎて聞き取ることが難しいでしょう。そういうわけで、英語リスニングのスピードに対処する最善の方法は、学習者自身が音読のスピードを上げて練習をすることです。その場合に心にとめておくべきことは、自分の発音器官を意のままに使えるようにするトレーニングが必要だということです。しかし、それは単に末端の発音器官を鍛えることではありません。発音器官のコントロールをつかさどる中枢は脳にありますので、結局は脳を鍛えることが重要なのです。脳を鍛えると、易しいテキストであれば、初見のテキストでも毎分150語以上のスピードで読めるようになります。皆さんは、普通の日本語ならば、意味を取りながら普通の話し言葉のスピードで音読できるのではないでしょうか。英語の音読もそれに近づくことは、けっして夢ではありません。(To be continued.)